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ゴリラの名はゴリラ・ゴリラ

月刊『たくさんのふしぎ』と言えば、小学校時代に教室の本棚に置いてあったことを思い出します。
以来、ハードカバーの「たくさんのふしぎ傑作集」はともかく、月刊誌としての『たくさんのふしぎ』を手にした覚えはなかったのですが……最近、大学生協の特設コーナーに『木のぼりゴリラ』(たくさんのふしぎ2014年10月号)も置かれており(著者の山極氏が京大の総長になったからでしょう)、内容もなかなか面白そうだったので、読んでみました。

木のぼりゴリラ (たくさんのふしぎ2014年10月号)木のぼりゴリラ (たくさんのふしぎ2014年10月号)
(2014/09/03)
山極 寿一

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傑作集入りしても収録されない雑誌的要素である巻末の「ふしぎ新聞」等も20年前からまるで変わっていなくて、少し感動します。

ふしぎ新聞

さて、内容は野生のゴリラの研究。
冒頭からいきなり重要な話が出てくるのですが、世界中の動物園にいるのはほとんどがアフリカ大陸西部に住むニシゴリラであるのに、野生での暮らしが観察されているのはこれまでほとんど大陸東部のヒガシゴリラだった、というのです。
そして最近のDNA解析の結果によれば、ニシゴリラとヒガシゴリラは175万年前に分かれた別種だとか。
175万年前というと、人類の祖先は原人の時代です。2種のゴリラは現生人類とネアンデルタール人以上に隔たっていることになります。
動物園で見るゴリラと、TVの野生動物ドキュメンタリー番組などで目にするゴリラは別物だということです。

かつて、ゴリラの分け方と言えばマウンテンゴリラとローランドゴリラという分け方が一般的でした。
しかし、本誌巻末のより詳しい説明によると、ヒガシゴリラの内にマウンテンゴリラとヒガシローランドゴリラがおり、ニシゴリラはクロスリバーゴリラとニシローランドゴリラに分けられる、つまり「ローランドゴリラ」として括られていたものは単一ではなかったということです。

本誌で扱われているのはニシローランドゴリラです。
様々な点でヒガシゴリラとは違うことが判明するその生態。
最大の特徴はタイトルにもある「木登る」ことかと思われます。大人のゴリラは身体が大きいのであまり木に登らない、という常識はニシゴリラには当てはまりませんでした。

中でも、大人のオスゴリラが木の枝の上で立ち上がりドラミング(手で胸を叩いて音を出す行為)をする場面は最高のインパクトがありました。

小さいけれども引っ掛かったこととして、「ゴリラのオスの胸には大きな袋が発達していて、息を吸ってふくらませ、手のひらでたたくと高く澄んだ音がします」(p.17)という箇所があります。
しかし、ゴリラの胸の気嚢は息を吐く際に空気が吹き込まれる構造になっていたと記憶しているのですが。4ページ後のゴリラのドラミング直前の動作も「口をすぼめてフーフーといった」とあります。
まあ、こういうことも的確に説明するのは存外難しいことなのかも知れませんが。

 ―――

雑誌の内容からは少し離れますが、今回の記事のタイトルは分かる人には分かるでしょう、ゴリラの学名が「ゴリラ・ゴリラ(Gorilla gorilla)」であることを指しています。
しかし、ゴリラが2種類いたとなると、ここにも変化が生じるはずです。
学名は「属名・種名」の順で表記するので、

 属名  種名
 Gorilla gorilla

一属なのは変わらないとして、一方に関しては、種名である2つ目の「ゴリラ」を変えねばなりません。
当然、子供向けの『たくさんのふしぎ』ではそこまでは言及されていないので調べてみると、この二種説を採った場合、ニシゴリラに関して Gorilla gorilla が温存され、ヒガシゴリラは Gorilla beringei になるとのこと。ニシゴリラの方が先に発見されたので優先されるのだと思われます。だから動物園にいるゴリラの名は変わりません。

ちなみに、最近の研究ではオランウータンも二種類いるとのこと。

類人猿分類
 (金森朝子『野生のオランウータンを追いかけて』、東海大学出版会、2013、p.19)

ただ、この『野生のオランウータンを追いかけて』の本文の方を読むと、「オランウータン属、チンパンジー属、ゴリラ属を含む三属六種の大型類人猿」(p.18)とあって、系統図の方では「大型類人猿」はヒト属を含む四属あるのと食い違っており、よく分からないのですが。
あくまでヒト属を除いて「三属六種」だというのなら、こちらでもゴリラ二種説が採用されているのだと推察できますが(オランウータン二種、ゴリラ二種、チンパンジー属もチンパンジーとボノボの二種)。

なお、この系統分類図は進化の系統が分かれた順に分岐しています。
もっともこれを徹底すると、『自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか』に述べられているような常識外れの帰結も生じるのですが。

 ―――

山極寿一氏はゴリラについて色々と研究書・図鑑などを出している学者です。
より詳しく知りたければこれらの研究書を読むべきなのでしょう。

野生のゴリラと再会する―二十六年前のわたしを覚えていたタイタスの物語野生のゴリラと再会する―二十六年前のわたしを覚えていたタイタスの物語
(2012/12)
山極 寿一

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ゴリラゴリラ
(2005/05)
山極 寿一

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ゴリラ図鑑ゴリラ図鑑
(2008/11)
山極 寿一、田中 豊美 他

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↓アナロジーで人間を論じるのは、私はあまり好きではありませんが。
サル学者はことさらにサルと人間の近さを信じる傾向がありますが、いくら外見も系統も近くても、決定的に違う点はあり得るのです。

「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)
(2014/07/25)
山極 寿一

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暴力はどこからきたか―人間性の起源を探る (NHKブックス)暴力はどこからきたか―人間性の起源を探る (NHKブックス)
(2007/12)
山極 寿一

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アリ/蟻/Ants

私は専門外の本も気になったらどんどん手に入れてしまうので、色々なものを持ってはいますが、ふと振り返ってみると驚くこともあります。たとえば……

アリ本

なぜこんなにアリ本を持っているのでしょう。

『The Ants』の著者によれば、アリは種数・個体数・バイオマスともに多い生物でありながら、生物学でも人気のある対象ではないとのことですが、大学生協で生物学書のコーナーを見ても、アリ関係の本は結構あります。
そこで、どんな本があるのか、私も持ってはいないものも含め、目に付いた限りでちょっと見てみることにしました。
アリの研究に興味のある方はご覧あれ。


働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)
(2010/12/31)
長谷川 英祐

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巣の中にいるアリたちを観察しても、瞬間的に見ると7割くらいのアリは「働いている」と見なせる行動をしていません。
たまたまその時は休憩していたのかも知れませんが、1匹ずつマーキングして追跡調査しても、1~2割のアリは一生働かない、と言います。なぜかと言えば、働かないアリはいざという時のためのリザーブ要員であり、これによって「司令塔」のいないアリの巣全体が効率的に仕事をこなせるようになる……というのがタイトルの話です。
しかし、本書はそれだけではなく、アリを初めとする真社会性昆虫に関する様々な研究成果を紹介していきます。
真社会性生物にあっては、自分の子孫を残すのに寄与しない性質がいかにして進化したのか、というのが進化生物学上の大きな問題の一つですが、その説明として血縁選択群選択という理論が提示されています。もっとも、著者は現場の研究者らしく、「美しすぎる理論のワナ」に警鐘を鳴らしてもいますが……。
さらには、「意味がある」働かないアリと異なり、決して働かずに自分の子孫ばかりを残しコロニーを滅ぼす「チーター」のいるアリ新女王は初代女王のクローンであるシロアリ、果てはオスとメスの系統が決して交雑しないアリ等、自分の遺伝子を残すことを巡る数々の世にも奇妙な事例が紹介されます。


アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に (フィールドの生物学)アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に (フィールドの生物学)
(2012/09)
丸山 宗利

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アリの巣の中には、当のアリ以外にも様々な生物が住み着いています。そうした生物は「好蟻性」生物と呼ばれますが、アリの集めてきた餌を食べるもの、アリの幼虫を食べるもの、アリの仲間になりすましてアリから口移しで餌を貰うものまで、その内容は様々です。
本書はそんな好蟻性昆虫の研究者による研究紹介です。


裏山の奇人: 野にたゆたう博物学 (フィールドの生物学)裏山の奇人: 野にたゆたう博物学 (フィールドの生物学)
(2014/08/06)
小松 貴

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こちらの著者も好蟻性昆虫の研究者ですが、当然扱っている種類やそのアプローチは異なります。
さらには、好蟻性昆虫に限らず、論文にはならない程度の観察まで含め、著者が長野県の「裏山」で出会い観察してきた様々な生物の話も多く書かれています。


アリの巣の生きもの図鑑アリの巣の生きもの図鑑
(2013/03)
丸山 宗利、工藤 誠也 他

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上の「フィールドの生物学」シリーズ2書の著者も編纂に関わった希書がこちら。
日本の好蟻性生物に特化した図鑑です。アリの巣の中にいて普段は目にすることの難しい生物たちを、しかもフルカラー写真で紹介。


日本産アリ類図鑑日本産アリ類図鑑
(2014/07/24)
寺山 守、江口 克之 他

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そういう奇書を目にした後だと、こちらは物足りなく感じます。
網羅的な図鑑には違いないのでしょうが、カラー図版は50ページ弱で、大半のページはモノクロ図版すらなく、1ページ3~4種のペースで各種アリの分布、大きさ、外見的特徴、生態などが簡素に綴られているだけです。
図版がないと、野外見たアリを同定するのには使えなさそうですね。


アルゼンチンアリ: 史上最強の侵略的外来種アルゼンチンアリ: 史上最強の侵略的外来種
(2014/03/20)
田付 貞洋

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こちらはアルゼンチンアリのみに絞った本格的な研究書。


アリの背中に乗った甲虫を探して―未知の生物に憑かれた科学者たちアリの背中に乗った甲虫を探して―未知の生物に憑かれた科学者たち
(2009/12)
ロブ ダン

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ダウト。これはアリに関する本ではありません。
分類学の父リンネに始まる、分類学者たちの苦闘を描いた科学ドキュメントです。

リンネは弟子たち(「使徒たち」と形容されます)を各地に派遣し、世界中の生物を命名・分類しようとしました。その野望は今も分類学者たちに受け継がれていますが、しかしその達成は近付くどころか、予想よりも遙かに生物種は多いという目算もあり、そしてその多くが知られぬまま絶滅しようとしている……という話です。
「アリの背中に乗った甲虫」は要するに好蟻性昆虫、それもその存在を確認して命名分類することすら困難な希少種で、この道の困難さを象徴する存在として邦題に選ばれたのかと思いますが、実質的にはほとんど登場しません。


The AntsThe Ants
(1990/03/28)
Bert Hoelldobler、Edward O. Wilson 他

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英語ですが、アリ学のバイブルと言われるのが本書。アリの研究を志すなら必携の書です。
アリとは何か、いかなる特徴によって規定されるのか、最古のアリはいつ頃出現したのか、どれくらいの種類がいてどう分類されるのか、どんなユニークな生態を持ったものがいるのかetc...
700ページを超える大著で、数十ページに渡って分類表が載っており、各グループごとの特徴も丁寧に図解されているのだから圧倒されます。

The Ants

最後にこの『The Ants』の目次を訳出しようかと思ったのですが、専門用語が多いので各章タイトルだけにしておきます。

1. アリの重要性

2. 分類と起源

3. コロニーのライフサイクル

4. 利他主義とワーカーカーストの起源
 
5. コロニーの匂いと血縁認知

6. 女王の数と支配

7. コミュニケーション

8. カーストと分業

9. 社会的ホメオスタシスと柔軟性

10. 食料収集戦略、なわばり、個体数調整

11. 種共同体の組織化

12. アリの種間での共生

13. 他の節足動物との共生

14. アリと植物の共生

15. 特殊化した捕食者

16. 軍隊アリ

17. キノコを育てるもの

18. 収穫アリ

19. ツムギアリ

20. 収集、飼育、観察


こうして見ても、アリにおいていかに集団生活や共生の比重が大きいかよく分かります。

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人の手の入った森の生態系――『イマドキの動物ジャコウネコ 真夜中の調査記』

今月、一時期は結構なペースで色々なものを読んでいた気がするのですが、最近は停滞気味。
そろそろ紀要論文の仕上げに入らねばならないこともあって、ブログ更新が滞っていました。

さて、先日の登山では、大量の虫にたかられました。
その中にはかなりの頻度で蚊もいます。人の血を吸いに来る蚊、ということは普段は野生動物の血を吸っているはずですが、野生の獣を見かけることはなかなかありません。
向こうも警戒しているはずですから、当然と言えば当然ですが……

しかしそんな中で、動物の糞は二度ほど見かけました。
一度は報告記事で述べたように、クマのものと推定される大量の糞。
そしてもう一つは、下記のような感じでした。

糞

形状から考えて、果実を多く食べる食肉類のものと推定されます。
タヌキは溜め糞場にまとめて糞をしますから、こうやって路上に落ちている可能性は低いでしょう。大きななどから考えてテン辺りが濃厚かな、と考えました。

――食肉類というからには肉食動物という印象がありますが、中には植物を多く食べるものもいます。
『クマが樹に登ると』でも触れられていましたが、クマはもちろんキツネもタヌキもテンも、結構な割合で果実を食べるのです。
それに、本来草食でない動物の方が、種まで噛み砕くこともありませんし、また消化管もあまり植物の消化に向いていないので、果実を食べて未消化の種を排泄する種子散布者として(植物にとっては)都合が良い、という面もあります。

 ~~~

そんなわけで、今回はこちらの自然科学書を取り上げさせていただきます。

イマドキの動物ジャコウネコ: 真夜中の調査記 (フィールドの生物学)イマドキの動物ジャコウネコ: 真夜中の調査記 (フィールドの生物学)
(2014/08/06)
中島 啓裕

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本書の著者が研究しているのは、東南アジアに棲息するジャコウネコの仲間、パームシベット(「シベット」というのはジャコウネコのことですが、和名表記が混乱を招くこともあり、本書中では「パームシベット」という表記で統一されています)。
ちなみに、香料の麝香(じゃこう)が取れる動物だからジャコウネコです。
「ネコ」とついていてもネコの仲間ではありません。ハクビシンもジャコウネコの仲間、と言えばそのサイズや形状などはある程度イメージが摑めるでしょうか。

※ ちなみに余談ながら、昔は食肉目はまず「裂脚類」(イヌやネコのように、指の分かれた足を持つ仲間)と「鰭脚類」(アシカ、アザラシ、セイウチといった、四肢が鰭になっている仲間)に分かれ、裂脚類の中にイヌ上科とネコ上科がある、という分類だったものですが、最近の系統重視の分類だと、かつての「鰭脚類」はイヌ亜目に入る模様。

食肉目系統樹
 (中島啓裕『イマドキの動物 ジャコウネコ』、東海大学出版部、2014、p.75)


著者は元々、ドリアンの種子散布から研究を始めたということで、本書の序盤3分の1はその話に費やされています。
ドリアンの種は数cmある大きなもので、確かにこれを飲み込んで運んでいく動物は限られそうです。
それはオランウータンだとも言われていましたが、その実態はさにあらず……
ドリアンとオランウータンの話は、同シリーズの『野生のオランウータンを追いかけて』(このブログでは紹介記事を書かないままでしたが、2013年10月の読書メーターには一応レビューがあります)にも少し繋がる話です。

ただ、そこから著者の研究はシフトしていきます。

 これまで多くの研究は、(私がまさにそうだったように)原生状態が保たれた森林で、大型果実と果実食者の関係を「本来の」あるべき姿としてとらえ、失われつつある関係性を記載することに多くの努力を注いできた。(……)
 (同書、p.58)


しかし実のところ、果実を付ける植物と種子を散布する果実食動物は、それほど1対1の関係を築いているわけではなく、そして森の生態系は何千何万年という時間の内に変化しているものなのです。

私たちは熱帯雨林の動物というと、人の手の届かない森の奥でひっそりと生活している、といったイメージを持ちがちですが、実は人の手が入り、人工の道路が走る森ので生きている動物もたくさんいる――著者は「まえがき」でそんな話から始めており、まさにそんな、人の手の入った森林の生態系というモチーフが、著者の研究の軸になっています。
パームシベットはまさに、熱帯雨林の中でも人の手の入った伐採林で栄え、そうした森林の生態系において大きな役割を果たしている動物なのです。
タイトルにある「イマドキの動物」というのも、「人間の手による開発がこれだけ進んだ今」の動物という意味でしょう。

パームシベットが原生林と伐採林のそれぞれでどのくらい活動しているのか、特定の果実を選択的に食べ、しかも熟した果実を厳選する食性、食べたものを2時間程度で排泄する消化機構、開けた場所に糞をする習性…等が種子散布にいかなる役割を果たしているのか……といったことが分析されていきます。

上でも触れましたが、同じ「フィールドの生物学」シリーズの『クマが木に登ると』とは果実食動物の種子散布における役割という点で、『野生のオランウータンを追いかけて』とはボルネコ島(※)の熱帯雨林という点で共通するものがありながら、当然それぞれの研究の観点には違いがあり、そうした他の研究所を時に思い出しながら読むのもなかなか楽しい1冊でした。

※ インドネシアの他の島々と同じく現地名を使うなら「カリマンタン島」ですが、本書中でも「ボルネオ」ひょきが用いられているのでそれに倣います。


ちなみに帯には「魅惑の麝香、幻のコーヒー コピ・ルアク、誘惑する霊猫香」とありますが、それは本書の研究内容にはあまり関係ありません。
とは言え、一応それらについての説明はあります。
コピ・ルアク(シベットコーヒー)とは、コーヒーの実を食べたジャコウネコの糞から取り出したコーヒー豆で作ったコーヒーです。
このコーヒーが美味しいのは、ジャコウネコが食べた果実に漬け込まれたからと言われていますが、ジャコウネコの消化酵素によって変化が起きているからだという研究もあるとか……

コピルアック(焙煎済豆) 約200gコピルアック(焙煎済豆) 約200g
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KOPI BUBUK

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嫌われ者のいろいろ――『ゲッチョ先生のナメクジ探検記』

プリンタの紙詰まり……まではよくあることですが、いくら詰まった紙を取り除いても紙詰まりエラーの表示が解消されず。
こうなるともう、メーカーに修理を頼むしかないようで、例によって買い換えた方が安く付きそう……ということでプリンタを買い換えました。
他にも印刷がブレて二重になったり、インクの残量表示がおかしかったりと色々あったので、潮時だったということでしょうか。

 ~~~

さて、今回は久々に自然科学系の本を取り上げてみたいと思います。

ゲッチョ先生のナメクジ探検記ゲッチョ先生のナメクジ探検記
(2010/04)
盛口 満

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ヌルヌルしているし、貝殻コレクションにもならないしで嫌われるナメクジ。しかし注目してみると色々と面白いことがあるのです。
著者は沖縄のフリースクール「珊瑚舎スコーレ」で理科講師をしているという人物。彼はナメクジ好きの女子高生アズサの進路相談に乗ったことから、徐々に自らもナメクジにのめり込むことになります。
中でも主として扱われるのはイボイボナメクジ肉食(他の陸棲巻貝を食べる)という一風変わったナメクジで、まだその詳細な種類の区別について学術誌に正規報告はされていませんが、南西諸島にはかなりたくさんの種類がいるとか……
フィールドワークでの探し方、同定の仕方、生態……もっと細かくは琉球諸島のどの島にどんなナメクジ(とりわけイボイボナメクジ)がいるか、ナメクジは食べられるのか、毒か薬か、はたまたある地方にはナメクジの祭があるとか etc...

本文はイラストのみで写真はありませんが、巻末には「日本産のナメクジ類の概要」(外来種含む)も載っていて、主要な種類に関しては写真もあります。


さて、私がナメクジに行きついた理由は少し遡ります。
まずは以下の書がありました。

右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 (フィールドの生物学)右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 (フィールドの生物学)
(2012/02)
細 将貴

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巻貝の基本は右巻きです。
突然変異で逆巻きの個体が生まれる可能性はありますが、巻貝は殻の巻く向きに応じて内蔵の配置まで全て逆転するので、カタツムリの場合、殻の巻き向きが逆だと交尾できません。
つまり、逆巻き個体は繁殖できないのです。正確には、兄弟ならば同じ変異を共有している可能性がありますが、変異が出現した当初は同じ向きの個体に出会える可能性は低いはずです。
にもかかわらず、カタツムリの中でもいくつもの属で独立して、左巻きの種が見られます。
これは、右巻きのカタツムリを食べるのに特化した捕食者がいたから、左巻きは食べられにくくて生き残ったのではないか、そしてその捕食者とはカタツムリのみを食べるヘビ、セダカヘビではないか――というのが「右利きのヘビ仮説」です。

手のないヘビの何が右利きなのかと思いますが、顎の使い方が右利きなのです。詳しくは『右利きのヘビ仮説』をご一読あれ。

さて、この書の中で「カタツムリとは何か」についてもコラムが設けられていましたが、これが結構ややこしい。
狭義のカタツムリは巻貝(軟体動物腹足綱)の中の「有肺目」に属します。鰓呼吸ではなく肺があるから有肺目です。
しかし、有肺目の全てが陸棲というわけではなく、また完全に陸棲の巻貝は有肺類だけではなくて、アマオブネガイ類やヤマタニシ類にもいます。巻貝はいくつもの系統で独立して、陸上に上がる進化をしたのです。

さらにややこしいのがナメクジで、カタツムリが殻を失う進化は、カタツムリの中でも複数のグループで独立して生じています。中には海に棲んでいる祖先の段階で殻を失ってから上陸したものもいて、「ナメクジはカタツムリから進化した」とは必ずしも言えない。そんな殻を失ってから上陸したタイプのナメクジにアシヒダナメクジやイボイボナメクジがいる――
そんな話を読んで興味を持ち、調べてみたところ『ゲッチョ先生のナメクジ探検記』に行き着いたわけです。
海に棲むイボイボナメクジの近縁種のことなどもきっちり触れられていて、期待に応える一冊でした。


さて、カタツムリのナメクジの分類学上の地位について手短に触れましたが、まずナメクジが「軟体動物」、つまり貝やタコやイカの仲間であることからして、存外認知されていない事柄である模様。
そういう人々の認識についての調査結果も、『ゲッチョ先生のナメクジ探検記』には色々載っていて、これまた興味深いところ。

イボイボナメクジ以外の話も色々あって、たとえば現在日本で一番普通に見かけるナメクジは、外来種のチャコウラナメクジであるとか。背中に瘤があって、その中に小さくなった貝殻の名残りがあります。日本原産のフツウナメクジには瘤はありません。そう言われると確かに、今まで見てきたナメクジの多くには瘤があったような……


最後に、「ナメクジとは何か」という、上述の通りなかなか難しいことについて端的に語っていた箇所を引用しておきましょう。

(……)ナメクジというのは、貝殻を退化させた陸貝のことだった。つまり、ナメクジは「系統」を反映していない。ベッコウマイマイの仲間だろうが、本家のナメクジ科だろうが、貝殻が退化している陸貝なら、それはナメクジなのだ。ナメクジというのは、陸貝の中で、殻を無くす進化を選んだ貝たちの、ある「状態」をさす言葉をいってもいい。(……)
 (盛口満『ゲッチョ先生のナメクジ探検記』、木塊社、2010、p.107)



ナメクジ―おもしろ生態とかしこい防ぎ方ナメクジ―おもしろ生態とかしこい防ぎ方
(2010/06)
宇高 寛子、田中 寛 他

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古生物復元の方法――『凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪』

現在所属している研究室の研究発表の授業は、一度発表した後、その時の質疑を受けて2週間後にもう一度補足的な発表を行い、ふたたび討論を行うという制度になっています。
そんなわけで、私は今日、後半討論を終えました。
昨日はどうしようもないくらい疲れが取れず、原稿の修正作業も半ば途中で投げて寝てしまったような有り様でしたが、ひとまず無事終わりました。
まあ、これから年明けまでに修士論文を書き上げねばならないので、あまり一仕事終えた気分になっていてもいけないのですが、

 ~~~

さて、最近小説の読書レビューが減って、それ以外の本のレビュー増えている気はしますが……

凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪 (フィールドの生物学)凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪 (フィールドの生物学)
(2013/07/19)
椎野 勇太

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腕足動物、というのをご存知でしょうか。

私は子供の頃に読んでいた図鑑等で見たことがありましたが、どんな動物なのかはよく分かりませんでした。
図鑑に載っていて比較的知名度が高いのはシャミセンガイですが、どんなものかはネット上に画像があるなのでそれをご覧あれ。

 → シャミセンガイ

外見からすると二枚貝に足だか腕だかが生えたように見えますが……

本書『凹凸形の殻に隠された謎』は、そうした腕足動物について書かれた本です。
外見は似ていても二枚貝とは全く異なる身体の構造についても説明があります。「生きた化石」などと言われてきたのも、外見が古生代からそれほど変わっていないことによる誤解で、実態は結構変化しているとか。

ただし、本書が扱うのは同じ腕足動物でもシャミセンガイではなくチョウチンガイと、そして化石種です。
「フィールドの生物学」シリーズとありますが、本書の「フィールドワーク」はもっぱら化石の発掘です。

一方の殻が凹型、もう一方が凸型になっている風変わりな腕足動物・ワーゲノコンカで、今まで筋肉痕だと思われていたものがそうではなかったという発見、それに基づく殻の開閉能力の見直し、そして、どうやって海水を取り込んでいるのかという問題……。
腕足動物も二枚貝同様、殻の中に海水を取り込んで呼吸すると同時に、海水中のプランクトンを濾しとって食料にしています。ただ、腕足動物の吸水力はあまり強くないので、自然と水流が流れ込み通り抜けていくような殻の構造になっているのではないか――というのが著者も着目点でした。

これが成功した後、別の腕足動物・スピリファー類についても同様の研究を行うのですが、モデルを作るべく化石をスキャンに行った先で、力学の先生による「解析しちゃえば?」とのアドバイス。物理を履修したことがない著者の一からの挑戦。
かくして、どこから海水を取り入れていたのかに関する、二つの有力な説にも決着を付けてみせます。

面白いのは、以下のような記述でしょうか。

 かつての機能形態学では、人間の視点で直感的に思いつく形の機能が重視されていた。翼形種スピリファー類の一例を挙げてみよう。翼の形に根ざした流体適応の極論として、スピリファー類の肉茎は凧揚げの糸、殻は凧揚げの凧として水中に浮かんでいた、という奇抜な生態復元がある。また、「貝になりたい」などと比喩されるように、貝の形は防御の印象が強いらしい。腕足動物の殻も、少し厚めの殻をもったり、トゲを生やした殻をもつ種類には、単純に防御力アップの機能特性があてがわれたりもした。一歩間違えれば、私も破壊実験などで殻強度の定量化に勤しんでいたかもしれない。同じ題材であっても、仮説の立て方によって研究の方向性が的外れになるかもしれなかった。
 (椎野勇太『凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪』、東海大学出版会、2013、p.207)


あるいは、まったく異なる生物(たとえば人間)とのアナロジーに基づく復元について――

 この手の論理性に欠けるアナロジーは、分類群にかかわらず化石の生物学を扱った教科書でよく散見される。もし、その情報に基づいて研究を展開し、データを出し続けると、矛盾が蓄積していくことは想像できるだろう。二〇世紀後半に機能形態学の幕開けを迎えて以来、甘い前提条件のもとに積み重なった成果は少なからず存在し、砂上の楼閣となっている絶滅生物の生態復元も多い。
 (同書、p.211)


「巨大翼竜は飛べたのか」論争などを見ても、古生物学者と現生生物学者の隔たりは小さくないのを感じます。現生生物学者が当然と見なしている生理学や解剖学に無頓着な古生物学者が結構いると言いますか……
その一例をまた目にした思いです。
そこでアナロジーに頼った復元を離れ、流体解析を使うとは、一つの方法的なモデルとしても興味深い話ではないでしょうか。


巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学 (平凡社新書)巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学 (平凡社新書)
(2011/01/15)
佐藤 克文

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プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
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