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こんなことをいつまで続ける気なのか

こればかりは記録に残しておかねばなりますまい。
先日、6月23日で、プロ野球セ・リーグの全6球団から貯金(勝ち越し)が消えました。
勝率5割で首位です。

なんと開幕から2試合消化時点での全球団1勝1敗でさえ、1996年が最後とのこと。
60試合以上も消化してのこの事態は、もちろん史上初です。
ついでに、60試合以上消化時点で首位から最下位まで2.5ゲーム差というのも史上最小だとか。

残念ながら(?)翌日には阪神タイガースが勝って貯金1としたので、この状態は1日しか続かず、「全球団借金」という怪挙は実現しませんでした。
いつまでもこれほど差が詰まったままというのも考えにくいので、今後も全球団借金は実現困難かも知れません。

しかし、かなりの異常事態なのは間違いありません。
原因は、言うまでもなくセ・パ両リーグの交流戦です。

1チームが戦う交流戦の試合数は36試合で始まったのが24試合になり、今年から18試合まで減少しましたが、にもかかわらず今年はパ・リーグの61勝、セ・リーグの44勝とパが17の勝ち越し。勝率では史上最大の格差です。
この交流戦での負け越し17の分、リーグ内の勝敗の合計が5割にならないので、2チームが5割、他は借金という事態になったのです。

なぜセ・リーグがかくも弱いのかということは色々と考えられるでしょう。
両リーグで追究してきた野球の質が違った、DH制の有無、今年はバレンティン(ヤクルト)、エルドレッド(広島)、ゴメス、マートン(阪神)といった主だった外国人の強打者の怪我や不振が相次いでいずれのチームも打線が弱体化した……

あまりの格差に、もうプレーオフはセ・リーグの優勝チームとパ・リーグの3位、その勝者とパ・リーグの2位、最後にその勝者とパ・リーグの優勝チームで日本シリーズにすればいい、というネタも各所で見かけました(ネット上から今週の『週刊ベースボール』のやくみつる氏の4コマ漫画まで)。

弱いのは仕方がないかも知れません。
しかし内容も酷い。やる気が疑われます。

この6月23日の試合でも、阪神タイガースと広島東洋カープの試合は6対6の引き分け。広島は最近中継ぎ転向した大瀬良大地で逆転され、阪神は投手抑えの呉昇桓(オ・スンファン)投手を出して追い付かれるなど、両軍ともリリーフに苦しんだ試合ですが、何より広島は21残塁のセ・リーグ新記録でした(延長戦なので参考記録かも知れませんが)。
12回あってランナーの出なかったイニングは1度もなし、満塁で3者残塁が4度。何度となく勝ちのチャンスがあったのに引き分けです。

これはそろそろ、検討に値する事態です。
今年の広島は、同点・勝ち越し・逆転の殊勲打が圧倒的に少ないのです。小窪哲也内野手など、代打で4割以上打っているのに、打てば同点/勝ち越し/逆転という場面で打ったことはほとんどなく、「代打で取った試合」というのもほぼ皆無です。
こういう「勝負所に弱い」というのは精神力の問題と思われがちですが、果たしてそれだけでしょうか。

ヒントになるような場面は6月6日の楽天戦にありました。
この試合、3点ビハインドの5回、2塁走者が鈴木誠也外野手、1塁走者が木村昇吾内野手という場面で、両走者が重盗を試み、鈴木選手がアウトになりました。
試合中に早くも「しかし、不可解な重盗だった」と批判する記事が書かれているほど、これは誰もが不可解と見なしました。

 広島チグハグ重盗失敗 直後にタイムリー

ここで思い出したのは、2013年のWBCです。この時は2塁走者が井端弘和選手、1塁走者が内川聖一選手というところで重盗を狙うものの、井端選手がセーフにできないと判断して盗塁を断念して2塁に帰る一方、内川選手は飛び出してしまい1,2塁間で挟殺されました。
そう言えば、この時のWBC監督も広島OBの山本浩二氏でしたが……

この件に関して、野村克也氏は「(サインを出した)ベンチのミス」と評論していました。

 劣勢で迎えたチャンスで監督・コーチが出す指示は、選手の責任を軽くするものであるべきだ。「おまえは後先考えずに走れ。責任は俺が取るから」。こういってダブルスチールを命じたのならば、内川だけでなく井端も、躊躇なくスタートを切れただろう。たとえツーアウトになっても、まだ得点圏にどちらかの走者は残る。
 しかし、これほど緊迫した場面で「行けるなら行ってもいい」という判断を選手任せにする指示は、たとえベテランやトップ選手に対しても出すべきではない。そのサインは選手に責任を背負わせるものでしかない。この場面は「動かざること山のごとし」でいいのだ。
 (野村克也『私が見た最高の選手、最低の選手』、東邦出版、2013、p. 255)


では、今年6月6日の場合は、どうだったのでしょうか。
以下の記事がありました。

 緒方鯉チグハグ…積極タクト空回りワーストタイ借金8に逆戻り

永田総合コーチは「スキがあれば行って良かった」と、鈴木誠に盗塁の判断を委ねる“フリーパス”の作戦だったことを明言。その上で「あそこだけレイはクイックが速くなった。(盗塁を)やめる勇気も鈴木誠が成長するためには必要」と指摘した。


フリーパスといっても、ダブルスチールは普通、二人の走者の連携が必要ですからサインプレーです。「一走・木村のスタートがやや遅れた」のも、WBCの内川選手のようになるのを避けるために二走の動きを確認してから、というセオリー通りです。
つまり、「行けると思ったら自己判断で行けというダブルスチールのサイン」だったのだと思われます。
そもそも、その時々の判断以前に、三盗は100%成功の確信がなければやらないのが基本、それを最初に教えておくことはできるはずです。
(WBCの件と比べると、この場合はまだ試合中盤の5回だという違いはあるものの)緒方監督と永田コーチが選手に責任を押し付けすぎなのは明らかです。
選手の責任を軽くするような指示が出せずむしろ重くしてしまっていることと、肝心な時に一打が出ないことは関係しているように思うのですが、いかがでしょうか。

問題は勝ち負けだけではありません。
巨人の原監督や阪神の和田監督は、「(主力に不振が相次いで)この惨憺たるチーム状態なのに首位や2位にいる」手腕を褒められるべきでしょうか。そうは思いません。順位は単に他チームも不甲斐ないだけです。
練習から選手を指導するのも監督・コーチの仕事であって、「このチーム状態」を招いた責任を問われるべきでしょう。

結局、また原監督の話に戻るわけですが、今年の原監督は「野性味」野球を掲げていました。
しかし野性味なんて、出せと言われて出せるものでしょうか。むしろ、言われて出すのは野性味ではありません。

坂本勇人内野手は昨年まで全試合出場を続けていましたが、今年からキャプテンに就任したこともあり、キャンプで自主メニュー調整を認められると、早速怪我で離脱しました。これが無関係とは思えません。
今年の故障者の多さ(しかもほとんど下半身の怪我ばかり)も、キャンプがたるんでいたせいではないのでしょうか。
これが「野性味」でしょうか。なるほど、野生動物はトレーニングなどしませんし、肉食動物なら狩りをする時以外は寝ています。

しかもコーチ人事でも、橋上秀樹コーチが昨年限りで退任となりました。
橋上氏はヤクルトOBで野村克也氏の教え子ですが、どうも「ID野球」を継承する彼によって「頭でっかちになりすぎていた」ことが昨年の貧打の一因だと、原監督は考えた模様。「データに頼りすぎるな、感性と野生で勝負しろ」という方針にしかとか。
繰り返しますが、感性とか野生なんて、あるなら最初から使っていますし、ないものを出せと言われてもどうしていいか分かりません。これは才能の領域です。
要するにこれは「才能に頼れ、才能の無い分を補うための地道な努力はノーサンキュー」ということです。相手のデータを集めて分析するのも地道な努力の内です。
考え得る限り最悪の指導です。

体作りが足りないかのようにすぐ怪我をする面々、無策で状況判断もできず当てに行くだけのバッティング……これはその成果ではないのでしょうか。
いい加減に認めるべきでしょう。現状は「原監督の掲げる野性味野球が浸透するまでの過程」ではなく、野性味野球が浸透した成果なのだと。

こんなことが当たり前だから、リーグ全体のレベルも下がるのではないでしょうか。
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テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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