オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
2017年2月の読書メーター
しかし事務はこの年度末に始まった仕事であっても構わず規定の日付までに書類を出せとかなんとか……書式が送られてきたかと思うとすぐ出さねばならない四次元締め切りを体験しました。
この場合、まったく必要性を感じない書類というわけではないので、まだ許せますが。
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さて、先月の読書メーターまとめです。
14冊2000ページでした。

ページ数のキリがいいのはたまたま、数え方にちょっと問題があるケースもあります。
明らかに途中からペースダウン。他のことに色々かかずらわってたせいでしょう。学会シーズンはおそらくあまり関係ありません。
以下、読んだ本の抜粋です。
【小説】
死んで異世界に転生するにあたり「強くて可愛い身体になりたい」と願った少女はシャチの魔物に転生していた…その巨体とパワーで敵を叩き潰し、人化して美少女になり彼氏ゲットを目指してオル子の旅が始まる。仲間も魔物だけど人型(しかも美少女揃い)だというのに主人公は徹頭徹尾シャチ、しかもシャチなのに陸生。ネタとしては人外に転生する系も増えてきたのでこの位では驚かない。まあおバカなオル子の軽妙で妄想全開の一人称により軽く楽しく読めたのは事実。オチも言わずもがなの感あり。ミュラの正体とかは今後回収のネタ?
作者のにゃお氏にとって、角川スニーカー文庫からは『じっと見つめる君は堕天使』に次ぐ2冊目の刊行作品です。
そしてこれも「小説家になろう」掲載作品。新人賞応募作品もその後の作品も「なろう」で、というのは一貫した方針か何かでしょうか。
ちょっと話題を呼んだ『蜘蛛ですが、なにか?』のような例もあり、モンスターをはじめとする人外に転成する異世界転生ものもずいぶん増えてきました。はては自販機までありました。だからそれだけではさほど驚きません。(↓)
シャチなのに陸上専門とかふざけた要素は多々ありますが、やはり真の問題は、そういう一見すると出オチっぽいネタを出オチに終わらせずそこまで突き詰めるかです。
ところで、すっかりゲーム的にステータスを表示するシステムは便利なものとして定着した感があります。
世の中にはたとえば冒険者ギルドに行くと自動でステータスを読み取って登録証を作ってくれたりする設定の作品もあるんですが、モンスターの世界にはそういうシステムもなかろう……ということなのかどうなのか、謎の「天の声(?)」が主人公の頭の中に聞こえて「レベルアップしました」とか「スキル習得しました」「ポイント振りますか?」みたいになってるのが目立ちますね。『蜘蛛ですが』も本作もそうです。
青空文庫にて。哲学者の金井湛は世間が文学における性欲描写を真に迫っていると称えるのを見て、自分が性に関して冷淡ではないかと疑念を抱き、自分の性遍歴を書いてみようと思い立つ。幼少時の経験や性への好奇心、学校の寄宿舎での経験、吉原体験…虚実の境は必ずしも定かでないが、自伝的空気を漂わせた一遍。一部を除いて外国語の用語や人名が原語表記で色々出てくるので、理解には相応の知識を要する。当時の風俗を伝えるものとしては描写も優れており一級品。主人公の性に対して冷めた視線がまた客観性を感じさせるのもあるか。
多分、外来語のカタカナ表記は「シェルフ」「ノオトブック」「ペン」「インキ」くらいだったように思います。
好奇心を Neugierde と書くとか。当時まだ訳語が定着していなかった可能性もあるので、要調査です。
【漫画】
雑誌で見覚えのあるエピソードが一部。『コミックビーム』不定期掲載の連作に『ファミ通』の「読もう!コミックビーム」4コマを合わせたもの。いずれも日記漫画で、漫画喫茶暮らしから伊豆の別荘へと移動する生活を描く。独特の人との出会いや別荘での野生動物との戦いの日々だが、しばしば妄想や動物ばかりの夢エピソードが入るシュールなテイスト。それも枯淡の味わいで上手く統一されているかと。時期的には『日々我人間』と同時期だが、頁数の分そうやってネタに広がりがあるのがこっちの特色になっている。しかし漫画の中の姉は変わらないな。
今回は標高の低い千葉県で石切場のあった鋸山、地元の朝日山と低山を経て、箱根の大涌谷、群馬の浅間山、そして箱根リベンジで金時山から箱根湯本まで縦走。受験生のかえでは来なくなったが川に行き(水着回)大岩でボルタリングする場面も。グッズでは時計のエピソードあり。個人的には明るいと液晶が見え辛いんでデジタルは苦手だが…。カメラに凝りすぎて本末転倒のほのかとか、本格的な高山への挑戦は控えて山の色んな楽しみ方を描いてるのがポイントかな。火山情報への注意に触れつつ、火山の恩恵たる温泉をセットで描いてるのも良かった。
植物に虫こぶ(ゴール)を作る昆虫達。その分布、生活史、生態学的な働き…著者の研究人生を語るこのシリーズの中でも本書は特にその面が強く、高校の生物部に始まる生物研究の半生を追った形になっていて、一連の研究を体系的に解説したものではない。と言うか虫こぶ形成に関わるホルモンの詳しい働きは結局未解明とか、まだまだ謎が多い模様。他方で海外生活を含む体験談や教育についての経験も面白く読めた。口絵を見て、自分がいつぞや見た葉の膨らみもやはり虫こぶだったのか? と思い返す。今度見たら確かめてみたい。
持続、生の跳躍といったベルクソン哲学の主要な議論は科学とのいかなる対決に基づいているのか。内在としての持続や生を捉える哲学にとって、外的認識たる科学はどう寄与するのか。ベルクソン哲学を単なる「内在の哲学」としての読むことを退け、超越においてこそ内在の平面が構築される哲学として理解する。科学との協働というベルクソン哲学の方法論に関する研究としては同意するところ大。ただベルクソンの同時代だけでなく現代科学への言及もあるものの、タイトルの割には科学への言及は断片的な印象も。
読んだ本の詳細は追記にて。
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