FC2ブログ

『人生 第3章』

ちょうど2週間ぶりくらいで京都に戻ってきました。

そしてまたライトノベル新刊。
学校新聞の人生相談コーナーの回答者たちが脱線した会話を繰り広げる人生相談コント小説『人生』もついに3巻目が発売です。

人生 第3章 (ガガガ文庫)人生 第3章 (ガガガ文庫)
(2012/08/21)
川岸 殴魚

商品詳細を見る

 ――だ、だめっ……。ああっ。この私に、このようなはずかしめを……。私は生徒会長……あふっ……。〔引用者注:エロアニメの音声〕
「うーむ。やはりこれだけ結果を出されると、否定しようがない。いくみはエッチなものを嗅ぎ分けることができるのだと認めざるをえん」
「だから違う! こんな能力じゃないんだ! なぜだ? 身体の調子が悪いのか?」
 ――貴様、さっきの紅茶に……な、なにか入れたな……。なんだか変な気持ちに……。あぅ……身体が私の身体じゃないみたい……。
「そうだ! 私の身体じゃないみたいだ!」
「いくみさん。エッチなアニメと会話しないでくださいっ!」
 (川岸殴魚『人生 第3章』、小学館、2012、pp.38-39)


なぜこうなったのか……というのはこの際大したことではなくて。

前巻は夏休みの合宿編で、今回は夏休み明けから。
しかしいきなり相談の投書を集める「お悩み相談BOX」が燃やされます。最初の相談は燃え残った相談の継ぎ接ぎで、当然、まともな内容になるはずもなし。
上記のように、異なる文脈の台詞を繋ぎ合わせる言葉のデペイズマン的ギャグを得意とする作者だけに、細切れの言葉のコラージュもその延長上でしょう。
しかし、支離滅裂な文章を真面目に解釈して答えている三人娘のシュールなこと。

人生 第3章 相談

BOXにあった相談が燃えてしまったので相談が足りず、BOX放火事件の捜査で街に出たついでに街の人の相談まで集めたりしながら、放火事件の真相を巡るストーリーも緩く続いています。
冒頭のエロ漫画とアニメやら学園七不思議の秘密結社やらも一応伏線になっていたり。
まあ真相は(当然と言うべきか)くだらないですけれど。

表紙は体育会系代表の相談員・鈴木いくみ(今回、初めて本文中で姓が出たような)。
前巻は表紙も内容もふみにスポットが当たりましたし、今回はストーリー上でもいくみがメインとなる番のはずですが、はてあのアホという面でも代表だったいくみに掘り下げるほどの内容があるのかというと……まあ、いくみはやはりいくみでした。子供時代からの憧れのヒーローとかも描かれましたが、それも含めてやはり。

そして案の定(?)、恋愛フラグが立ったという感じはありません。むしろこの巻は、1巻からラブコメ要員であった梨乃の分も含めてラブコメ要素は少なめでしたね。梨乃の嫉妬らしき場面は見られましたけれど。
主人公・赤松と三人娘との密着は多いのですが、梨乃以外の二人はあまり異性を意識しないで接触してきている感が強いような……でもそれが一番面倒が少なく、恵まれているのかも知れません。

代わりにと言うべきか、今回はシュールな設定と現象によるギャグが目立ちました。(しょうもない)秘密結社とか。
特にいくみのスキルは一人だけ超能力という様相を呈してきました。元々1巻の時点でスプーン曲げをやったりしていましたけどね。ただ皆が別のことに注目してしまって検証できなかっただけで。

そして、赤松勇樹は実に見事に一般人の主人公です。
自称あるいは設定で「普通」のキャラが普通でないことがよくある一方、ライトノベルでは例えば『ハルヒ』のキョンのように、三人称で扱われれば本当に凡人と思われる主人公もいます(宇宙人や超能力者や未来人やヒーローといった非日常世界への願望は、表に出さないで持っている程度なら凡庸の範囲内でしょう)。
キョンの場合は明らかに饒舌なモノローグの語りがキャラを立てているわけですが、簡素に切り詰めた文章でテンポの良いコントを描くことを旨とする『人生』の場合、そうした要素もなし。むしろ、脱線してばかりの相談を何とか仕切って、無難な回答にまとめてしまうという、あくまで常識人としての方向で活躍を続けます。
そして、人並みにスケベでもあるんですよね。今のライトノベルの主人公には変態を特徴とするタイプも結構いますが、赤松の場合は風呂を除けるルートがあると言われると乗ってしまったり、エロアニメのDVDを密かに確保したり、はたまた女子に密着されてどぎまぎしたりしつつも、表向きは節度を保つという形でここでも常識人を貫いているのが、至極まともな少年という感じで好印象です。


イラストは相変わらず、同じ人物の顔がカットによって著しく違っていて安定していないのですが、色気はあります。そして今まででは最大かつまともな主人公のイラストも。

人生 第3章 2
 (同書、p.161)

ご当地ヒーロー・コガネンの何だかグロテスクなデザインやら中年教師やらもきちんと描いているのは好印象(これだけ見ても見事なほど何だか分からないイラストですが)。

人生 第3章 3
 (同書、p.251)

ちなみにあとがきの謝辞には以下のように。

 まずはイラストを担当していただいているななせめるちさん。
 今回もすばらしいイラストの数々ありがとうございました! 僕個人としては各キャラクターの恥じらいの表情がすごくツボで、文中でもかなり多めに恥ずかしがらせている次第です。
 (同書、p.260)


実際、ヒロイン達の赤面するシーンは多いですね。梨乃は恋愛関係が極端に苦手でしたが、エロと下ネタで赤面しているのはふみの方、というのも面白いところでしょうk。


今回の帯及びゲスト相談(作中にもあり)は田中ロミオ氏。

人生 第3章 帯

作者の川岸氏がデビューした新人賞のゲスト審査員がロミオ氏で、1巻の発売時も作品内容よりロミオ氏との繋がりばかり公式で宣伝されていた覚えがあっただけに(その月の新刊は全てそうでした)、むしろ2巻で来るかと思っていたところ、妥当な人選でしょう。
次は誰でしょうか…?

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
03 | 2021/04 | 05
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告