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「~わよ」なんて言うのは誰だ

今回もひとまず引用文から。

 知識としての女ことばの側面がもっともよく表れているのが、翻訳の言葉づかいです。なぜなら、翻訳には日本人女性が使わないような典型的な女ことばが使われることが多いからです。
 たとえば、J・K・ローリングのハリー・ポッター・シリーズで活躍する女の子に、ハーマイオニー・グレンジャーがいます。第一巻の『ハリー・ポッターと賢者の石』(松岡佑子訳)でハーマイオニーがはじめて登場するシーンは、次のように翻訳されています。

「まあ、あんまりうまくいかなかったわねも練習のつもりで簡単な呪文を試してみたことがあるけど、みんなうまくいった。私の家族に魔法族は誰もいない。」


「私」「わね」「わ」「の」など、かなり女らしく翻訳されています。しかも、このとき(第一巻)の年齢は十一歳という設定です。日本ならば小学校の五年生です。今どきの日本の小学校五年生で、こんな話し方をしている女の子などいるでしょうか。
 (中村桃子『女ことばと日本語』、岩波書店、2012、p.9-10)


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そんなわけで本書においてまず示されるのは、「女ことば」は「女性が実際に話している言葉」「女性ならば自然と話す言葉」というよりも構築された知識であるということであるということです。
そして、「女ことばについて語る言説」を「実際に話されている言葉についての報告」ではなく、むしろ女ことばというカテゴリーを作り上げるものとして読み、そこにあるイデオロギーをも明らかにしていくのが本書の目的です。
「女ことばは日本語固有の特徴である」といった言説もまた然り。

さて、「~わ」「~の」といった喋り方も、老人が「わし」「~じゃ」と喋るのと同じ「役割語」(金水敏)だと考た上で、その「役割」の内容を見ると、今やこの「~わ」口調はむしろ、強気な女子のイメージになっているのではないかと気付きます。
上記のハーマイオニーにしても然りであり、もう一つ有名な例を挙げるなら涼宮ハルヒです。

『女ことばと日本語』の中でも、一時期は男女の垣根を越える(と見なされた)女子学生への反感から「書生言葉」(「~君」「~たまえ」等)を使う女子学生が「悪い女子学生」のイメージとなり、他方で「てよだわ言葉」(「~てよ」「~だわ」)が女子学生の言葉として扱われたかと思うと、やがてセクシュアリティと結び付くことで今度は「てよだわ言葉」が堕落した女子学生のイメージになったり、といった大変に興味深い変遷が記述されています。
つねに「女ことば=淑やかさ」とは限らない、形式に結び付くイメージは日々変化しているのはどこでも同じ。

他方でもしかすると「書生言葉の女子学生」復権の気配も…? (「Wヒロインとトリックスター――『昼も夜も、両手に悪女』」参照)

なお、オタクの世界では一人称「俺」や「僕」の女子や「オタク」や「腐女子」のイメージで見られる傾向があるようですが、現実には方言によるものが結構大きいのではないかと私は見ています。
基本の喋りは標準語化されても、そういうところに方言が出るのは結構ありがちなのではないかと。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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