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神の絶望――『ささみさん@がんばらない 9』

そう言えば、(今更感がありますが)『このライトノベルがすごい!』2013年度の投票受付中です。
TOP5作品を全て埋める必要はないとのことなので、この1年間に1冊でもライトノベルを読んだ方はこぞって御投票を。
締切は10月9日です。

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今回のライトノベルは来年1月よりアニメ放送も決定している『ささみさん@がんばらない』の最新9巻です。

ささみさん@がんばらない 9 (ガガガ文庫)ささみさん@がんばらない 9 (ガガガ文庫)
(2012/09/19)
日日日

商品詳細を見る

……と、本編情報の前に、メディアミックス情報も追加が来ていました。

ガ報2012年9月版
 (折込パンフレット『ガ報』2012年9月版より、クリックで画像拡大されます)

なんとコミカライズ『週刊少年サンデー』46号(10/17発売)より連載開始予定だとか。
メジャー誌の部数も往年ほどではないとは言え、『サンデー』と言えば今でも三大週刊少年誌の一つであり公称発行部数50万部台は大概のライトノベルのベストセラーより遥かに上です。
ガガガ文庫そのもののマイナーさを差し引いても、あまり先例の思い当たらない事態です。ライトノベルのコミカライズと言えば(しばしば「オタク向け」と称される)月刊誌、という印象は印でも強いですからねぇ…
カラーや読者層が合うのかも気にはなりますが。

コミカライズは他社のコミック誌に売ることも多い中で(横に載っている同レーベルの看板作品『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』も然り)、自社最大のコミック誌を使ってくる辺り、相当に賭けている印象もありますが、はてさて……

それから、アニメ化情報に押されてついにニコニコ動画のコメント風だった帯の仕様はなくなりました。

ささみさん6巻帯
 (6巻帯)

ささみさん7巻帯
 (7巻帯)

ささみさん8巻帯
 (8巻帯)

ささみさん9巻帯
 (今回9巻帯)

ちなみに、コメント風の文言は一応全て作中に登場します。

 ―――

そろそろ9巻そのものの内容に入りましょう。
今回も凝った構成は健在で、カラー口絵は鎖々美が風邪で寝込んでいる間、邪神三姉妹達に預かってもらっている妹のるるなの様子、となっています。
そして最後で寝ている鎖々美のところに今や仲間の蝦怒川情雨(えどがわ じょう)ちゃんが見舞いにやってきて、「あんたのせいで、あたしたちがどんだけ苦労したと思ってんのよ」と言っていたりする一方、あらすじが

瀕死のガルーダに誘われて、過去の世界を覗くことになった情雨と玉藻前。
そこは、ささみさんが「リア充」を目指してアルバイトを始め、お兄ちゃんがハーレムラブコメに巻き込まれる、あってはいけない過去だった!
「破壊神」シヴァと化し、歴史を改変して過去に介入しようとするインド神話の最高神、ヴィシュヌの本当の願いとは――。
時空を超えて活躍する情雨と玉藻前が目の当たりにする、遠い約束の物語。
そして、ささみとお兄ちゃんが摑む未来とは――?


とあるのを見ると、今回の口絵は本編の裏エピソード(その頃鎖々美さんは…)であることが分かります。
本文は「すべては、後から聞いた話である」という語り出しで始まり、完全に鎖々美不在の情雨と玉藻前主役ですが、不在の鎖々美による一人称語りという初期のスタイル再びです。

前巻で宇宙刑事(のようなもの)に変身して巨大な敵と戦ったりと頑張りすぎた反動か、今巻は「がんばらない」という点も含めて原点回帰という感もあります。
原点と言えば、1巻では邪神三姉妹がお兄ちゃんこと神臣に惚れていてアピールしているような描写もありましたが、あれも後で思うと何だったのやら、「ラブコメと思わせて実は…」という仕込み以上の意味はなかったように思われますが、今回の「お兄ちゃんがハーレムラブコメに巻き込まれる」はその点も少し回収に来ているのかも知れません。いや、これで説明がついたというのかどうかは微妙なところですが。

それはそうと、今回はタイムスリップです。
玉藻前が歴史の改変能力を持っているのは以前からの設定でしたが、この2年以内の過去――つまり1巻以降の物語中――にタイムスリップするのは新手の展開です。そこで過去の鎖々美が登場、モノローグで「わたし」と表記されますが、実はこれは現在の鎖々美による語りで「この時点では」という回顧的な説明や「自分のことながら」と過去の自分を客体化したような言及があるという複雑な仕様(作者の曰く「三重らせん視点」)です。
「改変」という設定そのものを動かせる(それだけ“何とでもなる”)設定により、タイムパラドックスのようなことは問題になりませんが。

そして今回の敵であり物語の中心は、表紙をも飾るインド神話の太陽神・ヴィシュヌです。
6巻で登場、鎖々美たちを助けてもきた(ただし、単純に味方とも限らなかった)彼女ですが、ラスボスへの「対抗兵器」として破壊神シヴァに変化、しかし「アラハバキ」首領の仕込みにより汚染されて敵側の手に落ちている……という状況が前巻ラストで示されていましたが、彼女の場合はこうなっても人格は保っているようで、今回の歴史改変では独自に動いている模様。
「願いを叶える神」として世界中の太陽信仰の中でも最も愛され、長く命脈を保ちながら、それゆえに受動的に「人間に利用される神」でしかなかったヴィシュヌの絶望こそが今巻の主題です。
前巻では「自立」と結び付けて肯定的に言われた「幼年期の終わり」というフレーズが今度は、多くを願ってきながらいつしか神への感謝を忘れ、神そのものを忘れ去る人間の傲慢さと結び付けて語られる点が印象的です。

身の丈を超えて無理に頑張らなくていい――主に人間について言われていたことは神についても、ということでしょうか。やはりこれが原点です。


かなり破天荒ないじりの効く便利な設定に、実在の神話というモチーフをゲーム等の現代的な形で取り入れ、コメディもシリアスも可能でキャラクター物としても確立、とライトノベルとしての完成度は高い本作ですが、今回の大胆なメディアミックス戦略の行方はどうなることでしょうか。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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