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あなたがそう思うものが……

他の授業より一足早く、今日は演習(研究発表)の授業がありました。
まあ聞く側ですが、議論を聞いてどこにどんな研究課題があるかに思い至ったり、人と話したりしていると「あれも読んでおきたい、これも勉強しておきたい」という気分になってきます。
少し落ち着いた方がいいのかも知れませんが。

 ~~~

『〈小説〉トリッパー』は一般文芸誌と言っていいものだと思いますが、この度の特集は「ライトノベル最前線」でした。

小説 TRIPPER (トリッパー) 2012年 9/30号 [雑誌]小説 TRIPPER (トリッパー) 2012年 9/30号 [雑誌]
(2012/09/18)
不明

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内容としては作家であり『ライトノベル「超」入門』の著者でもある新城カズマ氏、やはりライトノベル作家の川原礫氏のインタビュー、それに宇佐見尚也氏の「すべてがライトノベルになる」、飯田一史氏(『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』著者)の「ラノベとソーシャルゲームの微妙な関係」といった記事、さらに「ブックガイド 今これだけは絶対に読んでおきたいライトノベル」、それに『ビブリア古書店の事件手帖』の三上延氏の短いインタビュー(2頁)です。

しかしこの「ブックガイド」で取り上げられている8作品というのが……

 三上延『ビブリア古書店の事件手帖』(メディアワークス文庫)
 じん(自然の敵P)『カゲロウデイズ』(KCG文庫)
 川原礫『ソード・アート・オンライン』(電撃文庫)
 西尾維新『化物語』(講談社BOX)
 田中ロミオ『人類は衰退しました』(ガガガ文庫)
 吉野匠『レイン』(アルファポリス)
 場内たくみ『ゲート』(アルファポリス)
 冲方丁『マルドゥック・スクランブル』(ハヤカワ文庫JA)

この内でレーベル名が「このライトノベルがすごい!」の参考作品リストに入っているのは電撃文庫・ガガガ文庫・KCG文庫の三つだけ、しかも内二つはマイナーレーベルです。
まあ西尾作品が「このライトノベルがすごい!」ランキング上位常連となった今でも講談社BOXが作品リストにないことこそおかしいのかも知れませんが……

メディアワークス文庫は(電撃文庫の姉妹レーベルということもあり)このブログでも一貫して「ライトノベル」と呼んできましたが、実はボーダーラインです。書店ではライトノベルコーナーにない方が普通です。
何より問題は、当の『ビブリア古書店の事件手帖』の100万部に達する売上(3巻計で公称300万部)です。

飯田一史氏は『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』でも今回の「ラノベとソーシャルゲームの微妙な関係」でも「衰退しゆく出版業界のなかでは数少ない右肩上がり」であることからライトノベル業界を「優秀」と言っており、実際、全体においても平均ではライトノベルの売上規模は一般文芸を大きく上回っていますが、他方でライトノベルのベストセラーは売れて1巻当たり十数万部です。
これに対し、一般文芸にはごく稀に百万部規模が登場します(たとえば村上春樹)。
『ビブリア古書店~』の規模は明らかに後者でして、ライトノベルコーナーには縁のない層を確保していることは間違いありません。
外見からして、メディアワークス文庫の作品の多くはあまりアニメ絵的なものは控えていますしね(※)。

さらに宇佐見尚也氏の記事を見ると……

『図書館戦争』シリーズ(アスキー・メディアワークス)など、多数のヒット作で人気作家の地位を不動のものとしている有川浩。直木賞候補にまでなった『天地明察』(角川書店)で一躍注目を集めた冲方丁、そして今、『ビブリア古書店の事件手帖』(アスキー・メディアワークス、メディアワークス文庫)で大きな話題を読んでいる三上延。いずれもライトノベルからデビューし、活躍してきた作家たちである。このように近年、ライトノベル出身作家が一般文芸でヒットを飛ばすというケースが目立ってきている。
 (宇佐見尚也「すべてがライトノベルになる」『小説 TRIPPER』2012年秋号、朝日新聞出版)


ここでははっきりと「一般文芸」扱いです。一冊の雑誌の中でさえこの分かれよう。

「このライトノベルがすごい!」にしても、作品リストにない作品にも投票はできますし、「あなたがライトノベルと思うものがライトノベルです」の原則は健在です。

いずれにせよ、ブックガイドの作品リストは不思議です。
『マルドゥック・スクランブル』('03年)が入っている辺り近年の作品ばかりというわけでもなく(しかも「厳密にはライトノベルとは言い切れない作品ではあるが」と言い訳付き)、それほどに遡るならに他に歴史的に重要な作品がありそうでもあり、とは言え『ソード・アート・オンライン』『人類は衰退しました』とアニメ放映中作品が多くもあり。
いや、独断で選ぶのは構わないのですが、これが「編集部推薦」「構成・編集部」と匿名で、何人の編集者が執筆しているのかも不明であるところが何とも。


※ 最近は以下のような事例もありましたが、新しい挑戦あるいは実験でしょうか?

不完全ナックル (メディアワークス文庫)不完全ナックル (メディアワークス文庫)
(2012/08/25)
十階堂 一系

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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