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詩文学

古文でも歴史でも、『古事記』『万葉集』『源氏物語』『枕草子』等は日本文学の古典と教えられます。
しかし、それらは日本文学を代表する作品なのか、そうした「カノン」の成立には実は歴史的・社会的・政治的な背景がある……といったことを論じているのが以下の書です。

創造された古典―カノン形成・国民国家・日本文学創造された古典―カノン形成・国民国家・日本文学
(1999/05)
ハルオ シラネ、 他

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昔から有名ではあった作品も、その評価のされ方は時代により変化するもので……

 十二世紀から明治期にいたるまで『源氏物語』は、少なくとも中世の和学の伝統においては、和歌を詠むための手引書、歌ことばや比喩的表現の手本として読まれた。『源氏物語』のナラティヴ・フィクションとしての価値を強調した本居宣長(一七三〇~一八〇一)でさえ、古典和歌のカタルシス的な表出のモデルに基礎をおく「もののあはれ」の理論を『源氏』に適用している。これに対して近代の『源氏物語』研究では、この長きにわたった和歌的な読みから、つまりカノンにふさわしい形式として千年ものあいだ関心をひきつづけた和歌の支配権から、脱却しようとする試み、源氏物語を写実小説として、ついで心理小説として読み直そうとする試みがつづけられてきた、と言ってよいだろう。明治初期には『源氏物語』は、その最初の数帖で(醍醐・宇多朝の)天皇による理想的な親政を描いているため、明治維新をもたらした「天皇統治への回帰」を反映したものだと考えられた。しかし、それにつづいた急激な西洋化とナショナリズム勃興の時期においては、『源氏物語』は世界最古の写実小説だとして賞揚され、「世界文学」の一部をなすべく、英語に翻訳された。
 (ハルオ・シラネ「総説 創造された古典――カノン形成のパラダイムと批評的展望」、ハルオ・シラネ、鈴木登美編『創造された古典 カノン形成・国民国家・日本文学』、新曜社、1999、p.22)


これは近代になって「小説が脚光を浴びるようになるに従い」(同書、p.21)『竹取物語』が改めて取り上げられるようになった、という話に続くものです。そもそも詩・歴史・聖典に高い地位が与えられていたのは西洋でも日本でも事情は同じで、西洋近代において進んだ文学ジャンルとして「小説」というカテゴリーが成立・重要視されて、それが日本にも輸入されたことが『源氏』の読み方をも変えた、というわけです。

それで思ったわけですが、和歌に限らず、現代文学では(詩単独作品でも舞台台本でもなく)「小説」中に詩を挿入するというのはあまり見ませんね(もちろん私の目に入る限りというのはきわめて限られていますが)。音楽的・聴覚的感性に優れた宮沢賢治でも…少しはあったでしょうか。現段階では確認できませんが。

ライトノベルで作中作のミュージカルを小説に組み込むという大胆な試みをした例として『耳刈ネルリと奪われた七人の花婿』というケースがあり、これは私も傑作と評していますし、また『ネルリ』に絡んでライトノベルにおける挿入ジャンルのことも少し触れましたが、小ネタとしてはあちこちに見られても、作品の重要な部分となる率は低く、やはり主流ではない気もします。
まして詩など。

ああ、一応20世紀文学(ヘブライ文学)で詩の挿入が多々見られる小説として、アグノンの『花嫁御寮』という(たまたま比較的最近見た)例がありましたが…

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コメント

No title

そういやあ昔、藤本泉氏に「クロノプラスチック2001年」いうSFがあって、共産主義体制になった日本が、「源氏物語」を世界文学史のトップに押し上げようと、「ソビエト日本が世界に誇る長編社会心理小説」と宣伝する、というブラックジョークがあったなあ。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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