オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
戦争を回避して、今度こそ捜査官の出番だ――『鉄腕バーディー EVOLUTION 13』
15年ぶりにリメイクという形で復活して、途中で掲載誌が休刊して移動したりと色々ありながら、連載10年で計33巻の大作となりました。
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前巻から予想されたことではありますが、最後はいささか駆け足の感は否めず。
たとえば同作者の『機動警察パトレイバー』の場合、クライマックスは宿敵グリフォンとの戦いというオーソドックスな盛り上がりがありましたが、この最終巻ではそうした要素も弱く、人形バーサーカータイプの100体ほどと戦ったくらいですし。「バーサーカー殺し」というバーディーの異名を思い出させてくれるという意味では良かったのですが…。
振り返ると、旧版でもバーディーと戦い倒された人形・オンディーヌはこのリメイク版では2度に渡って交戦、ほぼ完全燃焼で倒された感がありますが、リメイク版で追加登場となるオンディーヌの兄弟たちとは、ついに本格的に交戦しませんでしたしねえ。まあそもそも、その人形たちを護衛に侍らせるレビが真の敵ではなくなっていくのがストーリーの骨子ですから、仕方ないのですが。
結局、「バーディーが戦って倒した」相手の意外に少ないこと。
結局、ラストは戦闘というより、『風の谷のナウシカ』で墓所の主を握り潰すところを強く思わせるものとなりました。
とは言え、ストーリーはおおむね伏線を回収し、複数勢力の思惑が入り乱れ宇宙戦争目前という壮大な話にきっちり始末を付けています。タイムトラベルや並行宇宙が関わり、基本設定にまで大仕掛のあったSF設定もちゃんと説明が付いていますし。
宇宙人の社会を支配する「奥の院」もこの通りの存在感で登場。

(ゆうきまさみ『鉄腕バーディー EVOLUTION 13』、小学館、2012、p.100)
もっとも、戦争を目論んでいた連中は逃亡した者、これから捕まることが示唆されている者などがいる状況ですが……
中でも、紛れも無く悪役だったカペラが逃亡中のままというのは若干すっきりしないところです(バーディーが「必ず捕まえてやるからなっ」と犯人を追い続けている、というオチは「らしい」ものではありますが)。
各キャラの始末等を考えると、やはり外伝による補完でも欲しいところではありますね。
しかし考えてみると、「宇宙犯罪者を追って捜査官・バーディーが地球にやって来る」ことで始まったこの物語は、「地球が大規模に宇宙人と接触し、以前よりも宇宙人犯罪者が横行する」ようになって終わります(犯罪者はある意味で戦争を回避した代償ですが)。まったく地球からすれば災難な話ですが、宇宙人社会の成り立ちと地球の関係に関する設定ゆえに、それは偶然ではなかったのも事実です。
そしてバーディーは犯罪者を追い続けますが、その相手は最初とは違っています。
こうなったことにはそれなりの事情がありましたし、戦争を回避できたという点は良かったものの、その他多くの点では(地球にとってのみならず、宇宙人側にとっても)容易に良かったとは言えないもの。しかしそもそも、どう転ぼうと、世に犯罪者の絶えた試しはなし。
ところで、最後で早宮夏美が登場したのはずいぶん久し振りに感じてしまいました。
掲載誌を移動し『EVOLUTION』に入ると、旧版以来のヒロインであった早宮がいつの間にかつとむの元クラスメイトである須藤と付き合っていて、アニメ『鉄腕バーディー DECODE』からの逆輸入キャラである中杉小夜香がつとむと恋愛関係になるヒロインとして登場し、最後は物語のキーパーソンにも……と、このことを思うとこの移動は相当に大きかったですねぇ。
何はともあれ、お疲れ様でした。
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