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かくも景気の良かった頃

先日触れた『藤子・F・不二雄[異色短編集]1 ミノタウロスの皿』の収録作品には「劇画・オバQ」なんてものもあります(そこそこ有名かも知れません)。
『オバケのQ太郎』の本編から15年後、大人になった正ちゃんこと大原正太のもとを久し振りにQ太郎が訪ねてくる、という話で……

劇画オバQ1
 (藤子・F・不二雄「劇画・オバQ」『藤子・F・不二雄[異色短編集]1 ミノタウロスの皿』、小学館、1995、p.110)

基本的には懐かしさもあって昔の友達に歓迎されつつも、「正ちゃんはもう子どもじゃないってことだな……」と気付いて去っていくひっそりQ太郎の姿で終わる本作ですが、しかし今見ると「大人になる寂しさ」を描いたはずの本作に圧倒的な景気の良さが感じ取れるのも事実です。
正太は「大会社のサラリーマン」で「無事につとめあげれば、一生は保証されてる」(同書、p.108)と言われ、夫婦で一戸建てに住んでいます。
ゴジラは家業を継いで乾物屋の主人、木佐君もよっちゃんも見るからに身なりのいい中流以上の市民という感じです。

劇画オバQ2
 (同書、p.120)

ハカセは「あいつは頭はいいが、ついでに人までいいから失敗ばかり……………」「それでもこりずにユメばかり追いつづけてる………」(同書、p.121)と評されており、新事業に正太たちを誘ったりしているものの、皆あまり乗り気ではない様子。とは言え、そんなハカセもスタイルからしてサラリーマンとして勤めてはいるようです。
それどころか、「オバケの一生は500年」なので外見はほとんど変わっていないQ太郎も、「オヤジがいうんだ、オバケ銀行にコネがあるから就職しろって」(同書、p.111)と言っています。

大人になったからって「夢をあきらめなければいけない」ことに反発するハカセに皆も昔を思い出して同調してしまうものの、やはり最後で大人だから……となるわけですが、裏を返せば「無茶な夢を追いかけるのをやめて、大人としての務めを果たせば一生は安泰」という話でもあります。

本作の発表はまだギリギリで第二次高度経済成長期に含まれる1973年
今ならもっとずっと世知辛い話になることは間違いありません。


ですが他方で、「リスクを覚悟で挑戦する」等というのは余裕があってこそできることでもあります。
その意味では、「今の若者は保守的だ、挑戦しようとしない」等というのはおそらくお門違いでしょう。
そもそも大した元手なしでできる挑戦など、ほとんどは大したものではありません。

今日はひとまずここまで。

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Author:T.Y.
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2012年4月より京都大学大学院。

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