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躍進の時――『大日本サムライガール 3』

昨日今日とベルクソンに関する国際シンポジウムが開催されました(先週末には東京でも行っており、計4日です)。
この度の京都開催分は私の所属している研究室が主催者となっており、本日は私も終日手伝いをしておりました。録音係なので最前線で話を聞けるといういい立場ですが。
発表は基本的に全てフランス語、ただし発表原稿には日本語訳が付き、質疑応答にも通訳が付きます。そして、一番大変なのが通訳であることは、聞いていればよく分かります。

 ~~~

さて、正確な発売日が何日かよく分からないまま少し経ってしまいましたが、『大日本サムライガール』3巻発売です。
ここ最近はほとんど月刊ペースですが、執筆ペースは基本的に変わっていないとのことなので、本作の1巻が出るまでに少し時間がかかって溜まっていたというのが実情なのでしょうか。『羽月莉音の帝国』はちょうど2年で全10巻を出しており、その間に出た他作品も合わせると2ヶ月に1冊のペースでしたから。
(1巻の記事  
(2巻の記事  

大日本サムライガール 3 (星海社FICTIONS)大日本サムライガール 3 (星海社FICTIONS)
(2012/10/16)
至道 流星、まごまご 他

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1巻で日毬をアイドルとして売り出すのに成功し、2巻でアパレル工場・ステッチラインの再建を引き受ける代わりに買収、と積み上げてきたものが活かされ、一気にビジネス規模が拡大するこの巻は圧倒的な見物です。
具体的には、ファッションモデルはアイドルの初歩の仕事、それで成功を収めた日毬のデザインによる新ブランド「Kagura」を作り、生産をステッチラインで引き受けるという展開です。
もちろん、アイドルになるまでは制服以外の洋服を持たないほどに質素で世間を離れた暮らしをしていた日毬がファッションデザイン等というのも無茶な話で、ゴーストデザイナーを立てるのが普通ですが、そこで不正を嫌い自らファッションの勉強に励む日毬の一途さは相変わらず――

やはりと言うべきか、独自のブランドを確立して、客層を確保するというのは極めて重要なことです。
元手のないスタートでまずは手持ちの人的資源(アイドル)から始め、ファッション方面での新ブランド立ち上げ、という流れは『羽月莉音』の序盤でも同様でしたが、展開のスピードで押していた『羽月莉音』と違い、本作はじっくりと新ブランドの立ち上げと売り出しを描きます。
主人公が日本最大の広告代理店・蒼通に勤めていたこともいよいよ活かされ、古巣の蒼通と組んで展開する広報戦略は見応え十分。
「サクラをやってもらう人たちに自分がサクラだと気づかせない」(p.165)とか、広告代理店の企画書では購買層を堂々と「低IQ層」と書いているとか、なかなか面白い話揃い。

 超有名人を看板に引っ張り出して舞台を整えたら、「さあ全メディアにご登場願おう」と考えるのは二流、三流というものだ。物事にはストーリーというものがある。商品それだけでなく、物語全体がブランドの力に直結するのだ。
 このストーリー作りをなおざりにしたせいで、人々から白い目で見られ、顧客離れを引き起こしたケースは数多い。たとえば最近、話題になった某小説対照でも、有名タレントが一〇〇〇人を超える応募者の長男間を潜り抜けて大賞を受賞し、小説家デビューを果たしたと話題になった。小説発売前からあらゆるメディアで騒がれ、社会現象にまでなったのだ。その仕掛け自体は別にいい。だがマーケティングが目を背けたくなるほど低劣だった。広告のプロフェッショナルを使わず、形振り構わぬ話題作りに打って出て、初っ端の販売のことしか考えていなかった。賞や出版社の品格や、携わる芸能人の今後の人生を真摯に考え、マーケティングの効果を長い目で捉えるなら、小説発売後に、ふとしたキッカケから知られるようになったと演出するくらいが丁度いい。何事にも適度な按配というものがある。そこまで面倒を見てこそ、良き広告マンの仕事というものだ。
 (至道流星『大日本サムライガール 3』、星海社、2012、p.173)


これが何の話であるかはおそらく説明不要でしょう。
とはいえ、小説の場合、内容が良くないものを「発売後に、ふとしたキッカケから知られるようになったと演出する」のは困難ではないかとも思いますが。ひとたび読まれてしまえば、「かくかくしかじかのようなわけでつまらない」という評を引っ繰り返すことはどれだけ可能なのか……
そんなわけでなのかどうなのか、現に本においては、発売前に話題作りをしてプッシュする事例がしばしば見られますが、無論、内容が面白くなければ右肩下がりになります。
それでもそういうやり口が続くのは、出版社の経営そのものが自転車操業で、明日も存続するためには目先の部数が第一、という事情があるのかも知れませんが……

閑話休題。
『大日本サムライガール』3巻の話に戻りますが、新ブランド「Kagura」の前に、第1章はまず日毬の主催する政治団体「日本大志会」の党大会開催です。
日毬のファンクラブを兼ねるような形になった日本大志会の会員は今や4500人に及んでいますが、そのほとんどは日毬の政治信条に与するわけではないただのファンです。
しかし、日毬は党大会にて、政権奪取のため命懸けで戦う「隊員」を募集し、佐々倉壮司(ささくら そうじ)という男を見出します。元は超エリートだが極右思想の持ち主で現在は武道修行の旅をしており、日毬の政治信条に共感したという人物で……
アイドルプロダクションであるひまりプロダクションと、その所属アイドルである日毬の運営する日本大志会はあくまで別組織ではあるものの、日本大志会がプロダクション内に事務所を置いている都合上、かくも優秀な男が急激に拡大しつつあるプロダクションの仕事を手伝ってくれる仲間にもなるわけです。

その他にも、日毬よりもずっと引っ込み思案な性格の姉・凪紗が思いがけず活躍することになり、すっかり鈍臭いばかりのキャラになっていた前巻加入のアイドル・千歳も服作りに関する日毬の指導という形で役割を見出し、プロダクション創設以来のメンバーである由佳里も……と、次第にひまりプロダクションのメンバーが増えてきました。
日本大志会の「隊員」はどう考えても親衛隊なわけで、ヒトラーは巧みな情報戦略で政権を取ったことを考えると、SSとゲッペルスを手に入れたという感じの展開でもありますが……しかし何を目指す話であれ、「仲間集め」はつねに高揚感のあるものです。


KAGEROUKAGEROU
(2010/12/15)
齋藤 智裕

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政治的対立は何と何の間にあるか――『大日本サムライガール 4』

はい、今回取り上げるのはアイドルプロデュースをしつつ日本の国政を目指す政治経済ライトノベル『大日本サムライガール』の4巻です。 大日本サムライガール 4 (星海社FICTIONS)(2013/01/...
プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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