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勝てないアメリカとある症例

伝ホメロスの『オデュッセイア』はトロイア戦争の英雄オデュッセウスが10年もかけて故郷に帰る旅をする物語ですが、その第九歌にロートパゴス族という人々の話があります。
「ロートパゴス」とは「ロートス」という植物の実を食べる人々のこと。彼らから貰ったロートスの実を食べたオデュッセウスの部下たちはそのあまりの美味さに望郷の念も故郷への道も忘れてその島に住みたいと思うようになり、オデュッセウスが慌てて引き摺って船に連れ戻し、島から逃げ出した……というエピソードです。
このエピソードは本当にこれだけなので、『オデュッセイア』の記述のみからはよく分からないことが色々とあります。
たとえば、オデュッセウスの部下たちの「症状」は単に美味さのせいなのか、ロートスの実に何か麻薬的効果でもあったのか。ロートパゴス達はこれを食べて普段どんな暮らしをしていたのか……(「ロートパゴス」は、「自分の家への道も忘れて生きる人々」と見なされるようになるようですが)

※ ちなみに、英語の lotus が蓮なのでロートパゴスは「蓮の実食い」と訳されたりしますが、この場合のロートスはどんな植物か不明、というよりも架空のものと思われます。

しかし、私は最近、これはトロイア戦争の後遺症だったのではないかとふと思いました。
そんなことを考えたわけは、以下の書↓に記述があったのですが、アメリカでイラクからの帰還兵に、極端に物忘れが激しくなり、買い物に出かけても家への帰り道が分からなくなってしまうといった症状が多発しているという話を知ったためです。
家への道を忘れるとか、ある意味でよく合致しています。

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これは当初PTSDの類かと思われていましたが、どうもイラク軍の手製爆弾(IED = Improvised Explosive Device[即席爆破装置])による物理的ダメージが原因という見解が最近では有力とのこと。
ハイテク武装でかつてないほど死亡率は下がったが、今までなら死んでいたところで生き残ることで新たな障害に繋がっているのではないか、と(ですからトロイア戦争の時代に同じ症例があったということはないでしょうが…)。
(そもそもそんなに歩兵を送り込むことになると予想していなかったこともあり)国防総省の対策も後手に回っていると。

国防のため避けられない戦争だったならばやむなし、そうでなくとも戦争をした甲斐があったならまだしも、好んで武力介入して回って、結局いいことはなかったんじゃないか、と……ベトナム戦争の時にもそう言われなかったでしょうか。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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