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暗殺で磨く人間の可能性――『暗殺教室』

今日は母校・愛知県立芸術大学の芸術祭に行ってきました。そんなわけで帰省中です。
初対面となる同じ専攻の1年生たちにもすでに私の名はよく知られているようで……まあ予想しないことではありませんでしたが。

2年下の後輩たちが中心になって作成した雑誌も貰ってきました(今年は卒業生アンケートと巻末の翻訳とで私は2箇所も名前をクレジットされている、つまり執筆者として献本を頂いてきました)。
特集は来年開催される「あいちトリエンナーレ2013」(2度目)です。

PLUS OPUS No.10
(クリックで画像拡大されます)

森田先生が今年で定年となるため最後で張り切ったようで豪華140ページ超。まあ読んでみたところ、各記事の文章などの質はまずまずのようで何より。


ただ芸術祭そのものの問題は――私の在学中もしばしば主張されていたことですが――ついに飲酒が禁止になったことです。
このことの模擬店の売上に対する影響はかなり大きいことが容易に予想されます。
専攻で出している店舗が夜はOB・OGの溜まり場になっていたりしましたが、酒が出ないとそうした盛り上がりも生じにくいですね。OB・OG数人には会いましたが……

 ~~~

今回は漫画を取り上げます。先日第1巻の発売された『魔人探偵脳噛ネウロ』の作者・松井優征氏の4年ぶりの新作『暗殺教室』です。

暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)
(2012/11/02)
松井 優征

商品詳細を見る

ブランクが結構長かったのでそもそも次があるのか心配していましたが、そのぶっとび加減は相変わらずでした。
この極端にシンプルな表紙からしてただごとではありません。

そして煽り――

暗殺教室 帯
 (帯)

「先生が殺せない」

物語――月を爆破して三日月にしてしまった謎の怪物が1年後に地球をも動揺に破壊すると予告の上、なぜか私立椚が丘(くぬぎがおか)中学校3年E組の担任教師になります。

暗殺教室1
 (松井優征『暗殺教室 1』、集英社、2012、p.16)

いきなりどこから突っ込んでいいのか分からないシュールな展開ですが、このことは各国首脳も承知の上。マッハ20で行動可能で殺すことは困難を極めるこの怪物に対し、絶対に生徒には危害を加えないことを条件に「先生になる」のを認め、3年E組の生徒達に暗殺者となってもらうことで、1年後までに怪物を殺そう、というわけです。
他方でこの怪物――通称「殺せんせー」――、教えるのは上手く、しかも生徒達と真剣に向き合い、教え導こうとします。ある時には才能の形は様々だからと長所を伸ばすことを教え、またある時には長所を活かすためにも短所を補うことを勧め、そしてつねに身を呈して生徒を守り――
生徒たちが先生を殺そうとするという極め付きの異常な状況で「教育」を描いているのが驚くべきところです。

さらに秀逸なのが、椚が丘中学校3年E組の設定です。
一部の成績不振者・素行不良者だけが落される3-Eは山の上のボロい隔離校舎に送られ、理由がなければ本校舎への立ち入りも禁止、部活も禁止、高等部への進学も不可といった徹底的な差別待遇を受けます。
確かに生徒たちは落されないよう、必死で勉強します。

暗殺教室2
 (同書、p.89)

ポイントは「上位一部を特別待遇する」のでも「二分する」のでもなく、被差別層を一部に設けて「それ以外」を「通常」としていることです。
「みんなといっしょであること」を求め、そこから外れることを恐れる現代の生徒達にとって、これがこの上なく有効な方法であることは疑いありません。主人公の渚が3-Eに落とされた途端に掌を返して友達付き合いを断つ元友人達の姿は、まさしく「いじめられる側」に回った者に手を返す教室の有り様そのものです。
今のところ、問題になりそうであるためかまだ現実で実行はされていないようですが……

しかし、これはつまり、椚が丘の生徒達は「下に落ちまい」と下ばかりを見て、びくびくして学校生活を送っているということです。
これに対して、「先生の暗殺」という異常事を目論みながら、それに邁進する3-Eの生徒達こそ「最も活き活き」していることが印象的に描かれます。

そもそも殺せんせーはある人との約束で、先生になることこそを目的としていることもすでに示唆されています。
生徒達と真剣に向き合い、「殺意さえ受け止める」先生に――


私は以前、松井氏の前作『魔人探偵脳噛ネウロ』において、「悪意」とは決して「怨恨」や「金目当て」といった外的に説明された動機と倒置されるものではなく、むしろそれよりも根源的な、どこまでも外的に説明されることを拒む内的感情であることを分析しました(「動機の「内」と「外」」参照)。
そしてその「悪意」こそ、大きな「謎」を生み出す動因として魔人のネウロも期待をかける「人間の可能性」でした。
怪物でさえ期待するほどの成長する内的な生命力、無限の可能性を秘めた人間――それが変わらぬテーマです。
そうした個々人に内的な可能性が、たとえば成績の数値といった外的でひとしなみな基準の下で見失われる時、下を切り捨てることで数値目標を達成するといった「教育」がまかり通ることになるわけです。

殺せんせーはそうした教育に対抗します。
まだまだ一部ですが、この物語は教室の生徒達に順次スポットが当たっていくドラマでもあります。


絵柄はだいぶ可愛く、取っ付きやすくなっているでしょうか。
特に主人公の渚、一見すると性別のよく分からない中性的で小柄な少年ですね。

暗殺教室3
 (同書、p.85)

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テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

No title

殺意さえも受け入れる先生という表現が面白い。
少しイカレてるくらいが刺激的でいい。
読みたくなった、漫画もあなたのレビューも。

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まとめ【暗殺で磨く人間の可能】

今日は母校・愛知県立芸術大学の芸術祭に行ってきました。そんなわけで帰省中です。初対面となる同じ専攻
プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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