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文章に何が求められているか…――『ハンドレッド-ヴァリアント覚醒-』

時間がないせいもありますが、今回触れるライトノベルについてはあまりストーリーの紹介はせず、おまけに評価はいま一つです。ご了承を。

ハンドレッド-ヴァリアント覚醒- (GA文庫)ハンドレッド-ヴァリアント覚醒- (GA文庫)
(2012/11/15)
箕崎 准

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「ハンドレッド」という特殊な武装を纏った少年少女が宇宙から襲来した怪物「サベージ」(外見は巨大な甲殻類)と戦う話、という点のみ踏まえておいてください。

「プロローグ」で、いきなりサベージの襲来により街が破壊されているところから始まります。

「なんで、どうして、こんなことに……」
 多くの教会、寺院など、歴史的な建造物や近代的な高層ビルが建ち並ぶその街は、観光に訪れた者たちや朝の礼拝を終えた者たちなどで活気を見せていた。
 それなのに。
 いきなり放たれた眩い光と、全身を畏怖させるような威圧的な爆発音によって、街は一瞬にして、地獄と化してしまった。
 一度だけではなく。幾度も光は迸り、爆音は鳴り響く。
 骨組みを露出しながらも辛うじて建っているものは僅かにあるが、原形をとどめている建物は殆ど見当たらない。
 (箕崎准『ハンドレッド-ヴァリアント覚醒-』、ソフトバンククリエイティブ、2012、p.5)


しかし、そこから逃げ出した少年が走って辿り着けるところの、皆が避難してしまった公園で眠っている少女
なぜこの騒ぎで目を覚まさない。

そこへ少年が駆けつけたところにサベージが襲ってきます。
ハサミによる攻撃を掻い潜るほどの間近で、サベージが街を破壊する爆発を起こしていた閃光を放ちもしますが、少年は爆風で吹き飛ばされるものの生きています。

「教会、寺院」や「高層ビル」というからには大きな建造物が予想されます。
何体のサベージによる何発の攻撃でここまで破壊されたのかという記述はありますが、襲来してからそれほど時間は経っていないように思われますし、一発の威力は50m離れていても命が危ないくらいでないと辻褄が合わない気がするのですが……

私は別によく考えた場合の整合性(「インテリジビリティ」という意味での「リアリティ」)の話をしているわけではありません。むしろ漠然としたイメージの話です。
敵の強さとそれによる破壊はどの程度の規模なのか、どうもピンと来ないのです。

このことは「なぜサベージに対抗するのはハンドレッドでなければならないのか」ということへの疑問にも繋がります。
サベージはとてつもなく硬いものの通常兵器は有効で、『All You Need Is Kill』のギタイのように特殊な手順を踏まなければ攻撃を回避する手段を持っているという話もなく、一度は軍の攻撃で殲滅したとあります。
第二次遭遇(セカンドアタック)で出現したサベージは数も増えて苦戦しているらしいことは分かりますが、ではなぜ対抗平気としてハンドレッドが求められるのでしょうか。

ゲリラ的に街を襲撃してくる相手を大規模に空爆するのは難しいからなのか、それともハンドレッドは戦闘機による爆撃やミサイルよりも強いのか。
いずれだとしてもそれならそれでいいのですが、そうなのかどうかは読んでいてもよく分かりません。
後者だとしたらハンドレッドによる戦いの規模は近代の軍隊による戦いを超えるものになるはずですが、そうなのかどうか、スケールがはっきりしないのです。

ライトノベルはイラストでビジュアルイメージを補完するものであるから、文章自体にイメージを喚起する説明力はあまり求められない、という考え方もあるかも知れません。
しかし、それはキャラクターの外見の場合には当てはまっても、「何をやっているか」に関しては違うのではないか、という気もします。
実際本作も、主要キャラクターに関してはハンドレッド武装形態を含む設定画が発売前に公式ブログで公開されたりしていましたが、当然と言うべきか、戦闘のスケールが描かれたイラスト等は見当たりません。

無論、私の問題にしていることは的外れであって、これでライトノベルとしては問題ないという可能性もあります。
しかし、私としては、的確なイメージを抱かせる能力というものは軽視すべきではないのではないか、と問うておきます。


なお内容に関して一言だけ言っておくと、金髪ドリルヘアのの美少女の胸を摑んで押し倒してしまっているカラー口絵を見ればだいたいどんな感じか予想が付くのではないかと思います。実際、大枠においてはその通りです。

ハンドレッド口絵
 (同書、口絵より)

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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