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理念はつねに正しい

引き続き選挙に当たって、話題の政党はいかなる公約を掲げているのでしょうか――
たとえば、「日本維新の会」の「維新八策」の第4項「4. 教育改革~世界水準の教育復活へ~」を見ると、「理念・実現のための大きな枠組み」のところでは「自立する国家、自立する地域を担う自立する個人を育てる」「基礎学力を底上げしグローバル人材を育成」等と並んで、

悪しき平等・画一主義から脱却し、理解ができない子どもには徹底的にサポートし、理解できる子どもはぐんぐん伸ばす、個人の能力を真に伸ばす教育へ


とあります。
そりゃ「理解できない子ども」を「置いて行く」よりは「徹底的にサポート」する方が、「理解できる子ども」を「低い水準にとどめておく」よりは「ぐんぐん伸ばす」方がいいに決まっています。
まさに、誰が言ってもつねに間違っていることはあり得ない理念です。

問題があるとすれば、現在の日本の教育は「悪しき平等・画一主義」であるという前提が自明視されていることでしょうか。いつの頃からか日本の教育は「悪平等」であり、「理解できる子ども」を低いレベルに留めているが、そうした子ども達をもっと伸ばすエリート人材育成が必要である、といった言説が流布するようになりました。しかし、これは果たしてどこまで印象論の域を超えて検証されているのでしょうか。
何より、理念そのものはつねに正しいとして、問題はそれを現実に適用するとはどういうことか、です。
たとえば、漫画『暗殺教室』で描かれた、一部成績下位者を劣悪な設備の校舎に隔離する椚ヶ丘中学のシステムについて、学力向上を考えるなら現実に優れたシステムとなるだろう、と私は言いました。
このような制度を実施しても、下位者を隔離するのは彼らを「徹底的にサポート」するため、隔離校舎の設備が劣悪なのは「ハングリー精神を持ってそこから這い上がろうという気概を喚起するため」、逆に本校舎の設備が充実しているのは「良い環境で勉強に励んでもらうため」、と言えてしまいます。

まあ、あくまで「理念」として掲げられているものであるから、そこまで問うのは不当かも知れません。
しかし、より具体的な施策を書いていると思われる「基本方針」欄を見ると、最後から2番目に「大阪府・市の教育関連条例をさらに発展、法制化」とあります。
しかし、教員に対する罰則規定などを条例に規定した大阪では、教員採用試験の倍率が大幅に低下した――つまり教員の応募者が減少したのではなかったでしょうか。
「先生のなり手がいなくなる」ような法令を制定しつつ、どうやって子ども達を「徹底的にサポートし」「ぐんぐん伸ばす」というのでしょうか。
ここから、どうも「理念」とは口当たりのいいことを書いているだけの空虚なものではないかという疑惑が出て来ますが、まあ何らかの秘策があるのかも知れません。私には分かりませんが。

そもそも、「基本方針」の最初には「文科省を頂点とするピラミッド型教育行政から地方分権型教育行政へ」とあります。
しかしその後を見ると――

・教育委員会制度の廃止(首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視)、教育行政制度について自治体の選択制
・公立学校長の権限の拡大・強化、校長公募など、学校マネジメントの確立
・世界標準の英語教育と海外留学支援、最先端を行くICT教育環境
・教育バウチャー(クーポン)制度の導入=教育機会を拡大するとともに教育機関の切磋琢磨を促す
・校長・教頭等の人材確保のための適正な給与、教諭の定期昇給は一定在職年数まで
・教員を雑務から解放し教育に専念させる


日本維新の会が国政選挙に出ようという政党である以上、これらの公約は国策として全国で実施されるものとして掲げられている、という私の常識的な判断が正しいと仮定すれば、どう見ても中央から全国一律で手取り足取り指示しています。
いっそのこと「学習指導要領の廃止」とでも書いてあれば話は通ったのですが、その手の実質的な「地方分権」施策は見当たりません。

こうした、個々の項目において聞こえの良いことを言っているだけで全体としての政治方針が存在するのかどうかは疑わしい、というのはこの「教育」の件に限らず多々見られます。
ちなみに同じく教育関係で見ると、民主党は「いじめ防止のための措置について法制化をすすめ、子どもの命を守り、いじめや不登校に苦しむ子どもたちを無くす」「地方教育行政法を見直し、現在の教育委員会制度を見直す」(どう「見直す」というのか?)、自民党であれば「首長が議会のの同意を得て任命する『常勤』の『教育長』を教育委員会の責任者とする」(するとどうなるのか?)「いじめの隠ぺいなど、法令違反や児童生徒の『教育を受ける権利』の侵害に対しては、公教育の最高責任者たる国が責任を果たせるよう改革」(「責任を取る」とは何を意味するのか?)といった具合で、程度の差はあれ空虚な理念ばかりなのはどこも同じく――

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Author:T.Y.
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2012年4月より京都大学大学院。

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