オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
雑誌を2冊
まずは隔月発売『電撃文庫MAGAZINE』の今月号です。
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なぜかAMAZONに表紙が来ていないので表紙画像も。

常連である入間人間氏の短編「未来フィッシング」は、このブログでも少しだけ触れた前号の「制服ピンポン」の続編。
今回も最後に「つづく」とあったので前号を見直して、ようやく前回も元々「つづく」とあったことに気付きました。
最近の単行本書き下ろし著作とは対照的に、おおむね平和な女子高生の日常ものです。
授業をサボって体育館の2階でよく一緒に過ごしていたしまむら(島村)と安達。しまむらの教室での友人である日野や永藤と安達との間には明らかに距離感があるものの、独自の友情を築いていく……といった様子だったのですが、今回は膝枕をしたり、一方が口をつけたドーナツを相手に食べさせたり、手を繋いで意識していたりと百合色がより強く感じられる内容になってきました。
もっとも、それらは当然のように行われていて、しかもしばしば一方が当然と思っていることを他方は気にしているという微妙な間合いの齟齬がポイントなっているわけでして。
現実の女性からも、「端から見てる方は(特に男は)そういうの(=レズビアン的関係)を期待したがるけど、そういうのじゃなくて」という話を聞きますし、やはりそういうわけではない――少なくとも本人は性的な意識をもって仕掛けているわけではない、というのが味噌なのかも知れません。
登場人物が女子のみの日常系という意味では『アラタなるセカイ』の未来編も(滅びた世界が舞台にもかかわらず!)同じだったわけですが。
そもそも、入間氏は比較的女主人公が好きなのかも知れません。短編では結構な率でありますし、長編でも視点人物が交代する時には女性視点の率は高い印象があります。『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』も6~7巻の半分は女性キャラ視点でしたし。
しかし、単行本丸一冊女主人公というのは記憶の限り『アラタなるセカイ』(小説・現代編)が初でした。しかもアニメ・未来編も主要登場人物は4人全員女の子。ライトノベルとしては主流にならないのでやり難い方を徐々に実現してきているのか、等と思ったりもします。
ここで言っておくと、『けいおん!』(あるいはもう少し遡って『あずまんが大王』)に代表される、主要キャラが女子のみの日常系はアニメ・漫画で今や一ジャンルとなっていますが、どういうわけライトノベルでは定着せず、女主人公、ましてや百合は高確率で成功しないものとされています。
と言っても入間氏の場合、やはり毛色は独特ですが。
今や友達いないネタを売りにする作品も知られたジャンルとなりましたが、「二人なら問題ないけれど三人以上いると自分を除いたところで話が成立して、疎外されてしまう」というひどく現実的な場面をかくももっともらしく描いている事例はあまり知りません(まあ、適度にカリカチュアライズしないと読んでいて辛いから、という理由が大きいのでしょうけれど)。
緩やかな日常系の空気になんとも言えぬ迫真性がある、巧みですね。
このシリーズが単行本化するほど続くのか(続いたところで単行本化されるのかどうか)は分かりませんが……
ちなみに、宇宙服のような格好をした変人は『電波女と青春男』の星宮社(ほしみや やしろ)だとすっかり思い込んでいたところ、知我麻社(ちかま やしろ)と名乗る別人でした。
しかし宇宙服コスプレ、自称宇宙人、そして名前という特徴は一致。しかも同胞に会いに来たと主張。結局『電波女』の社は正体不明のままでしたが、本当に異種族のような気もしてきます。
単行本も発売された短編シリーズ『野﨑まど劇場』はついに小説の形ですらないものに。

(「野﨑まど劇場 Café Bleuetは元気です」、『電撃文庫MAGAZINE』2013年1月号、p.396、クリックで画像拡大されます)
喫茶店の前に置かれている黒板の内容の変化を追っていく中で、フランス語で店名を付けた喫茶店のイメージから離れた方向にメニューが変化していったりする様がおかしい。
とは言え、店が寂れていきやしないかという不安を掻き立てる中間の展開からすると、オチは大人しいものだった気もします。いや、ある意味意外ではありましたけれど。
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続いて今月発売の『コミックビーム』1月号です。
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巻頭カラーは桜玉吉氏。
深夜に腹が減ったので親子丼を食べに行った話。

(桜玉吉「深夜便」、『コミックビーム』2013年1月号、p.3)
しかし店には謎の女が…

(同誌、p.8)
安定して面白い日記漫画ですね。コンスタントに掲載されるようになってきましたし、かなり復調が感じられます。
表紙はおおひなたごう氏『目玉焼きの黄身いつつぶす?』。今回はステーキセットのライスの食べ方の話。

(おおひなたごう「目玉焼きの黄身いつつぶす?」第4話、同誌、p.32、クリックで画像拡大されます)
竹本泉氏『あかねこの悪魔』は前回、図書館によってはつじつまの悪魔が犬の姿のところもある、という話でした(それまではみんな猫の姿でした)。
今回は第6図書館で紙魚取りをやっている少女・八王子独楽子(はちおうじ こまこ)も登場。
ちなみにつじつまの悪魔が犬のところでは紙魚も犬です。

(竹本泉「あかねこの悪魔」第34章、同誌、p.408)
それから最後に、今まで触れないままでしたが、気が付けば連載5回目となるしりあがり寿氏の『黒き川』もなかなか凄い。
父を探し幻想的な世界を旅する少年が今回辿り着いたのは怠惰の悪魔・ベルフェゴールの部屋。
怠惰なので部屋を片付けもしないでインターネットをやっています。

(しりあがり寿「黒き川」第五話、同誌、p.303)
働いて金を稼ぐまでもなく、欲しいものなどない、という悪魔はまるで聖人のよう。

(同誌、p.307、クリックで画像拡大されます)
この世は生老病死の苦ばかり(仏陀の四門出遊に倣って描かれるこれは不気味でもあり、パロディ的でもあり)、生きることに意味などないと「真実」を喝破する悪魔に対し、「ウソの運命でもウソのファンタジーにすがりついてでもボクは生きる」(同誌、p.319)という少年。
部屋の外は全て虚空という異様で幻想的な描写とともども、『弥次喜多』シリーズを思わせる強烈なイメージを提供してくれる作品は久し振りです。
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