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メカと美少女のシンプルな形――『きゃんでぃっど 乙女とカメラと地獄突き』

今回取り上げるライトノベルはこれです。

きゃんでぃっど 乙女とカメラと地獄突き (一迅社文庫)きゃんでぃっど 乙女とカメラと地獄突き (一迅社文庫)
(2012/06/20)
小幡 休彌

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タイトルからある程度は予想されますが、女子校を舞台にしたカメラ女子の話です。
主な登場人物は女子のみ、そして百合(レズ)要素あり。まあライトノベルとしては今ひとつ流行らないパタンです。
そして主人公・森村環(もりむら たまき)は昔ながらの銀塩カメラを愛用しており、小学校時代からの友達である日夏乙羽(ひなつ おとわ)もひょんなことから銀塩カメラに挑戦することになります。
シンプルで無骨なアナログカメラという機械と女の子の取り合わせは「美少女とメカ」に通じるものがあるのかも知れません。

あとがきを見ても「出版のあてもなく」「今、この話は書かなきゃ」(p.316)と思って書いた旨がはっきりと述べられています。その後の一節が本作を適切に物語っているでしょう。

 そんなこんなでこのお話は、おおむねとある女子校に通う写真好きな女の子と、彼女をめぐる元気で少々おバカな女の子たちが、特に気高い目標を達成するわけでもなく、なんだか知らないけど地獄突きされたりじゃれ合ったりして毎日を楽しく過ごす、そんな小説になってます。
 (小幡休彌『きゃんでぃっど 乙女とカメラと地獄突き』「あとがき」、一迅社、2012、p.316)


このことは、売れ線の形式ばかりで何が描きたいのかはっきりしない作品よりも評価したいところです。
緩くも楽しいコメディのテンポも、内容が“自ずから書かれることを求めた”からこそのものを感じさせます。

ただ、同時に「なぜライトノベルで百合は流行らないのか」を感じた面もありました。

「だって早綾は、キメキメにしてるより、自然にしてたほうが可愛いよ?」
「え……?」
 早綾は二重にびっくりして、布団をかぶったまま固まってしまう。
 ひとつは、いきなり環から名前で呼ばれたこと。
 もうひとつは、自分が可愛いなんてイヤというほど自覚してるのに、今、そう言ってもらえた瞬間、信じられないくらい、胸がドキドキしていること。
 真っ暗な中でも、かあっと顔に血の気が集まってくるのが自分ではっきりわかる。
(やだ……恥ずかしい。どうしよう。なんでこんなに恥ずかしいの?)
 (同書、p.96)


こうした描写が男女のラブコメの定型をほぼそのまま適用していることは、ある程度この分野をご存知の方には明らかでしょう。
別に男女のラブコメなら型通りでいいというわけでもありませんが、しかしこれをあえて女同士で読む意義は何かというと悩むところがあります。世にマニアがいるとしても、マニアは何を求めてマニアであるのか。
コメディの一環としては「ここでフラグが立つのか!?」とツッコミつつ楽しむ手もありますが。

さらに、後半は写真を撮られることを拒否する美少女・十文字菫(じゅうもんじ すみれ)を巡る物語になりますが、ここでは分かりやすく「彼女が写真を苦手になった原因である過去のトラウマ」が提示されます(ついでに言うと、環が銀塩カメラを愛用している理由も同様に「過去の事情」によります)。
「トラウマとその克服」に訴えるのが定番の安直なドラマツルギーであるというだけでなく、そもそも「トラウマ」というのは「それを抱えていることによって苦しみ、克服することでめでたしめでたしとなるもの」といった扱いをして良いのかどうか、疑問なしとはしません。
ただし本作の場合、トラウマの原因に直接アプローチするというよりは「写真に慣れてもらう」という常識的なアプローチ(そして、人物を撮る写真家なら当然考えるべきこと)を取っているだけに、問題は少ないとも言えますが。
そもそも終盤部も、物語の山場というには疑問があるくらいの緩やかなものですし。

というわけで、むしろドラマティックでない部分、「カメラ女子達のコミカルで力の抜けた日常」を描くことに徹した部分こそ評価したい作品でした。後はそれが合うかどうかです。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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