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オリジナルと作ったものの間で――『恋人にしようと生徒会長そっくりの女の子を錬成してみたら、オレが下僕になっていました2』

今回取り上げるのはこちら、現時点でタイトルがライトノベル界最長記録とされる『恋人にしようと生徒会長そっくりの女の子を錬成してみたら、オレが下僕になっていました』(略:『恋人錬成』)の2巻です。

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(2013/01/19)
月見 草平

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1巻レビュー

実は、あるところで1巻のレビュー記事を読んでもらったところ、「むしろ『未来のイヴ』を思い出した」という意見を聞きました。
私は言われるまで忘れていましたが、この指摘は正確と言わねばなりません。

ヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』(1886年発表)と言えば、「アンドロイド」という言葉を初めて用いたとされる作品であり、また現実の女は見た目が良くても中身がダメだから代わりにそっくりのアンドロイドを作ってしまおう、という二次元嗜好の走りのような作品でもあります。ちなみにアンドロイドのハダリーを作るのは発明王のエジソン。名前だけ実在の人物に借りた超常的なマッドサイエンティストですが…

そして『恋人錬成』の世界観は明確な唯物論なので、「物を作る」ことと「人間を含む生物を作る」ことの間に本質的な違いはありません。ですから、「女の子を作る」話が「アンドロイドを作る」話と構造的に同一だという指摘は正当です。
もっとも、人間に比べるとやはり「何かが欠けていた」とされる『未来のイヴ』のハダリーと違い、『恋人錬成』のアメリアは正真正銘、人並みの感情を持った人間の女の子。お陰でオーソドックスなヒロインを取り揃えたライトノベルらしいラブコメとして手堅く仕上がっています。
そもそも、本当に生命を――とりわけ人間を――生み出すとなるとやはり不気味さや恐ろしさが付き纏ってしまいがちなところを、主人公の軽薄さであっさりと作ってしまうところからスタート、普通の女の子として肯定的に描き通そうとしているのが本作の特徴と言えるでしょうか。

今回の序盤は主人公・アレクのクラスメートであるお嬢様・コスタがアレクの下宿に押しかけてきて、それによるドタバタが中心に展開していきますが、この巻のメインは表紙をも飾った生徒会長・パメラ(タイトルにもある通り、「錬成」されたアメリアのモデルでもある)です。
1巻のラストでアレクがアメリアを錬成したという、バレたら危ない秘密を知ってしまった彼女ですが、ひとまず秘密にしておいてくれているものの真意は不明でした。この巻でも途中までは真意定かでなかったのですが、どうやら普通にラブコメ要員入りしたようで…
そして学園都市のお祭り「創造祭」に両方から誘われることになってしまったアレク。オリジナルと錬成種の間でどうする……と。ただし、彼のそうした葛藤を掘り下げるというよりは、結局成り行きが9割という感じの展開でしたが…まあラブコメに決着をつけないための措置としてはこれも普通でしょうか。

そして後半はやはり、敵襲とバトルありの展開となります。
ただし、1巻の敵は巫女錬金術師と対をなす「仕事使い(アネルギスト)という連中でしたが、今回の敵はまた別
巫女錬金術師であると同時に「仕事使い」の能力をも併せ持つというアレクの能力についても、パメラが興味を持って調べに行く展開がありながら、新たな手掛かりが一つ見付かっただけと、まさに「一歩だけ前進」の感。しかも仕事使いの連中についても実態はほとんど不明というのですから、謎は多く残されたままです。
他方で、各国の勢力関係といった大きな話が前面に出てきます。学園は各国に対して独立している教会の傘下にあるのですが、巫女錬金術師はエリートのはずが、各国に就職した後のブラックな実態といった話も登場し……
こういう道具立ても特に珍しいものではありませんが、最近はライトノベルでも『なれる!SE』のような、ブラック企業に就職してしまった主人公を描く作品がちらほら見られるのを考えると、こういうのもそう遠い世界の話ではないものとして読むことも可能かも知れません。

そんなわけで、かなり話を広げてきた感のある2巻でした。まあ次辺りでそれらが互いに結び付く可能性もありますが…

なお、バトルになると錬金術の才能が圧倒的なアメリアと特殊な能力を持つアレクが山場を持って行き、クラスメートはもちろん優秀なはずのパメラですらあまり活躍がなくなりますね。作者もあとがきで不憫と言っているほどに。


ところで、錬金術周辺の基本用語は英語もしくはそれに近い風ですが、クラスメートのエマの故郷の言葉はドイツ語、暦はフランス革命歴(月の名前が「熱月(テルミドール)」等)、さらには「二百年前くらいにいた、巫女錬金術師の研究者」の名前が「オーギュスト=コント」だったり(もちろん、同名の実在の哲学者とは名前以外関係ありませんが)と、用語には割と節操がない感じです。


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(↑イヴとの関係で少しだけ『未来のイヴ』にも言及あり)

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Author:T.Y.
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