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実は「想定通り」なのではないか…(「間違っている」のは誰か?)

佐伯啓思氏は『経済学の犯罪』において、ここ十数年間の日本がデフレと雇用不安により、アメリカやEUと比べてもずっと経済的に停滞している理由こそ「構造改革」である、と主張します。

 人によっては「いや、日本は構造改革を十分にやってはいない。だからまだ景気が良くならないのだ」という。「改革論者」は、いまだに日本の停滞の原因は構造改革が進まないからだという。
 しかし、この議論にはそもそも説得力がない。
 というのも、一九九〇年代を通じて、程度問題はあっても「構造改革」が進展したことは間違いなく、規制緩和、金融自在化、市場開放、労働市場の流動化などは相当程度に進展した。
 もし「構造改革」が日本経済を立て直すのだとすれば、少なくとも以前よりは良い状態になっているはずだ。にもかかわらず一九九〇年代以降、日本は低成長を続けている。九八年以降はデフレ経済になっている。むしろ「構造改革」が経済をさらに混乱に陥れたというほうが適切に思えてくるのだ。
 小泉政権になってからの二〇〇〇年代の日本の景気回復も、先にも述べたように、そもそも本当の景気回復とはいいがたい。それはアメリカや中国経済の外需頼みであった。
 しかも二〇〇〇年には、日本の一人当たりのGDPは世界第三位であったのが、二〇〇七年には第十九位まで低下している。日本経済を効率化して国際競争力をつけるのが小泉改革だったはずではなかったのだろうか。
 本来、構造改革は国内で潜在的に存在する消費需要をほりだし、それを満たすためのものであった、より効率的部門へ資源を移動するということは、ある部門には大きな潜在的需要がある、ということであった。だかたこの資金の流れを変えるための規制緩和や財政削減などを実施することで経済の効率をいっそう高めるはずだった。これがうまくゆけば内需が拡大し、消費需要は伸びているはずである。
 しかし、ほとんどそうはなっていない。(……)
 (佐伯啓思『経済学の犯罪』、講談社、2012、pp.26-27)


佐伯氏は、これはそもそも我々が――「構造改革」論者が――間違った思想(イデオロギー)を信じているためである、ということを明らかにしようとします。

間違っている――と、「構造改革論者」の善意を信じるのなら、そうなるのでしょう。

構造改革論者、自由市場主義者といってもたくさんいますし、誰がどこで何を主張したのかここでは必ずしも明瞭ではありませんけれど、少なくとも佐伯氏は、

・「本当の景気回復」とは「内需」(日本国内での需要)を伸ばすことであり、ひいては国民皆の収入を増やすことである。
・構造改革論者も、本来はその「本当の景気回復」を目指している。

と考えていると思われます。
であるならば、構造改革は「間違い」ということになるでしょう。

しかし、氏は引用箇所中で「日本経済を効率化して国際競争力をつけるのが小泉改革だった」とも言っています。

「効率化」とは、要するに同じことをするのにかかる費用を減らすことです。費用の中には人間に払うもの、すなわち賃金も含まれます。
賃金を減らせば、多くの人が受け取る賃金が減るわけですから、使えるお金が減り、国民一人当たりGDPも減るかも知れません(「一人当たり」の数値は、一部の人だけが大幅に増えることで伸びる可能性もありますが)。

「国際競争力」とは、諸外国で作られた商品と競争しても売れるということです。その「競争」の場が海外、たとえばアメリカや中国の市場でないとは言っていません。

なんだ、「アメリカや中国の市場に頼って景気回復」しつつ、賃金は下がり国民一人当たりGDPが減少したことで、「効率化して国際競争力をつける」という構造改革の目標は達成されているではありませんか。
円高を差し引いても原料価格が値上がりしたにもかかわらず、日本国内での物価がまったくといっていいほど上がっていないのは、その分賃金をカットしたからだ、というのは吉本佳生氏の『日本経済の奇妙な常識』にも指摘がありました。

そしてほとんど言うまでもなく、賃金をカットしやすくするのが「労働市場の流動化」です。

「間違った思想を信じている」(信じさせられている)人があるとしたら、それは構造改革、市場自由化による「景気回復」なるものの利益が自分にも回ってくると考えている人でしょう。
その意味で、マルクス主義の言う「階級闘争」は健在であるとするハーヴェイには同意したいですね。


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Author:T.Y.
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2012年4月より京都大学大学院。

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