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絡み合う「物語」とその根底――『俺がヒロインを助けすぎて世界がリトル黙示録!? 7』

今回のライトノベルは『俺がヒロインを助けすぎて世界がリトル黙示録!?』の7巻です。
ええ、「次々とピンチのヒロインを助けて恋愛フラグを立てるも、鈍感なため修羅場に陥る主人公」という定番の設定をメタ的にあえて徹底したこのシリーズももう7巻です。

俺がヒロインを助けすぎて世界がリトル黙示録!? 7 (HJ文庫)俺がヒロインを助けすぎて世界がリトル黙示録!? 7 (HJ文庫)
(2013/01/31)
なめこ印

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(既刊レビュー:1巻 2,3巻 4,5巻 6巻

これだけ次々ヒロインが出てくると、性格や設定を考える作者も、デザインを描き分けるイラストレーターも、覚える読者も限界への挑戦の様相を呈してきますが、過去に登場したヒロインは登場しない時にはしないという割り切りと、巻ごとにメンバーを少しずつ入れ替えて、前巻のような短編集も入れることで上手く解決を図っています。
そして、今までは1巻につき3人のヒロインが登場することが多かったのですが、この7巻では過去最多の4人のヒロインが登場。
しかし表紙に描かれているのは2人……実は今回は前後編で、次巻に続きます。(目次にちゃんと「エピローグ」があるので終盤まで気付きにくくなっていますが)

1巻では魔王と戦う勇者を必要とする異世界・実は魔法使いの家であった幼馴染の危機・そして宇宙人の政治的問題と3つのまったく異なる「物語」に同時に巻き込まれ、それらを組み合わせて解決していった本作ですが、そこ後も基本は同じとは言え、烈火が巻き込まれる以前にヒロイン相互に関わりがある――複数の「ヒロイン」が広い意味では同じ物語と登場人物と言えるケースも増えていました。
4巻では「ヒロイン」が烈火を狙う敵であるという新趣向と同時に、あるヒロインが別のヒロインを狙う敵であるという状況も加味されました。解決すべき問題としては新しいタイプが登場しましたが、烈火が巻き込まれる遙か以前から二人のヒロインが敵対しているというのは、二人がほとんど世界観を同じくする物語の登場人物である、ということでもあります。

しかし、この7巻で登場するヒロインはアイドル歌手言塚澪(ことづか みお)超能力者エリシス・オットー、異世界の元勇者であるコロナ、そして風の精霊であるリュンと見るからにバラバラな世界観の住人たちです。もっとも、リュンとコロナはともに魔法ファンタジー世界の住人ですし、実際浅からぬ因縁があることが明らかになってきますが……
他にも、澪の身にあった異変に超能力者が関わっていたり、超能力者が魔法のアイテムに関わっていたりといった繋がりはありますが、ヒロイン相互の関係というよりも組織ぐるみでの間接的な関与が多く、かなり事態は複雑です。しかも前後編ということでまだいくつかの真相は謎のままです。

既刊で仲間になったヒロインが強力な力を持っている場合、次の巻でもっと強力な敵が出てくるという話でもないので(たんなる戦いの強さは1~2巻がピークだったでしょう)、そのヒロインの力をいかにセーブするかというのもストーリー運びのポイントです。
まあ、たんに別行動で登場しないということもありますが、烈火の幼馴染である皐月など、いつも身近にいながら、この世の全ての事実を知ることができる「森羅の大魔法」という強大な力の持ち主です。分かるのは起こった事実だけで人の心までは分かりませんが、それでも基本的に、これで大概の謎は解けるはずです。
今までも、そもそも「森羅の大魔法」で調べないよう誘導されていたりと色々ありました。
ところが今回、「森羅の大魔法」で調べると、澪が証言するような事実はなかったことが判明。これは何かの思い違いかそれとも……

また、やはり1巻で登場、故郷である異世界に帰れないままになっていたハリッサが今回、新たな魔術を編み出して里帰りをすることになります。過去の物語の舞台がふたたび使われるのは初で、これはまた、「勇者の剣」という過去に使われたキーアイテムを端緒に、その背景がさらに掘り下げられる物語でもあります。
このこととある種関わることですが、今巻で指摘されるのは「一つの『物語』が解決しても、それで終わりではない」ということ。

「そもそも『人生』とは『物語の連続』です。何か問題をひとつクリアしたら、そこでエンドロールが流れて幕を惹かれるようなものではありません。それは様々な『物語』に巻き込まれ続けている烈火さんが一番ご存じなのでは? まぁ、リュンさんの場合、烈火さんに比べたらはるかにスケールが落ちますが……」
 (pp.306-307)


「物語」というメタ的な設定を用いていた本作ですが、ここに来て「エンドロールが流れて幕を惹かれる」という物語のかなり根本的な性格に対しメスが入ってきました。

このことは差し当たり、主人公の葛藤という形で現れます。
「波乱の血筋」が巻き込まれるのは「そのままだとバッドエンド寸前の物語」、ということは、“まだ”バッドエンドにはなっていないのであり、解決の可能性があるはずでした。
しかし、もう一つの物語は解決不能なバッドエンドを迎えてしまい、それでも人生が――新たな物語が続いているとしたら?
「もう救えない状況」を前にして「主人公」はどうするか――そんな状況に初めて直面するわけです。

まあ、現実的な問題に対しても現実には不可能な解決を与えるご都合主義をいかにして可能にするか、というところを追求してきた本作ですから、最後はそれなりに上手く片付けてくれるのだろうと思いますが……
ただ、メタ的な「物語」の追求は「物語」そのものにメスを入れることになるのか、と思うとこれもまた面白いことです。

異世界に飛んだ烈火達とこちらの世界の残ったヒロイン達が別々に物語を展開していたりと、分冊に相応しくストーリーは過去一番複雑で、真相も解決も次巻を待たないと分かりませんが、よく練られている感ははっきり伝わって期待が持てます。

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