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「ぼっち」は気楽か?――『急募)美少女達のフラグをへし折り、委員長を辞める方法』

付録がどんどん大きくなる雑誌があって困ったものですね。

電撃文庫 MAGAZINE (マガジン) 2013年 03月号 [雑誌]電撃文庫 MAGAZINE (マガジン) 2013年 03月号 [雑誌]
(2013/02/09)
不明

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今号の付録は枕カバー(『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』)と、

電撃文庫MAGAZINE Vol.30付録(枕カバー表)
 (表)

電撃文庫MAGAZINE Vol.30付録(枕カバー裏)
 (裏)

下敷き(『ソードアート・オンライン』)です。

電撃文庫MAGAZINE Vol.30付録(下敷き)

まあ、枕カバーは折り畳めばそう体積があるわけでもありませんが…

内容のことはまあ、いいでしょう。注目の作品はまたの機会に。

 ~~~

で、それとは特に関係ありませんが、こちらのライトノベルを紹介させていただきます。

急募)美少女達のフラグをへし折り、委員長を辞める方法 (一迅社文庫)急募)美少女達のフラグをへし折り、委員長を辞める方法 (一迅社文庫)
(2012/10/20)
栗栖 ティナ

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本作の主人公・日向護(ひなた まもる)は「ぼっち」として一人気楽に楽しむ生き方を標榜していますが、激務のクラス委員長に選ばれてしまい、こうなったら見方を作って不信任案を発議してもらい、委員長を辞めようと活動している内、まかり間違って3人の美少女たちとフラグを立ててしまう……というのが本作のあらすじです。

ヒロインがミニスカートでパンチラが多かったりするのはまあいいのとして、冒頭からパンツの食い込み具合までやめに丁寧に描写する文章が来るのはアダルトレーベル出身の作者らしいと言えばそうですが、ならばアダルトレーベルでやればいい、ライトノベルに求められるサービス描写は少し傾向が違う、という印象もなきにしもあらず。
が、そこを過ぎると、比較的読みやすく筋のはっきりした話が展開されます。まあ最後までエロは十分多いのですが。

ストーリーについては上のあらすじ以上にそう語ることもないので、一つ主人公の信条「ぼっち」に注目してみましょうか。

(世の中、ぼっち以上に気楽なものはないっての)
 複雑な人間関係や付き合いにわずらわされることなく、毎日をマイペースに、自分の好きなように時間を使える、自由な日々。
 休み時間はくだらないお喋りに時間を費やすより、のんびり惰眠を貪りたい。
 放課後は部活なんかに無駄な情熱を燃やすより、さっさと家に帰ってゲームでもしたい。
 世間で持て囃されている『賑やかで充実した青春』なんかよりも、俺にはそういう孤独で静かで豊かな日々の法が幸せなのだ。
 (栗栖ティナ『急募)美少女達のフラグをへし折り、委員長を辞める方法』、一迅社、2012、pp.10-11)


しかし、この前提はどこまで妥当でしょうか。
むしろ、「ぼっち」であるがゆえに面倒を押し付けられるということはないのでしょうか。
実際、「スクールカースト」上位の生徒は下位の生徒に面倒を押し付ける、という傾向も報告されます。

人望があればこそ好きなように過ごしても許される人もいますし、こと学校教室のような狭い空間では、人と関わらないようにしていても、自らの存在が他人の目に入らないようにすることは困難です。
要するに、「くだらないお喋り」にも付き合わなければいけないような“わずらわしい”人付き合いと、そもそも極力人と付き合わない「ぼっち」の二者択一しかないというのは、かなり極端で奇妙な人間関係観なのです。

現に護は、クラス委員長という面倒を押し付けられています。
ただし、これは彼自身が寝ていて拒否しなかったためであって、推薦したのはヒロインの一人で大の仕事好きの(護に委員長の仕事をさせようとついて回ることになる)美峰聖夏(みみね せいか)ですから、積極的に「面倒をやりたくない」誰かに仕事を押し付けられたわけではありません。
この事態はどう読むべきでしょうか。


たとえば、『僕は友達が少ない CONNECT』では小鷹以外の視点から周辺人物のことが描かれましたが、周囲が基本的に“いい人”である中で自分から壁を作っている隣人部員たちの姿が印象的でした。
しかしこれは、「もう友達である」現実を認めず、深い関係の形成を避けようとしていた小鷹たちの姿が7巻頃からはっきりと描かれていたことを考えれば、自然な流れです。
ここでスクールカーストの問題などが除外されているのは、作品としての問題意識を絞り込んだ結果と見なしても差し支えないでしょう。

逆に、教室空間における群衆心理の恐ろしさを描いた作品としてたとえば『灼熱の小早川さん』(田中ロミオ)がありました。
この作品のクラスメイトたちも悪人として描かれているわけではありませんが、揃ってだらけ、面倒な役職を嫌がり、イベントにも力を注がず、そんな中で「やるべきことをやろう」と号令を掛ける者を「空気を乱す」として嫌います。


それに比べるとこの『急募)美少女達のフラグをへし折り、委員長を辞める方法』では、「生徒の自立心を育てる」というモットーにより「委員会や生徒会、クラス委員長などの役職に与えられる仕事の量も、余所の学校都比べてやたらと多い」(同書、p.19)という設定があり、役職を避けたがる生徒たちもひどく規律が乱れているというよりは、ある程度同情できる設定となっています。
さらに、クラスメートの心象が悪ければ「そんな奴だから、遠慮なく面倒事を押しつけられる」(同書、p.68)という扱いを受けますが、護は後半、クラスメートと距離があったり馴染めていなかったりした美少女二人と仲良くなかったことで、一定の評価を受けてしまいます。しかし、委員長として活躍しているとなれば、やはり不信任決議案は出してもらえません。
結局、クラスメートの護に対する視線は好意だろうが悪意だろうが、どちらであっても「不信任決議をしてもらって委員長を辞める」という目標のため頑張ることでかえって目標から遠ざかる、という状況に嵌まるよう構造化されているのです。つまり、“周囲の皆”が善であっても悪でもあっても構わない、問題でないということです。

というわけで、「不本意ながら委員長の責務および美少女との恋愛フラグの泥沼に嵌まり込んでいく」という落語的状況のラブコメに徹している辺りが、本作がライトなコメディたる所以です。

しかし――
本作のヒロインたちの、人間関係に対する距離感の狂い方はどうなのでしょう。
二人でプリクラを撮って携帯電話に貼って、恋人同士だと周囲に思われることをも予想していなかったり、一挙に「将来の夫婦」として迫ってきたり、ヌードモデルを頼んで自分も脱ぎ始めたり……
これが、教室という特殊な空間において「ぼっちがぼっちを引き付けた」(第5章のタイトルが「類(ぼっち)は友(ぼっち)を呼ぶ」です)結果だとしたら、やはりぼっちのリスクは大きかった、と思わざるを得ないのです。


灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)
(2011/09/17)
田中 ロミオ

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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