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しっぺ返しを受けるに値する「悪」とは……

桜玉吉氏の漫画『ブロイラーおやじFX』を当時の担当編集者だった奥村氏(現コミックビーム編集長)は「女にまったく相手にされない中年のオッサンが、懲りずに女を追いかけ回す、非常に悲しいギャグ漫画」(『桜玉吉のかたち』より)と説明していました。

そうも言えるか、というのが正直なところ。
何しろ、この漫画の主人公は冒頭から「あの~、ちんちんがカタいんですけど」と言って通りすがりの女性に声をかけるようなおやじです。
セクハラと痴漢と猥褻物陳列をやって回っているオッサンが然るべき「しっぺ返し」を受ける話、と考えればオーソドックスです。
下ネタそのものは、ちんちんがアスファルトにめり込んだり、途中からそのちんちんが独立した人格を持つようになったりと、ある種とんでもない方向に暴走していきますが。

もっとも、さらに考えてみると、そこまで露骨に痴漢行為をしなくても、不細工で気持ち悪い男が懲りずに女を追いかけ回すのはギャグになる傾向を考えると、ここでも「世の中顔である」という原理が第一に働いているのかも知れませんが。

ブロイラーおやじFX+ (ビームコミックス文庫)ブロイラーおやじFX+ (ビームコミックス文庫)
(2008/07/22)
桜 玉吉

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桜玉吉のかたち (Beam comix)桜玉吉のかたち (Beam comix)
(2000/06)
エンターブレインコミック編集部

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 ―――

そんなことを思い出したのは、今月のコミックビームを読んでいてのことです。

月刊コミックビーム 2013年3月号月刊コミックビーム 2013年3月号
(2013/02/12)
不明

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1月号では2年ぶりの掲載だった『黒き川』が、今回は2ヶ月ぶりに掲載されていました。
今回、旅をする少年が出会うのは色欲の悪魔アスモデウス

黒き川 アスモデウス1
 (しりあがり寿「黒き川」『コミックビーム』2013年3月号、p.302)

…なんでしょうこのオッサンは。
どこでもドアのような扉を通ってあちこちを渡り歩き、窓の外が虚空になっていたりする幻想的なこの作品では、砂漠の真ん中で脈絡もなく美女が通ったりもします。

黒き川 アスモデウス2
 (同誌、p.304)

……この絵柄の違いも凄いものがありますが。
しかしこのアスモデウス、人を堕落させるどころか、片っ端から女に声をかけて相手にされないだけです。しまいには少年に同情されるくらいに。
少年も彼のどこが「悪魔」なのかと疑問に思いますが……

黒き川 アスモデウス3
 (同誌、pp.318-319)

男性器が独立した生き物の顔になっている点を含めて、やはり『ブロイラーおやじ』を思い出してしまいますが、このやたら壮絶な画面ときたら。
社会の秩序をはみ出すことこそが「悪魔」の所以であり、そこで「悪魔」の名も生まれるのだ、と。


ところで、今回AMAZONに表紙が来ていないので、表紙画像もアップしておきましょうか。
表紙を飾るのは唐沢なをき氏が連載中の『まんが極道』です。

コミックビーム2013年3月号

一応、架空の漫画家「安栗土地郎(あんぐり とちろう)となっていますが、その姿はどう見ても唐沢氏本人の自画像(家族やアシスタントも含む)。
しかも子育てに重点を置いた場合と、仕事に重点を置いた場合、そして中間の場合三つのシミュレーションです。
そう言えば最近、子どもが生まれるにともなっての親戚(特に嫁の家族)の声とかいうネタを1度ならず使っていましたしね……

もっとも、こうやってきちんとネタとして対象化して描けることは、真に切実なことではない場合が多いのですが。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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