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なぜ写実か

未だに完全回復ならず、今ひとつ食が進まない中、ビタミン補給などを考えて何かと蜜柑を食べています。
蜜柑が主食……にまではなりませんが。

 ~~~

いわゆる写実信仰、というものが現在どこくらい幅を効かせているのか定かではありませんけれど、ところどころで見かけるのは事実です。
リアリティがある/ないという話も、そもそも「リアリティ」という語の差すところが一義的でないがゆえの混乱があり、そこを分けた方が良い場合があること、再三指摘してきた通りです。ただここでも、「現実に照らし合わせて、ありそうかどうか」つまり「作品の内容が現実(に可能なこと)と合致しているかどうか」がしばしば言われます。
さらに、ここに「真理」などという概念が入ってくると、事態はさらなる混乱を来たします。

芸術作品が真理を描くものである、という芸術論は古来色々ありますが、実のところ、文学にしろ造形芸術にしろ「現実をそのまま写し取る“写実”“自然主義”の方が真理を描くのに相応しい」等ということは基本的にない、と私は考えます。

なぜか。まず、「現実をそのまま写し取る」方が真理を描くことになるというのは、表現された内容と現実との一致こそが真理である、という考え方に基づいていると思われます。
しかし、芸術はフィクションであり、嘘を描くものです。
嘘の中に現実の写しが混じってるとして、それが現実の写しであると見分けることができるのは、我々があらかじめ「現実」を知っているからでなければ、いかにしてでしょうか。
とすれば、より根本的なのはその「あらかじめ知られていること」の方です。結局、芸術作品は真理を伝えるどころか、我々が元々知っている真理をその内に再確認できるだけです。

「認識と事実との一致」という真理観に従う限り、写実も荒唐無稽な話も抽象画も等しく真理を伝える力を持ちません。反対に、そのような真理観を採用しないのであれば、真理性という点で「写実」に優位を見る理由は何でしょうか。

(……)真理は今日、そしてはるか昔から、認識の事物との一致を意味している。しかしながら、認識することと、その認識を形成し表面する命題が事物に合致するため、それに先立って事物そのものが命題に結び付き得るものであるためには、事物そのものがそのものとして自らを示さなければならない。事物そのものはそれ自身で隠れから現れ出て、隠れなさの内に立つのでなければ、いかにして自らを示すだろうか? 命題は隠れなさに、すなわち真なるものに従っている限りにおいて真なのである。命題の真理はつねにこの正当性にすぎない。(……)
 (Martin Heidegger, Gesamtausgabe, Band 5, Vittorio Klostermann, 1977, S.38〔マルティン・ハイデガー『芸術作品の根源』〕)


さて、ハイデガーは「真理」を「認識と事物との一致」と見なす考え方を「伝統的真理概念」と言います。つまり西洋思想史上の伝統の問題だ、というわけです。
ただ、芸術における写実信仰に関しては、かなり日本近代固有の問題もあるように思われます。
言ってしまえば(これも人の借用の上、すでに飽きるほど触れてきたことの気もしますが)、展覧会で「きれいな絵ね~、上手いわけ~」と言っているおばさんのメンタリティです。
鑑賞の伝統がないから、そうなるのです。


※ 冒頭の「リアリティ」論議のようなケースにおいても多くの場合、人がそういうことを言い出す元々の理由はむしろ感覚的・感情的に作品に何か違和感を抱いたがゆえではないでしょうか。
作品が現実からかけ離れていようと、現実を無視して説得力を与えるだけの強靭さを備えていないがゆえの不満を翻訳したものが「リアリティがない」であるとしたら、そのような言明に正当さがないとは言いません。


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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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