オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
愛惜
変身アイテムが銃で、獣電池を装填してトリガーを引く事で変身する……のまでは良いとして、トリガーを引くとなぜかBGMが流れ、踊りながら変身します。
さらに、巨大ロボの合体シーンのBGMも同じです。
こちらは変身シーン以上に映像の流れている時間が長く、戦闘シーンの高揚感や緊迫感から切り離された音楽が流れていることによる違和感は何とも言い難いものです。
それと、今作の合体シーンは――もちろんCGは多用されているはずですが――昔ながらの玩具を使った変形合体を思わせるレトロさがあります。最近は空中で滑らかに変形合体していることが多い中で、無骨なドッキングに重点を置いた描写になっていますし。
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話は変わりますが、「愛」という漢字は古典では「おシム」と訓読する場合があります。「惜しむ」とほぼ同義です。
では「愛国心」とは、「国には利権があるから、無くなったら勿体ないな」と思う心のことでしょうか。
これが冗談とばかりは言えないのは、「国益」とは誰の利益か、という問題があるからです。
これは国益のためだ、反対するやつは国賊だ、という類のことを言い立てる時、往々にして、そこで言われている国益とは「自分の権益」であるということがないでしょうか。
しかし実際にはそれが「国内の誰かから搾取された利益」であるとしたら、搾取される側としてはそれに反対する権利があります。
1円円安になる(つまりドル価格が1円上がる)ごとに自動車会社一社につき数十億円の増益になる、という話があります。円安で輸出を推進することが利益になる、という事例とされます。
しかし、当然ですが、円安により輸出は有利になりますが、輸入は不利になります。そして、自動車の材料となる金属などはかなり輸入分が大きいというのに、輸出の利益が増すことばかり語られること、不思議に思われないのでしょうか。
もちろん、国内産の原材料や国内での人件費は円高・円安の影響を受けません。そして自動車の生産コストの内、輸入原材料に支払われているのは一部なのですから、残りの国内に支払われている分だけ、円安で有利になるのは分かります。しかし「一社につき数十億円の増益」とは、本当にそれだけによるのでしょうか。
『日本経済の奇妙な常識』の吉本佳生氏が、あるデータを指摘しています。原油価格の上昇により輸入原材料の価格が上がっても、日本の中小企業の6割は、まったく製品価格に転嫁していない、つまり価格を上げていないというのです。
では、原油価格などが何倍にも跳ね上がっているのに、それを価格にまったく転嫁できない六割前後の中小企業(あるいは半分も添加できない九割超の中小企業)は、いったいどうやって、そのコスト上昇を吸収しているのでしょうか。基本的な方法は、残念ながらひとつしかありません。労働者の賃金カットです。
(……)
一方で中小企業の労働分配率は、〇七年度の八〇・〇%から〇九年度の八一・〇%に、たった一%ポイント上がっただけです。すでに高いから上げにくいわけですが、この数字は中小企業での賃金引き下げやリストラが激しかったことを物語ります。くどいようですが、大企業の労働分配率変化が一二%ポイントなのに、中小企業の労働分配率変化は一%ポイントだけですから。
また、他社に商品を売る中小企業の多くは、原油価格などの高騰によるコスト上昇がなくても、取引先の企業から「価格を下げてほしい」と継続的に要求されており、これが従業員の賃金を上げられない(ときに下げるしかない)原因になっています。
(吉本佳生『日本経済の奇妙な常識』、講談社現代新書、2011、p.77, pp.87-88)
何のことはない、「増益」なるものの一部は、下請けからの搾取だったのではないのでしょうか。
そして、国は自分が大変な時には何もしてくれなかった、むしろ国には酷い目に遭わされてきた、だからこんな国のことは嫌いだ、という人を否定することはできないでしょう。
もちろん、見返りを求めずに国のことを大切に思う、という人がいればそれは殊勝なことですが、それを強要することはできません。そうして「滅私奉公」を求めた結果がどうなったか、先の大戦のことは心に留めておいた方が良いでしょう。
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