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ファンタジーと資源問題――『吼える魔竜の捕喰作法 5』

今回取り上げるライトノベルはこちら、全5巻にて完結となった『吼える魔竜の捕喰作法』です。

吼える魔竜の捕喰作法5 (HJ文庫)吼える魔竜の捕喰作法5 (HJ文庫)
(2013/02/28)
内堀優一

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 (3巻までの時点でのレビュー

この最終巻では、現在「神話」となっているかつての出来事を含め、色々と真相が明かされるのですが、そこまでの物語と設定を説明すると長くなりそうなので、割愛させていただきます。
公式に伝えられている神話と真相の間には当然違いがあるというのがポイントですが、どうも公式の「アステイリア神話」の内容が印象に薄く…

それはこちらの記憶力のせいとしましても、気にかかるのはシェッセとタクトがそれぞれ聖女ルシーニアと竜人ナギの生まれ変わり、という設定ですね。
実はこの世界では転生は普通のことらしく、「生まれ変わりなんだ」と言えばそれで説明が済んでしまいますし、魔力伝達体が「転生に関わる重要な身体の小器官である」(p.11)という設定まで登場します。
しかし、その他の登場人物の間で普段、前世の記憶が蘇ったりして問題になっている様子はありませんし、どうも「転生」の扱いがピンと来ないのです。
クライマックスでは、前世は自分なのか否かというのが敵との間で立場を分かつポイントにもなりますが、それも前提がはっきりしないまま言われている感はありました。

後、ストーリーが詰め込み気味なため、恒例の食事シーンは過去編のみでファンタジー食材は無し、戦闘シーンも結構端折られていましたし……

まあそれはさておき、前巻でロボットが登場した時点で分かっていましたが、やはり本作の世界では過去に高度な文明が存在していたようです。現在の「ドラゴンが存在する世界」も、いわばその文明の産物です。
この辺はやはり『聖戦記エルナサーガ』を思い出しますね。『エルナサーガ』は中世風で魔法が存在する世界観でしたが、その世界が古代文明の産物らしく、真相が明かされる終盤はかなりSF色が出てきます。

そもそも『エルナサーガ』の世界においては、魔獣フレースヴェルク死体となってなお魔風を放ち続けており、魔風の中で人は生きることができないため、魔法を退ける聖剣を山頂に立てることで魔風を退け、その風下の土地に人が住めるようになっていたのでした。しかし、魔風から守られた土地は限られているため、その土地を巡って戦争が起こっていました。
魔風を完全に止めることができれば、外部の土地に進出することができるようになり、当分は戦争をする必要もなくなるはずなのですが……

『吼える魔竜の捕喰作法』にも魔力元素の枯渇という資源問題がありました。ただ、それは「神話」の時代のことで、その解決のために練成分解物質を持つ「竜人」ナギとドラゴンが生まれた、という設定です。
現在では、大量の魔力を供給する「霊樹の森」が生まれたことにより、魔力資源の枯渇という問題は解決済みです。
人を襲うドラゴンが横行しているため、王都セントウッドの外に居住地域を広げることはできないという問題はあって、これは『エルナサーガ』の魔風に閉じ込められた世界に通じるものがありますし、騎士団のウィリー・ウォーレンはその問題の解決を狙っているのですが、ただ、セントウッド内部での資源不足が深刻なわけではありません。人間同士の戦争も今はありません。

実際、魔獣を完全に倒して魔風の脅威を消すことを目指した『エルナサーガ』とは対照的に、本作のラストで主人公たちは、短期的には少なからぬ犠牲を出してでもドラゴンの脅威を完全に消し去ろうとするウィリーの道を否定し、今まで通りにドラゴンと戦い続けることを選びます。
たしかに、ドラゴンを「自然」に近いものと考えれば、自然の脅威を根絶し新たな土地に進出するなどというのは、今や数多くの批判にさらされている自然征服の思想と見えるかも知れません。しかし、「自然との共生」と言える選択が可能になるのは、資源問題が解決済みという極めて理想化された世界を前提してのことでもあるのです。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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