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「魔王」は王ではないのか

ついだらけて遅くなったのは誰のせいでもありません。
月末にはまた研究会で発表の予定もあるというのに…

つい最近リメイク版の発売された『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』の話でも、と言っても、実はこのリメイク版には触れてもいませんし、旧プレイステーション版についても自分の手ではプレイしないで見ていただけだったのですが…
この『VII』は『ドラゴンクエスト』シリーズとして、ハードをスーパーファミコンからプレイステーションに移しての新作第一号でした。しかし、色々と問題含みでもあった作品で、

・主人公の出身地・グランエスタード島はモンスターのいない平和な島で、しかも物語開始時点では世界に他の島は存在しない。主人公たちが謎の神殿を通して異世界(実は過去の世界)に旅立ち、最初の敵(スライム)と戦うまでにプレイ時間にして一時間以上かかる。
・石版を集めて謎の神殿から過去の世界へ → 過去の世界を救う → すると現代でその土地が突然出現する → 現在においてもその地でミッションをクリアする → また石版を入手して謎の神殿から……の繰り返し。各エピソードは独立性が高く、全体の物語が見えないまま「お遣い」の繰り返しという印象が強い。
・そのためストーリーはかなり長く、ボスモンスターも多数登場するが、雑魚モンスターの外見と名前を流用してパラメーターだけ変えたボスで数を稼いでいる。
・さらに、この長いストーリーがプレイステーション版ではそれがディスク2枚に収められていた(同時期の『ファイナルファンタジー』シリーズではディスク3~4枚が珍しくなかったのに)。容量オーバーなのか、よくプレイ中にハングした。

やはり問題は最後で、ゲームの仕様として難しいとはともかく、バグでプレイを無駄にされるのはいかがなものかと。


まあ媒体の話はさておいても、内容的にも迷走している感はありました。
今回はあまり深入りしませんし、以下の話も分析というよりは印象論ですが、指摘できることはあります。

『VII』の世界において、最初世界にエスタード島の他に島がなかったのは、大魔王オルゴ・デミーラによって封印されていたためです。
オルゴ・デミーラはかつて神と戦って勝利し、世界中の大陸を封印してしまったのですから、ほとんど世界征服に成功するところまで行っていたと言っていい。『ドラゴンクエスト』シリーズの中でも、設定上は圧倒的に強大なラスボスでした。

しかしその代わり、この作品には「魔王軍」といったものの影はあまり感じられませんでした。
それぞれの土地にはボスモンスターがいて、それを倒すことでイベントクリアとなることが多いのですが、このボスモンターの中には土着のモンスターや、ほとんど特殊な力を持っただけの動物のようなものも目立ちました。中には軍を率いて人間と戦っているものもいましたが、どちらかというと好き勝手に人間を苦しめているだけというものが多く、「命じられて侵略している」という感じではありませんでした。

『ドラゴンクエスト』もシリーズが進むにつれて物語は長くなり、敵側の登場キャラクターも増える傾向があって、『V』や『VI』ではある程度、大魔王傘下の「幹部」が秩序だって存在している風があったのですが、どうも『VII』は雰囲気が違います。
魔王軍が人間の世界を侵略すると言うと、魔王が部下に「命令」して侵略を行わせるイメージがありますが、『VII』の場合、大陸を封印するのはオルゴ・デミーラただ一人の力です。たしかに各地の中ボスを倒せば封印された大地が解放されるわけですが、中ボス自身が封印を行っているわけではなく、むしろ封印の「重石」と言った方がしっくり来るのではないでしょうか。

私の過去記事「なぜボスは強いのか」も、基本的に「魔王」とは「魔物の王」である、という前提で話をしていました。
人間の王は、同じ人間という種族の中の支配者であり、西洋中世における成り立ちを考えれば、領主たちの中で、領主同士の関係を取りまとめる「同輩中の主席」です。
あらゆる種族の「魔物」が同種族のように考えられるのか否か、といった問題はありますが、当今のライトノベルでよく見られる「魔王」ネタも、その多くはそうした前提に立っているように思われます。だからこそ、魔物の世界にも人間的な関係や政治的事情などの問題があり……と話を色々膨らませられるわけです。

が、オルゴ・デミーラは魔物を統治しているわけでもないし、他の魔物の同種族とも思われません。
それに加えて神と戦い滅ぼしたという設定や、「エデンの戦士たち」という副題から、グノーシスにおける真の神に対する悪神をイメージしている解釈もあるようですが、今回そこに深入りする余地はありません。

すると魔王とは何であるか? という問いが改めて出てくるわけです。

他方で、『DQVII』の場合、主人公も漁師の息子で実は大海賊の血を引いているという設定ですが、そんな彼がなぜ大魔王を倒さねばならないのか、よく考えてみると不思議です。当初は旅に出たのも成り行きでしたし。

主人公も魔王も何だかよく分からない、では、これはアイデンティティ危機に陥ってもいい場面ではないか、としばし考えてみたり。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
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