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苦しくともそれが祖国――『銀閃の戦乙女と封門の姫 2』

ところで、前の大学での恩師は純哲(純粋哲学)の出身者なのに対し、宗教哲学会は哲学だけでなく神学方面の人もいたりするので、その雰囲気の違いというのは小さくないもののようです。
しかもまあ、何だか妙な話をされている方もいて、「ああいう人に影響されるとよくないから、純哲の先生の授業もできれば聞いておいた方が」といったアドバイスをいただいてしまったこともあります。

いや、以下は保身のために言っていると思っていただいてもいいのですが、学会というのは妙な話やよく分からない話があってもいいのです。そこから面白い研究が出てくる可能性もありますし、あまり厳しく排除すると未熟な者が修行をする場としての意味まで奪われてしまいますから。

 ~~~

それはそうと、今回紹介するライトノベルはこちら。

銀閃の戦乙女と封門の姫2 (一迅社文庫)銀閃の戦乙女と封門の姫2 (一迅社文庫)
(2013/03/19)
瀬尾 つかさ

商品詳細を見る

1巻レビュー

一夫多妻がありの世界観で、美少女に囲まれたハーレム状況にありながら、主人公のカイトはどこか韜晦して彼女たちと距離を取っている感のあった本作ですが、この2巻ではその根本にあることとして「祖国」の問題が強く出てきた印象です。
強い子孫を産むために人間を「かけ合わせる」クァント=タンの制度・習慣(そこに一夫多妻も含まれる)に対してカイトが反感を抱いているのも、地球とクァント=タン、二つの世界の人間のあいだに生まれ、二つの世界を行き来して育ったがゆえにその制度を異なる常識の視点から見ているところがあるからであり、つまるところ、二つの故郷に引き裂かれる者の悩みです。

「カイト、ひとつだけ、真面目に答えなさい」
「おう」
「クァント=タンか、日本か。あなたの祖国は、どちらですか」
 カイトは押し黙った。少し考えた末「両方だ」と答える。
「ひとつだけ、どちらかだけを選びなさい」
「おれになんといわせたいんだ」
「あなたがどちらを選んだとしても、わたくしはそれを尊重いたしましょう。ただし、選ぶということは、もう片方を切り捨てるというころです。いまはよくても、将来的には、その世界との繋がりいっさいを断つ……その覚悟があなたにあるか、と聞いています」
「おれは……っ」
 ここで、日本、と答えることは簡単だった。
 日本には彼の家がある。それは本来、妹が帰る場所でもある。
 だが、それでも、
 カイトは、迷った。もし日本を選んだ場合、この世界で暮らす、カイトの大切な人々は……。
 フレイ。そしてソーニャ。彼女たちへの想いは、どうなってしまうのか。
 (瀬尾つかさ『銀閃の戦乙女と封門の姫 2』、一迅社、2013、p.186)


また、クァント=タンは魔物に脅かされ、それと戦うための力がモノを言う世界でもあります。しかし、人間の世界で力が全てというのは、必ずしも普通の事柄ではありません(「なぜボスは強いのか」も参照)。そんな世界の歪みが、同時に噴出する巻でもあります。
しかもクァント=タンは人工的に作られて日が浅い世界であるので、その歪みはまさに世界建設当時に遡るのです。

さらに、他にも魔法世界は存在するという設定ですが(同作者の他作品とリンクあり)、クァント=タンのマナは「ねじ曲がっている」と表現されます。それに対して適応傷害を起こして命を落とす人間がいる一方で、クァント=タンで生まれ育った新世代の人間はもう他の世界では生きられなくなっている、という事情もあります。

たとえ環境に苦しめられていても、人はとにかく生まれ育った祖国で生きていくより他なく、多くの人は逃げ出すことはできません。そんな中で未来を摑み取っていくより他ない――異世界という違いのよく分かるモチーフにより、そんな有様が明瞭が描き出されていました。

もっとも、元凶は結局、現王に集束します。この王がどこまでも自分の権力と保身に執心する小物という分かりやすく味のない悪役に描かれていて、その辺は良くも悪くもシンプルですが。


……時間もないのでストーリーそのものについてはほとんど紹介できないままでしたが、まあこの辺で。

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