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人格をその厚みにおいて描く

家にいると寝てしまうことが多いので、午前中から大学に行っていた方がいいこともあります――私の場合。
しかし、あまり授業に出ているとコストパフォーマンスが悪い、むしろ自分の研究を独力で勉強する方が重要ということが多いのも事実。必要な単位はだいたい取ってあるので、履修コマ数は抑えようと思っています。
そうなると、一日を大学で過ごしたいとは、やはり思わないのです。

今日は健康診断で午前中から大学に行って、最後に5限の授業を受けてきたので、かなり大学にいましたが。

 ~~~

で、新しいネタも用意していないので、忘れた頃に昔のネタに繋がる話を。
先日、『魔法少女育成計画 episodes』のレビューで、キャラクターについて補完する短編のあり方を少しばかり論じました。
同様の補完という意義を持っていた作品として、『僕は友達が少ない CONNECT』がありました。こちらにもおそらく、同様のことが言えます。

たとえば、この『僕は友達が少ない』本編において、志熊理科はまず、下ネタを連発する変態キャラとして自らを印象付けました。

「では髪のお礼も必ずや。生命の神秘をいただいたお礼は生命の神秘によってお返しすべきですね。なんか生命の誕生に関するアレでどうですか。ヒントは『S』で始まり『X』で終わる単語です」
「そんなお返しはいらん」
「答えはソックスです」
「ソックスのスペルはSOCKSだぞ」
「靴下ではなく硫黄酸化物(SOX)のことです」
「なんでお礼が毒ガスなんだよ! そしてどこに生命の誕生に関する要素がある!」
「そうですね……生と死は一体みたいなノリでどうでしょう」
「お前本当はなにも考えずに喋ってるだろ」
「バレましたか。まあ本当はお察しの通りSEXです。理科のとっても大事なものを先輩にあげちゃいます」
「だ、大事なもの……」
 思わず想像して顔が熱くなる。
「はい、理科の宝物……無脊椎動物の交尾シーンだけを集めた動画集です。約58時間くらいあるので生命の神秘をたっぷり堪能できますよ」
「うわ超いらねぇ……ような、ちょっと見てみたいような……。……まあとにかく髪の毛のことは気にするな」
 俺はため息をつく。
 喋ってるだけなのにどっと疲れた。
 (平坂読『僕は友達が少ない 2』、メディアワファクトリー、2009、pp.65-66)


また、メカ×メカという超マイナージャンルを愛好する腐女子であること、1巻冒頭の顔見せですでに描かれていました。しかし、その本編でその腐女子たることを見せ付けたエピソードのラストは以下の通り。

「……お前は頭がおかしい」
 夜空は冷や汗を浮かべながら言い放った。
 すると理科は遠い目をして、
「ふふ……分かっていましたよ……誰も理解してくれないって……でも理科は負けません。己の生まれ持った業(カルマ)を抱えながら、これからも強く生きていきます……」
「勝手にしてくれ。できれば俺の知らないところでな」
 孤独な自分に酔った口ぶりの理科に、俺はジト目で言った。
 (同書、p.88)


完全に理科のことを変態だと思っている小鷹の目から見ても、彼女が「孤独な自分に酔っ」ていることは明らかでした。
しかも、同じ巻の後半では、理科は(人間の)ボーイズラブにも著しい反応を示していますし、少し後の巻では「エロければなんでもいい」とまで言い出す始末です。
しかし、彼女があえて人前で読んで見せるのは、あくまでもメカ×メカの同人誌です。

自分の嗜好の中でもとりわけマイノリティな部分を強調して、「孤独な自分に酔」うのは、実はありがちな症例です――俗に中二病、と呼ばれるものの。

もちろん、ここまでならば「エロならば何でもいい変態」が本性で、「メカ腐」が外的な装いということになります。
しかし、メカ好きというのも嘘ではないようですし、「仮面」と「素顔」の区別はそれほど明瞭なものではないのです。
仮面が幾重にもなっていて、その仮面の総体こそが本性であるとして、不思議があるでしょうか(現実ならばだいたいそういうものです)。
現に、そこまで変態ではない本音もさらっと覗かせます。たとえば星奈との会話で……(ですます調の方が理科の台詞)

「メバルちゃん、普段はツンツンしてるのにちょっとドジっ子で隙が多いところがちょー可愛いのよねー♥」
「行動がナチュラルにエロいところも素晴らしいですね。ことあるごとにマヨネーズまみれになっちゃうところなんてもう、『お? この女誘ってやがんのかゲッヒッヒ』って主人公ならずとも思ってしまいます」
「可愛いわよね~メバルちゃん……♥」
「超燃えますよねー」
「メバルちゃんにマヨネーズをかけてぺろぺろしたいわね~」
「いえ、理科はそこまでは……」
 (『僕は友達が少ない 5』、メディアファクトリー、2010、p.178)


こうした積み重ねがあればこそ、叙述のような変態を前面に出した発言の裏側での彼女の心情が『CONNECT』で描かれてもすんなりと収まるのです。
しかも、そこでまず描かれた彼女の「本音」――天才であるがゆえに両親にも理解されず、気味悪がられた孤独な少女――も、その後でもう一度その「外皮」を剥がして見せます。
あえてふたたび引用しましょう。

 あの頃の自分――天才というアイデンティティだけを心の拠り所にしていた自分のことを思い出すと、恥ずかしさのあまり死にたくなる。
 天才でない普通の人間を嫌い、自分は孤独だと嘆きながら、それでいて他人を「凡人」とか「不良」とか「美少女」というステレオタイプに当てはめて、理解しようともせず勝手に見下してきた、ごく普通の思春期の少女。
 (平坂読『僕は友達が少ない CONNECT』、メディアファクトリー、2012、pp.193-194)


これは決して「後からならばどうとでもなることを付け足した」でもなく、反対に「よく読めば分かることを(読者を見くびって)馬鹿丁寧に説明している」のでもない、すでに何重のも厚みが描かれていたことをさらにクローズアップしているからこそ、意味があるのです。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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