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ライトノベル入門の予備研究

オタクたるもの、愛好する作品を人に勧めることもあります。
もっとも、初心者にまずお奨めの作品を選ぶというのも、なかなかに難しいことなのですが。

まあ好みが分かれるのは仕方ないとして、ハードルが高いならば入門者用の解説を……と考えて自分のブログを振り返ってみると、ブログというのは続き物、以前に書いたことについては「もう書いたのでそれを参照」という感じになりがちです。
何でも一から説明してはいられないので、それは仕方ないのですが、はて一番最初の取っ掛かりはどこに求めるべきなのか……
そもそも、やはり暗黙の内に前提していることが多いのですね。

外国人に解説するつもりで、語学の練習も兼ねて英語かフランス語で書いてみたいと思うくらいですが、それをここでやると大多数を占める日本の読者を置いてきぼりに過ぎるので、どうしましょうか。
ひとまず、準備作業のつもりで、一つ Wikipedia の外国語ページで「ライトノベル」の項を見てみることにしました。

とりあえず項目の冒頭だけ見てみましょう。まず英語版(ネット上の文章はどんどん書き換わるものなので、原文も引用しておきます)。

A light novel (ライトノベル raito noberu) is a style of Japanese novel primarily targeting middle and high school students (young adult demographic). "Light novel" is a wasei-eigo, or a Japanese term formed from words in the English language. Such short, light novels are often called ranobe (ラノベ) or LN in the West. They are typically not more than 40,000–50,000 words long (the shorter ones being equivalent to a novella in US publishing terms), rarely exceed 200 pages, often have dense publishing schedules, are usually published in bunkobon size, and are often illustrated. The text is often serialized in anthology magazines before collection in book form.

ライトノベルは第一に中高生(ヤングアダルト層)をターゲットにした日本の小説スタイルである。「ライトノベル」は和製英語、すなわち英語の単語から作られた日本語の単語である。短縮してライトノベルはラノベ、あるいは西洋ではLNと呼ばれる。一般に4万~5万語を超えることはなく(短い方のものはアメリカの出版用語で言う novela (中編小説)と同じくらい)、200ページを超えることはめったにない。しばしば出版スケジュールは密で、たいてい文庫本サイズで出版され、よくイラストが付いている。テクストはしばしば集めて本の形態になる前にアンソロジー雑誌に連載される。


翻訳した場合の単語数までは分かりませんが、ページ数に関しては、250~300ページ程度が標準です。英訳はほとんど見たことはありませんが、『涼宮ハルヒの憂鬱』のフランス語訳とスペイン語訳はいずれも250ページ程度で、英訳したからといってそうページ数が減るとも考えにくいでしょう。
それから、「ほぼ全て」と言っていい「イラストが付いている」と、総量から言えばそうでない作品の方が多い「雑誌に連載される」の両方で頻度を表す副詞が同じ often なのがかなり違和感があります。

次にフランス語版。

Un light novel (ライトノベル, raito noberu), parfois abrégé ranobe (ラノベ) est un type de roman japonais destiné à un public de jeunes adultes (équivalent lycéens et étudiants). Le terme light novel est un wasei-eigo, un mot japonais formé à partir de mots de la langue anglaise.
Ces œuvres ne dépassent généralement pas 40 à 50 000 mots, et sont le plus souvent garnies d'illustrations. Tout comme les mangas, les light novels sont généralement d'abord sérialisés par chapitres dans un magazine avant d'être regroupés et vendus au format bunkobon.

ライトノベルは時にラノベと短縮される、ヤングアダルト(高校生および大学生と同義)の人々に向けられた日本の小説の一種である。ライトノベルという用語は和製英語、すなわち英語から作られた日本語の単語である。
ライトノベル作品は一般に4万~5万語を超えず、たいていイラストが付いている。マンガと同様、ライトノベルは一般に、まとめて文庫本形式で売られる前に、まず章ごとに雑誌に連載される。


英語版の写しに近いのですが……「高校生および大学生」となるのはなぜでしょうか。

ドイツ語版も。

Eine Light Novel (jap. ライトノベル, raito noberu), kurz: Ranobe (ラノベ) und Rainobe (ライノベ), ist ein Roman, der meist Illustrationen im Anime- oder Manga-Stil aufweist und sich vorwiegend an jüngere Erwachsene richtet. Der Begriff „Light Novel“ ist ein Wasei-eigo, ein Begriff, der sich aus englischen Worten zusammensetzt, aber in dieser Form nur in Japan existiert. Das verwendete Buchformat der Taschenbücher ist Bunkobon, d.h. DIN A6.
Lizenzierte englische oder deutsche Übersetzungen der japanischen Light Novels gibt es nur wenige, da die Nachfrage zu gering ist und der Aufwand für die Übersetzung wesentlich höher ist, als die eines Manga.

ライトノベル、短縮してラノベあるいはライノベは、たいていはアニメあるいはマンガ風のイラストを見せ、主としてヤングアダルトに向きの小説である。「ライトノベル」という概念は和製英語、すなわち英単語から作られたが、この形では日本にしか存在しない概念である。使用されている版型は文庫本、すなわちドイツ工業規格でA6である。
日本のライトノベルの認可された〔=公式の〕英訳あるいはドイツ語訳はわずかしかない。需要が少なすぎ、翻訳にかかるコストはマンガの場合よりもはるかに高いからである。


岩波文庫のモデルはドイツのレクラム文庫なので、版型もほぼ一致します。わざわざ書かれているのはそのせいでしょうか。
ライノベという略語は Wikipedia 日本語版にはまだ載っていますが、使われているのを見たことはありません。

興味深いのは、Wikipedia 日本語版だと冒頭の開設には「日本のサブカルチャーの中で生まれた小説の分類分けの一つ」というくらいしか書かれておらず、その後の概要はいきなり「ライトノベルの定義に関しては様々な考え方があり」確立していないという話から始まるのに対して、海外版ではサイズやイラストの存在という出版形態による特徴付けを最初に書いている、という点です(不正確な記述もありますが)。
ライトノベルというのは内容ではなく出版形態によるジャンルなのですから、これは至極妥当です。

もちろん、イラストがほとんどないものや文庫本でないものがライトノベルとして認められ、『このライトノベルがすごい!』にもランキングしていることもあります。
しかし、例外やグレーゾーンが存在するからといってそれが定義として無効であると考えるのは、いささか早計です。
来歴、通念、全てではなくとも大部分に当てはまる傾向といったことを考えるのは自然なやり方でしょう。
まあ、詳しい人は詳しい分だけ、その定義に当てはまらない事例があることを無視できないのでしょうが……

しかしその上で、作品を奨めるためには、出版形態だけでなく内容のことにも立ち入らねばなりません。「ライトノベルとはいかなる文学か?」と問わねばならないのです。
この場合、5割くらいにしか当てはまらずとも仕方ない、傾向を示していくべきでしょう。

実は、ドイツ語版とフランス語版でともに「ライティングスタイル」の項にあったのは「振り仮名」の使用でした。
対象年齢層のゆえに振り仮名を多用する、というのはまだ出版形態の問題ですが、同時に「禁書目録」と書いて「インデックス」と読むような当て読みの多用についても触れられているのです。
対象読者層から振り仮名が多いおとと、当て読みの振り仮名があることは直接には関係ないかも知れませんが、しかしこれはすでに内容に関わってきています。

 (いつか続きがあるかも知れません)

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プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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