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誰がための調査委員会か

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 ~~~

医療訴訟というのは以前からありましたが、刑事事件(医師逮捕)にまで至った福島県立大野病院事件(医療事故が2004年、執刀医の逮捕が2006年)は異例の事件でした。
周産期医療の直面する様々な困難や問題について書いた以下の書によれば、産科医の不足という危機がピークだったのは、やはりこの逮捕以降だったとか。
当然です。逮捕されるリスクを犯してまで産婦人科をやりたいという人は稀でしょう(ちなみにこの事件は無罪判決を勝ち取り、産婦人科学会の新入会員数も一時期よりは回復したとのこと)。

たらい回しにされた妊婦が死亡する事件が立て続けに起こったのが2007~2008年、上記の事件による医師不足との因果関係はほとんど疑うべくもありません。

産科が危ない  医療崩壊の現場から (角川oneテーマ21)産科が危ない 医療崩壊の現場から (角川oneテーマ21)
(2013/04/10)
吉村 泰典

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著者の吉村氏はこの時期に日本産科婦人科学会の理事長を務めていた人物で、本書は医療訴訟た医師不足の他、不妊治療・高齢出産の現実や、震災と原発事故という災害時の対応といった、著者が直面してきた産科を取り巻く問題について書いています。

さて、福島県立大野病院事件に戻りまして、医師逮捕にまで至った理由として著者が挙げるものの一つが、「事故調査委員会の報告書」です。

 医療事故が起きたときには、病院に事故調査委員会が設置される。その目的は、医療事故に至った経緯を明らかにし、医療行為に過失がなかったかの真相究明を行い、できるだけ客観性をもって評価することである。また、評価の結果を再発防止に役立てるのも大きな目的である。さらに、病院としては、ご遺族への事故に対する補償を考慮することが必要になる。
 本件における事故調査委員会は、真相究明よりご遺族への補償に軸足がおかれていたといえる。そのことが大きな問題であったと私は考えている。
 医師損害賠償保険は、医療者側に何らかの過失がなければ適用されない。県立病院を管轄する県病院局が事故調査委員会に託した事故調査の目的は、医師損害賠償保険の適用を受けるためのものであり、はじめから医師が過失を犯したという前提に立っていたといっていい。
 そのため、同委員会は数回開催しただけで、真相を解明するのに十分な審議を行わないまま結論を出して、病院長とともに県病院局は、謝罪会見を行ってしまった。一般論として、長期間にわたる法廷論争をするよりも、院長が公の場で謝罪し、ご遺族との間に師団を成立させるという形をとることが多い。
 しかし、本件の場合、こうした安易ともいえる対応が、診療中に医師が逮捕されるという最悪の事態を招いてしまった。事故調査委員会は、県病院局の要請を受けて過失ありきの事故報告書を作成し、県庁で謝罪会見を行ったが、報告書の背景を知らないメディアが「県の医療過誤」と報じたことを契機に、県警が捜査を開始したのである。
 (吉村泰典『産科が危ない 医療崩壊の現場から』、角川書店、2013、pp.29-30)


吉村氏がその他に挙げる逮捕にまで至った理由は「医療事故における刑事訴追」(医療事故は絶対に起こらないということはないのであり、結果として適切でない判断や行為が見付かったとしても、それを過失と見なすかは別問題)と、「異常死届け出」の基準が曖昧であるという問題ですが――

調査委員会と言えば、最近も類似した要素を含む例がなかったでしょうか。

 なお、本書完成間近の一月三一日に、大津氏の「いじめ死」事件の報告書が市長に提出された。これは市長の諮問機関である第三者調査委員会が作成したものだ。その内容の是非については何らの意見を言う立場にないが、そのシステムのありようや性格について疑問に想うことをいくつか提起しておきたい(これからも、このパターンが繰り返されると思うからである)。
 まず、組織についてだが、二月二日付の『朝日新聞』によると、市側と遺族側が推挙した委員会六名で構成したとある。この場合、第一者は自死した生徒の親であり、第二者は加害者(および保護者)あるいは学校および教育委員会ということになろう。市側(これは教委とは異なる)と遺族の推薦だけで選ぶのはフェアとは言えまい。第三者委員会というより、「第一者委員会」ないしは「第一・五者委員会」であろう。
 加害者または教委(学校)の代理人もメンバーに入れるべきであろうし、世論的にそれがムリであるなら、まったく中立的な立場の人を入れるべきだったろう。これでは世論も望んでいるのであろうが、被害者に完全に有利な(加害者にまったく不利な)報告が提出されるのは必然である。リーガルな正しさを追求したものとは思えない。
 また、同じく「朝日新聞」の報道によれば、〈調査委は会合を開くたびに遺族に経過を説明した〉とある。これも第三者委員会が事実により近づこうとするというより、遺族の了解や納得を得る方向で動いたという印象を強く与える。委員会の中立性への配慮が少しもなかったことは明らかである。
 (諏訪哲二『いじめ論の大罪 なぜ同じ過ちを繰り返すのか?』、中央公論社、2013、pp.282-283)


かくして、遺族の感情に答えるための「第一者委員会」が「先方に非あり」という結論から出発して「落とし前を付けさせる」ための報告書を作成し、それに基づいて処分が下される。
医師や教師がやっていられない、と思っても仕方ないでしょう。

 裁判において検察側は、「被告人の歌詞タウが産婦人科としては、基礎的な知見により措定される基本的な注意業務に著しく違反した、悪質なものであることは明らかであり、過失の程度は重大であると言わざるをえない。被告人のように自己の行為をねじ曲げて、責任を回避しようとする行為は、被害者の遺族のみならず、我が国の患者全員に対して、医師への信頼を失わせ、ひいては我が国の医療の発展を阻害することであり、被告人の態度は厳しく非難に値する」として禁錮1年、罰金10万円を求刑した。
 (上掲『産科が危ない 医療崩壊の現場から』、p.31)


「我が国の患者全員に対して、医師への信頼を失わせ、ひいては我が国の医療の発展を阻害」しているのは誰でしょうか。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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