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もちろんただ「個性を伸ばす」という話ではなく

読んだ本の感想でも書こうかと思いましたが、あまり気の利いたコメント等が思いつきません。

学力幻想 (ちくま新書)学力幻想 (ちくま新書)
(2013/05/07)
小玉 重夫

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本書がタイトルの「学力幻想」ということで指摘しようとしているのは、近年の「学力低下」論争やそれに基づく「ゆとり教育」批判に潜んでいた前提であり、それが問題の所在を覆い隠している、というのです。

 教育が新しい政治や社会との関係でいかなるものでありうるのか、という社会ビジョンそのものを問うような視点、言葉をかえていえば、学力問題を政治問題としてみる視点が、矮小化された意味での学力が前面に出てくることで置き去りにされてしまう、問われぬままに終わってしまう、そういった構造を「学力幻想」という観点からとらえ返したいのである。そして、その学力幻想を強固にしてきた背景にあるものとして、「子ども中心主義」と「ポピュリズム」に注目してみたい。そう考えている。
 (小玉重夫『学力幻想』、筑摩書房、2013、p.30)


「子ども中心主義」の思想化というとまずジョン・デューイが挙げられるけれども、デューイが必ずしも子ども中心主義とは言えないという研究があることも、著者は指摘します。

 そうであるとすれば、そこで問題になるのは、ではなぜデューイのことを子ども中心主義といってしまうのか、という点である。あるいは、日本の学力論争の中でデューイ主義者が唱えたカリキュラム論や教育改革論を子ども中心主義的なものとして批判するような議論が、なぜ出てくるのだろうか。そういうところを問わなければだめだと、私は考える。その意味で、本書では子ども中心主義を、教育というものを見る、より広いパースペクティヴの中で考えたい。

 そういう意味での子ども中心主義は、学力や教育というものを、教える側、あるいは教える側の背景にある政治や権力などとの関係で見ないで、あくまでも学習者である子どもの側の問題として学力の問題をとらえる、それを子ども中心主義といっていいのではないかと思う。
 (同書、pp.45-46)


対立する両者が実は同じ前提の上に立っているということはしばしばあることで、その前提を問い質すことことから新たな視点が開けることもあります。

「教える側」には「学習者である子どもの側」とは異なる次元があることを指摘した思想家として、著者はハンナ・アレントを指摘します。
それによれば、「学び」の視点で問題になるのは「社会性」であるのに対し、「教え」の視点で問題になるのは「公共性」です。社会は画一性を求めるのに対し、公共性の領域は異質な者達の多様性、「複数性」を原理とします。

もっと後半で出てくるアガンベンの「潜勢力」概念についてもそうですが、これらの概念を教育学に適用してこういう使い方をすることができるのか、というのは面白いと同時に、馴染みにくくもありました。
「教え」と集団内の異質性の結び付きなど、なかなか容易には要約できません。

ただ、他方で「ポピュリズム」が「みんなやればできる」という考えとされていることと併せれば、「教育とは等質的な達成ばかりを求めるものなのかどうか」というところに問題が収斂するのが分かるでしょう。
もちろん「学力低下」論者からすれば、誰でも身に付けておいてくれないと困ることがあるわけで(それは実際その通りです)、それがちゃんと身に付いていない者が増えているから、何とかしなければならない、となるでしょう。
しかし、だから教育パフォーマンスを上げれば解決できる――と話が単純であればいいのですが。

ここで著者が問題にするのは、学力格差というものが社会的階層と結び付いているということを示す研究です。
各家庭や生徒たちが頑張り、教師の能力が高まれば学力は向上する、とばかりはいきません。

最終章では、全ての学校に学力テストでの成果を求めたアメリカの「NCLB法」を検討し、人種や生育環境の異なる子どもたちに画一的な成果を求めた上に、成果を満たさない学校を断罪するやり方の問題点を指摘しています(オバマ政権になってNCLB法は改正されたとのこと)。

ただ、これだけ見ても具体的に学校がどうあるべきかというと、やはり容易には分かりません(挙げられる具体例にそれほどのインパクトは感じませんでした)。
まあ、難しいのは現実です。受け入れねばならないのでしょう。

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テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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