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今ここで何をすべきか

書店の店頭で『日本株で20年に一度の大波に乗る方法』という書名を見かけました。
帯には“「格差バブル」に先手を打つ!”等とあります。

つまり、これがバブルであることは承知なわけです。
株式市場というギャンブル場にお金が飛び交い、一部の当てた投資家だけが儲かって格差を拡大する状況であることを承知の上で、そこで「どうやってその格差の中の勝ち組に滑り込むか」という話をしているわけです。

「“どうやって格差を減らすか”はマクロな話であって、個人レベルでは“現状で勝つ方法”を論じるものだ」と仰るかも知れません。
しかし、そうした個人の動きがマクロな動きに加担するということもあるのです。

どうも、いつぞや引用した『羽月莉音の帝国』終盤の大バブルを煽られた社会を連想するのは気のせいでしょうか。

 それに、恒太の言葉を指示しているエコノミストも多く、「春日恒太エコノミー理論」「超世紀エコノミー理論」なる奇抜な経済理論まで登場するに至っていた。書店に行けば投資を煽る本がかつてない売れ行きを示し、景気は未来永劫上がり続けるのだと激しく煽るエコノミストたちにも事欠かなかった。こういう状況では、煽る側に回った方が遥かにメリットを享受できる。祭りなら、乗っかった方が商売になるのだ。
 市場には金が溢れ返り、実需に関係なくあらゆるものが高騰し続けていた。
 (至道流星『羽月莉音の帝国 9』、小学館、2011、p.95)



日本株で20年に一度の大波に乗る方法 (青春新書PLAY BOOKS)日本株で20年に一度の大波に乗る方法 (青春新書PLAY BOOKS)
(2013/04/26)
菅下 清廣

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 ―――

以前、「だれが差別を作るのか――『下ネタという概念が存在しない退屈な世界 3』」の記事で、穢多と言いました。部落差別の問題です。
昔ながらの歴史の教科書には、江戸時代に「幕府が農民、町人よりも身分の低い人たちを設定した(もっと下がいると思わせて支配しやすくするため)」といったことが書かれていたのではないかと思います(もしかしたら、最近は異なる記述をする教科書が出ているかも知れませんが)。

このような記述は、「身分の低い人たち」の存在を制度として上から押し付けられたものだと見なしています。
しかし実際には、そこには社会に根付いた慣例がまずあるのであって、何でも中央政府が上から自在にできるものではありません。
さらに事が差別となれば、民衆が差別意識を持つかどうかが大きな問題です。こうした意識は民衆の内で醸成される面が大きいのです。
その上、部落は決してたんに江戸時代の旧弊の名残りではなく、明治になって新たに差別意識が確立され、部落そのものが増加したという面すらあるのです。

現代における差別も同様です。その多くは、作ろうとして作り上から押し付けられたものではありません。
しかも、予備校や受験アドバイザーが学校教育をバッシングし、「こんな教育では駄目だ、私の予備校に通いなさい、私の勉強法の本を買いなさい」と宣伝することが効果的であると同時に、「ゆとり世代」への差別を生み出すように、しばしば差別は飯の種になります。
『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』の3巻が興味深いのは、そうした事柄を鋭く描いている――しかも、現体制の被害者が厳然として存在することと、それに対する偏見の問題点という両方向から――という点です。

さて、その『下ネタ~』3巻を取り上げた記事を人に見せたところ、「いったん確立されてしまった偏見に対抗する方法はあるでしょうか」と問われました。
大変難しい問題で、その時には有効な答えは出せませんでした。
地道に偏見の不当さを示していくことも必要でしょうが、それだけでは抗せないものもあるわけで……

ですが。

『仕方ないんだぜ。どうせもう、あたしたちの世代は蹂躙されるしかないんだぜ。救世主かと思いきや《SOX》も期待外れ。だったらもう、貧乏クジは避けてさ、可能な限り美味い汁を吸えるポジションにいたほうがいいだろ』
 (赤城大空『下ネタという概念が存在しない退屈な世界 3』、小学館、2013、p.239)


どうせ差別はもう動かないのだから、差別される中でも美味い汁を吸えるところに滑り込もう――そういう考えも出てきます。
つまるところ、「全体のことはもう仕方ない、個人としては自分だけでも最大限上手くやるだけ」というわけです。これで前半部との繋がりもお分かりでしょう。
けれども、それこそが体制を支えている面もないでしょうか。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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