オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
刀はどうやって持つか

これは剣を振る時、右手を支点に、左手を力点にして梃子の原理を働かせるためです。
ですが、二刀流の場合はどうでしょう。
片手で一本ずつ剣を持つのですから、両手で梃子の原理も何もありません。
まあ、宮本武蔵の二刀流は誰も真似できなかったと言いますが、特異な能力にせよ何にせよ、武蔵は二刀流ができたと仮定しましょう。
二刀を用いる際には両手での梃子の原理を用いずに剣を振る技を身に付けた武蔵は、一刀のみを振るう時、どのような持ち方をしたでしょうか。
この話は実は私のオリジナルではなくて、武術家の甲野善紀氏がどこだったかで、ある時剣は両手をくっ付けて持った方が良いと気付いた、という旨の話をしていたのです。
もちろん、初心者は両手を離して持つのがいいのですが、この梃子の原理に頼りすぎると手だけで剣を振るようになってしまう、全身を使った剣の振り方を体得したら、むしろ両手をくっ付けて持った方がいいと。
――しかし、甲野氏の話が一般化できるあどうかは別にして、上記のようなことを色々と考えたところで、さて宮本武蔵が両手をくっ付けて刀を持っている絵を描いたら「間違ってます」と指摘が入るのでしょう。
そこでちゃんと説明しておこうと思うと紙面を消費します。
そんな中、とある漫画のカバー下のイラストで、わざわざ刀の持ち方について「柄は寄せて持つ」と注釈が入っているのを見かけました。

(佐藤敦紀『ヴァーミリオン 2』、角川書店、本体裏表紙)
読み返してみると、主人公(彼女の兄)も同じ持ち方をしていますね。
いかなる理由でそうなったのか知りませんが、そういうものだと言ってしまうのなら、それもありでしょう――というわけです。
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この『ヴァーミリオン』、作者は『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』のコミカライズを手がけた佐藤敦紀氏。
ストーリーは、鬼の力を借りて鬼を斬る「鬼殺し」の少年の話です。
「鬼殺し」というモチーフや、敵と同質の力を用い、敵に近付いていくリスクといった仮面ライダー的な設定はオーソドックスなものですが、キャラクターや雰囲気が実にいい味を出している作家なので期待していました。
それに、「鬼殺し」ながら人間の高校生である主人公がひどく無表情で、日常生活を半ば捨てているような印象があるのに対し、相棒である鬼の弥勒の方がやけに人間的で「学校行け」と説教していたりするのが面白いところでした。これも両者の素性に関係していたのでしょう。
しかし、2巻で最大の敵の存在を示唆したところで「戦いはこれからだ」という感じで終了。遺憾でした。
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