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迷宮の歌姫:谷山浩子

谷山浩子と言うと私の中では、みんなのうたで放送された「まっくら森の歌」等のシュールな作品が印象的な歌手でした。
最近になって、今更のように彼女のアルバムを入手して色々な歌を聴きましたが、いやまったく、独特のセンスをしていること。

たとえば、割と有名だという「カントリーガール」
これはシュールではなく、美しいラブソングですが、しかしやはり何とも不思議なものを含んでいます。



聴けばお分かりの通り、1番~4番まで、サビの部分の歌詞はすべてこうなっています。

カントリーガール きみの目の中で 夕焼けがもえる
カントリーガール きみのほほえみは 草原のにおいがする
好きだよ!


しかし――
2番と3番では、この箇所は、彼女と付き合いながら「たった7日目」で振った「若い男」(「あいつ」)のラブレターの文面ということになっています。
しかし4番で、この語り手は「ぼくが書いたあの手紙の言葉を もう一度きみに贈ろう」といって、ふたたびこの文面が出てくるのです。
それは「あいつ」の手紙の文面ではなかったのか?

「ぼくが書いた」と過去形で「もう一度」というところから、「ぼく」は「あいつ」の頼まれて手紙を代筆した、という意見が有力のようで、公式にそのような回答があったという記述も目にしました(詳細は未確認)。

しかし、そういう「回答」の前に、「あいつ」のものだったはずの手紙の文面が「ぼくが書いた」となっていることは、そもそも「“ぼく”とは誰か?」という揺さぶりをかけます。
「はじめから終わりまで」、鏡に向かってつぶやいているところまで見ていた「ぼく」とは――そんな人間が、本当に存在するのでしょうか?

さらに構成をもう少し詳しく見ると、1番でのサビ部分は、特別な文脈なく入ってくるので、「ぼく」に「きみ」(カントリーガール)に対する呼びかけという形を取った歌詞の一部として自然に受け取れます。
それが2番と3番では「あいつ」のラブレターだったという“解説”が入り、さらに4番では「ぼくが書いた」とどんでん返し(?)が来ます。
結局、当初「ぼく」の言葉と思われた文面は、やはり「ぼく」のものとして落ち着くのです。
では間に入ってきた「あいつ」とは誰か?

そして、代筆説を採っても、そもそも「“ぼく”と“あいつ”の間にある関係は何か?」という疑問は必ずしも解決されません。
別の男が出したラブレターの文面を「実はぼくが書いたんだ」と言って「もう一度」贈るというやり方も、いかなるインパクトを持つことやら……

この揺さぶり加減にやはり天才的と言いたいセンスを感じるのです。


ちなみに、アルバム「白と黒」では各曲に制作事情等を語った解説がついていますが、それによると「カントリーガール」は……

初めての海外旅行(パックツアー)でローマとアテネに行った時、同じツアーにいた女性をこっそりモデルにして、こんな物語を作り上げました。
メガネをかけた真面目そうな人でした。どうしてるかな。


この想像力も大したものですが……
「カントリーガール」自身についてはイメージの広がる話であるものの、やはり「ぼく」と「あいつ」については謎のままです。


このアルバムの解説もなかなか印象的なものが多いですね。
たとえば、「ねこの森には帰れない」という歌の歌詞は以下のように始まります。

きのう手紙がとどきました ふるさとのねこの森から
お元気ですかもう10年も 帰らないので心配してます


「ふるさと」が「ねこの森」であるということは、この歌の語り手は猫なのでしょう。
この歌の解説を見てみると……

17歳の作。飼っていた「ユイ」という白猫がピアノが大好きで、わたしが弾いているといつも足下に来てじっと聴いてました。
そんな彼女を見ながらある晩この歌を作りました。


やはり、それだけのことからこの内容を考え出す発想に感心します。


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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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