オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
日仏性の用語対決(?)
それで帰りも就寝も遅くなったはずが、なぜか今朝はやたらと早く目が覚めました。
その結果としてやはり、昼間はずっと眠いのですね。
最近こういうことが増えていますが、飲んだ日によく眠れないとは……まったくアルコールとは相性が悪いようです。
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廊下の電球が切れたのでまた買いに行きました。

フィラメントが切れています。
しかし、これは去年の11月に買い換えたという記事を書いたのと同じ電球です。
もう8ヶ月近く経っていると思えば、寿命としては自然なところでしょうか(時の経つのが速く感じられます)。
そこで今回は2個買っておきました。
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今までにも時折触れてきたので、今までに書いた内容と被っているかどうか記憶定かでないのですが……井上章一氏は『性の用語集』のあとがきで、以下のように書いています。
たとえば、「ヘア」という言葉を想いうかべていただこう。本文でもふれたが、この言葉は一九七〇年代のなかごろから、普及しはじめた。頭髪、として陰毛の意味で、ひろくつかわれるようになっている。
そして、一九七〇年代後半以後の国語辞典も、この言葉を収録していった。ただし、語釈として採用したのは頭髪のほうだけである。陰毛のほうは、ながらく黙殺しつづけた。国語の現場では、陰毛をしめす「ヘア」も、ひろくもちいられていたのに。
理由は、はっきりしている。語彙や語釈に、けっこう貴賎の序列をつけているからだ。頭髪はいいけれども、陰毛はのせづらい……。そんな品性上の価値観から、ながらくぬけられなかったせいである。
一九九〇年代末期になると、「ヘア」の語釈に陰毛をそえる辞典も、あらわれる。だから、辞書的に語彙史をしめせば、こうなる。「ヘア」が陰毛という意味をふくむようになったのは、一九九〇年代の末からである、と。一九七〇年代のなかごろから、そうなりだしたというのが実情なのに。
おわかりだろうか。国語辞典は、そのていどの文献でしかないのである。(……)
(井上章一&関西性欲研究会『性の用語集』、講談社、2004、pp.361-362)
母語として日本語を使っている者にとって、辞典などは所詮後追いです。
辞書にまだ載っていない新しい言葉の意味を文脈から察するということは、日々やっていることなのです。とりわけ、見知らぬ表現に出会っても恐れないのは私のような語学マニアの取り得。
しかし、外国語を相手にすると、俗語表現というのは難物になります。
「言葉の貴賎」に関する扱いが他の国でも同様かどうかは知りませんが、性に関する表現に俗語に属するものが多いのは、同じではないかという気がします。
そんな中、フランスでも『エロスの辞典』が出ているのを知りました。
著者はクセジュ文庫で『言葉遊び』や『卑語(argot)』を書いていた大家です。

数十個のトピックについてその歴史的変遷などを詳細に記述していた『性の用語集』と違い、この Dictionnaire érotique は一つの語に1~数行の解説があるのみの網羅的な「辞典」です。
冒頭の解説部分には、
性の語彙はまったく例外的な語の豊かさによって特徴付けられる。この豊かさが性の語彙に、言語体系の中での固有の地位を与えているのである。ここではもっともささいな概念もいくつもの同義語で代理される。
(Pierre Guiraud, Dictionnaire érotique, Payot, 2006[初版1978], p.13)
とあって、代表的な語の同義語のリストアップもありますが、そこでは「『ペニス』の名称」は550個挙げられています。日本語にはこれほどたくさんあるでしょうか…?
その中には「あれ(ça)」とかいうのもありますが……この辺の発想は日本語とほとんど同じです。
「ピラミッド(pyramide)」なんてものもありますが、これは日本語の感覚だと、男性器そのものよりもむしろ、それの勃起によってズボンが盛り上がっている状態を指しそうな気がします。
気になって pyramide の項を引いてみると、「勃起していること」と。
性表現のある文献に関わる人以外によっては、おそらく実用性は皆無でしょう。
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