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分類というありふれた、しかし奇妙な分野――『自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか』

比較的最近読んだ本の中だと、『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』『孤独なバッタが群れるとき』がいずれも、一応触れていく必要があるから、という程度の扱いではありますが、「種」概念などを巡る分類学の問題に触れていました。
「分類学は科学と言えるのか」というのは、20世紀を通じて喧しく議論されてきた問題です。
「似た生き物を同じグループに含める」といっても、「どれだけ似ているか」を客観的・定量的に示すことはできないからです。どれだけ近ければ一つの種、一つのグループに括られるのか、そうした基準も存在しません。

現代では「似ている」のではなく、「同じ系統から進化してきた」生物を同じグループに分類し、別々に進化してきてたまたま似た姿になった「他人の空似」は考慮しないことになっています。ですが、これも問題を解決するものではありません。系統関係をどうやって判断するかも自明ではないからです。
近年では分子生物学が発達し、DNA解析によって生物同士がいつごろ分岐したのかを知ることもできるようになりました。しかし、そもそもDNAの現存していない絶滅した生物に関してはこの手も使えません。

さらに、こうした系統を最重視する分岐分類学は、しばしば常識に反した結果をもたらします。
「鳥」は「恐竜」の仲間になりました(「恐竜」が単一系統なのかどうか、という問題はまた別に残りますが…)。
「魚」は存在しなくなりました。
「哺乳類型爬虫類」ももういません。


「恐竜」については以前にも少し触れました。
「魚」に関して言うと、進化史上ではコイやタイやウナギや……その他諸々に連なる「硬骨魚類」と、サメやエイの「軟骨魚類」が分岐したのが先で、硬骨魚類から両生類が分岐した方が後です。両生類から爬虫類が、そして爬虫類から哺乳類が分岐したのはもっと後です。
先に分岐した方の違いを優先しなければならないので、硬骨魚と軟骨魚を一まとめに「魚類」とすることはできません。もしそれをするなら、そこから進化した全ての種――カエルもトカゲも馬も人間も――全て「魚類」に含めなければならないのです。

「哺乳類型爬虫類」も古生物学好きにはお馴染みですが、これも系統を図に描くと以下のようになります(AやBは別の爬虫類のグループです)。

哺乳類系統図1

哺乳類型爬虫類が「爬虫類」であるからには、下の赤線で囲った範囲内が「爬虫類」であり、右上の哺乳類の枝がそこから飛び出していることが「哺乳類が爬虫類から区分される」ことを意味します。

哺乳類系統図2

ですが、「なぜここに区分線を引くのか」という疑問が生じます。ここで爬虫類から哺乳類に転じたというのは、分岐分類学からすれば恣意的な線引きで、退けねばなりません。
分岐分類学に従えば、大本が分かれたところで、つまり下図の赤い点線のところで分類群を分かつことになります。

哺乳類系統図3

こうして、旧「哺乳類型爬虫類」と「哺乳類」は、まとめて「単弓類」という、爬虫類とは異なるグループになりした。


こうして分類学と直感が対立するようになった、そうした経緯を描いているのは下記の書物です。

自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか
(2013/08/28)
キャロル・キサク・ヨーン

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カール・フォン・リンネが生物分類学の基礎を築いたが、ダーウィンの進化論は「固定した種」という考え方を破壊し、分類学に危機をもたらした。
エルンスト・マイアのように分類学を確固とした学として基礎付けようと努力した人たちがいたものの、生物分類の確かな基準も、「種」の定義も確かなものを提示することに成功しはしなかった……本書の前半は、そうした分類の科学思想史を描きます。

その理由は、人間は進化の中で培ってきた「環世界センス」に基づいて生物を見ており、これを無視することは非常に難しいからだ、というのが著者の主張です。
つまり、食べられる生き物とそうでない生き物、危険な敵etc...を見分ける能力が生きていくのに必要だったから、人間には“自然に”生物を分類する能力が備わっているというのです。
しかしもちろん、この「環世界センス」はあくまで普通に生きている範囲内で出会う生物群を対象にしており、世界中のあらゆる生物を分類することを考えてもいなければ、何百万年という時間をかけて生物が進化することまで計算に入れてはいません。だから、直感と政党に基づいた分類はしばしば対立するのです。

民族や文化によって生物分類の仕方は異なり、民族分類学という学問分野まであるものの、分類の大枠はどこでも同じで、「魚」というカテゴリーの存在しない言語はないとか、脳の特定部位の損傷で生物をまともに判別できなくなる(症例研究も多くの蓄積がある)とか、そういった興味深いトピックも盛りだくさんです。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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