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もっとも近く、そして遠い彼女――『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。』

例によって少しタイミングが悪くなりましたが、今回取り上げるライトノベルはこちら、現在2巻まで発売中の『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。』です。

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(2013/06/07)
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第19回電撃小説大賞の金賞受賞作にして作者としてはこれがデビュー作ですね。

主人公・坂本秋月(さかもと あきつき)は不良高校生。――と言っても、地の文で本人が「不良」と言っていますが、顔が怖くて周りからそう見なされているだけで、本人は至って真面目なのですが。
彼はある日、一人の少女が交通事故で死ぬところに出くわします。しかしそこで聞こえたのは、「おまえの寿命の半分で、彼女をたすけてやろうか」という謎の声。「やってみろよ」と答えた結果、何と死んだ少女・夢前光(ゆめさき ひかり)の精神が彼に宿り、一日交替で主導権を持つ二重人格の状態になってしまいます。
「寿命の半分」というのはつまり、自分の意識を持って生きられる時間が半減するという意味だったのですね。

というわけで、1巻の表紙に登場するヒロインはこの姿では作中に登場しない上、主人公とは原理的に会うこともできず、交換日記でやりとりができるのみです。

勉強はしないし色々なものを買いまくるし、その他破天荒な行動を(自分で身体で)する光に振り回される秋月ですが、社交的な性格の光が行ったことにより、不良として避けられていた秋月が急に人気者になっていく辺りは楽しくもあります。
顔の怖さで不良と見なされていることといい、そんな主人公が急にモテたりすることと言い、『僕は友達が少ない』の小鷹と通じる境遇ですが、主人公の行動そのものが一変せざるを得ないギミック(何しろ中身が別人ですから)により独自の説得力を持たされています。
ただ、問題はそこから先で、最初に女の子から告白されるのが1巻の半ばという展開の速さを見せるのですが、その時すでに秋月の心は、決して会うことのできない少女に向いていて……というのが話の味噌。
そういうわけで、ハーレム要素やサブヒロインはあくまで+α、秋月と光の関係こそが話の軸になります。

物語は基本的にコメディですが、光は公式には死んだことになっており、親しかった人達に「光として」会うことはもうできない、という重い要素もあります。それでいて、シリアスな方向に盛り上げておいて最後で馬鹿馬鹿しいオチを付けて落とす辺りも、最初は面食らいますが緩急の付け方には確かな技術を感じます。

それから、光に劣らぬ強烈なサブキャラクターとして秋月の妹の雪湖(ゆきこ)がいます。
兄のことが大好きなのはもちろん、ストーキング等に謎のハイスペックを発揮して活躍する上、中学生ながらすでに作家として活躍してお金を稼いでいるという設定まであります。
これは独自の財源を用意することで、光の人格が急な浪費をしても両親に心配をかけさせないための設定なのかも知れませんが、それにしてもこのために坂本家の両親がほとんど登場しないのは、光とその母親である陽菜子(ひなこ)の関係がストーリー上で大きな役割を果たしているのとは対照的です。
設定上、娘を亡くした親のことは問題にならざるを得ないのに対して、主人公の家族が前面に出てこないという一般的な要請がこのような形に至ったと思われますが…(少年少女をメインで描くライトノベルで主人公の親の影が極端に薄いことはよくあることで、珍しく親を描けばどういう扱いになるかというのはそれ自身で興味深いテーマですが、この際それはまあいいでしょう)

お互いの生活のためにも経験したことを日記に書いて伝え合っているのですが、光が書いていないことが――事実面でも、心情面でも――ある、というのがまた一つの見所で、ちょっとした喧嘩の原因から彼女の深い悩みまで、秋月はあの手この手で色々と探らねばならなくなります。この辺の魅せ方は2巻で着実に向上しているのが窺えました。
二人は二心同体でもっとも近しい存在であるのは間違いなく、光も秋月を信頼しているのは確かですが、近しいところにも外から回り込まねば見えないものもあるのです。

光の破天荒な振る舞いの中に一貫している不安や心残りが見えてくるのもまた印象的です。

さて、秋月にも光に伝えていないことはありました。その最たるものが彼女への自分の気持ちでしょう。
けれども、それも2巻終盤でバレる形になりました。2巻では24時間交替のはずが光の持ち時間が短くなるという異変もあり、最後で秋月は「自分を選ぶか光を選ぶか」という究極の選択を突き付けられる形になって、締めへの引きを感じさせますが――その結果を描くと思われる3巻は今月発売です。タイミングが悪いと言ったのはそのためです。
3巻の表紙↓を見ても、二人が初めて接触し、視線を交差させているのが終わりを思わせますが、はてさて、どうなることでしょう。

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(2013/10/10)
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