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一つの芽が出るまでに関わる生き物たち――『クマが樹に登ると―クマからはじまる森のつながり』

あの『孤独なバッタが群れるとき』をも含むこの「フィールドの生物学」シリーズ、まだまだ刊行中で、生協に新刊が結構たくさん置いてあったり、各大学出版局の書物が特別割引になっていたりしたので、つい次々と買って読んでしまいました。
最近読んだのはシリーズ最新刊と思われるこれです。

クマが樹に登ると―クマからはじまる森のつながり (フィールドの生物学)クマが樹に登ると―クマからはじまる森のつながり (フィールドの生物学)
(2013/09)
小池 伸介

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この本で扱われる「クマ」は日本の本州に分布するツキノワグマです。

著者は学生時代、クマの糞を拾って分析することで食性調査をしようとしていました。しかしその中で、クマの糞に含まれる植物の種は原形をとどめているという、実は当たり前でない事実を先生に指摘されたことが研究の方向性を変えます。
クマの種子散布者としての働き、という方向に。

本書中でちゃんと説明されていますが、ツキノワグマは植物食中心です。(本書では扱われていないものの、ヒグマはもっと肉食比率が高いと以前に読みました。ただ、それでも木の実などもよく食べます)
が、食肉目なので食べ物を細かく咀嚼することはなく、小さな種などはそのままの形で排泄されるわけです。

そして、ある種の植物の種はこのように動物に食べられ、糞として排泄されることで遠くに散布され、分布を広げるというのも教科書に書かれている基本的なことです。
しかし、クマが散布者になるとは……あってもおかしくないものの、意外にも注目されてこなかったポイントというところでしょうか。

クマがどんな木の実を食べているかを観察したり、捕まえて発信機を付けたりの野外調査、秋田のクマ牧場での実験、そして野外に糞を設置しての実験……フィールドワークと施設での実験を組み合わせた研究が細かく書かれていて、どれも大変に興味深いものです。
そして明らかになる、クマの散布者としての予想以上のポテンシャル。

鳥は飛べるので行動範囲は広そうですが、身体を軽くするため、食べたものを極力早く消化・排泄するようになっています。時間が短ければ、その間に移動できる距離も限られます。
その点、クマは排泄までにそれなりの時間があります。大型動物なので、行動範囲も広く移動能力も高いでしょう。
実際、その期待通りのデータが出ます。

ですが、それだけでは終わりません。糞には大量の種が詰まっています。果してそのままで芽は出るのか?
この辺もちゃんと実験が行われ、糞に含まれる種を持ち去る動物の働きが示されます。
ここで登場するのが糞虫――ファーブルの『昆虫記』でも1巻の主役を張った、動物の糞を食べるコガネムシの仲間です(日本には、糞を玉にして転がすものはあまりいませんが)。
ファーブル好きとしてはこれがまた楽しい。糞虫が種を植える役割を果たしていようとは。

考えてみれば、山には様々な野生動物がいます。姿は見えなくても足跡を見ることもありますし、夏山ではちょっと歩けば蚊にも刺されます。蚊がいるということは、蚊が血を吸う哺乳動物がいるはずです。
とすれば、それら動物の糞を始末する生き物も、必ずいるはずなのですね。十何種類の糞虫のリストは、それだけでも山の動物の豊かさを感じさせてくれました。

もっとも、それでも実験で確認された発芽率は数パーセントなのですが…。
そもそも、山が元々森で覆われている限り、新たに木の生える余地は限られます。今まで生えていた木が倒れた場所とか、そういうところだけでしょう。そう考えると、一本の木が無数の実を付けていても、そのほとんどは無駄になるのが普通のはずです。実際著者も、この発芽率をどう評価するかまではコメントしかねていました。
そういう意味で、この研究は森の生態系を考える上ではまだ出発点である、とも言えますが……
それでも、一本の木の芽が出るまでに多くの生物が関わっていることを見せてくれる、興味深い一冊でした(なお、「液果」の多くは果肉がついたままだと発芽しないとか。その点でも、動物に食べられるのは必須ということです)。


ちなみに、私は山でクマに会ったことはまだありません。父はあるそうですが…。
大抵はクマの方が人間に驚いて逃げていくのですが、びっくりして襲い掛かってくることもあるので、できれば会いたくないものです。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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