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古生物復元の方法――『凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪』

現在所属している研究室の研究発表の授業は、一度発表した後、その時の質疑を受けて2週間後にもう一度補足的な発表を行い、ふたたび討論を行うという制度になっています。
そんなわけで、私は今日、後半討論を終えました。
昨日はどうしようもないくらい疲れが取れず、原稿の修正作業も半ば途中で投げて寝てしまったような有り様でしたが、ひとまず無事終わりました。
まあ、これから年明けまでに修士論文を書き上げねばならないので、あまり一仕事終えた気分になっていてもいけないのですが、

 ~~~

さて、最近小説の読書レビューが減って、それ以外の本のレビュー増えている気はしますが……

凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪 (フィールドの生物学)凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪 (フィールドの生物学)
(2013/07/19)
椎野 勇太

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腕足動物、というのをご存知でしょうか。

私は子供の頃に読んでいた図鑑等で見たことがありましたが、どんな動物なのかはよく分かりませんでした。
図鑑に載っていて比較的知名度が高いのはシャミセンガイですが、どんなものかはネット上に画像があるなのでそれをご覧あれ。

 → シャミセンガイ

外見からすると二枚貝に足だか腕だかが生えたように見えますが……

本書『凹凸形の殻に隠された謎』は、そうした腕足動物について書かれた本です。
外見は似ていても二枚貝とは全く異なる身体の構造についても説明があります。「生きた化石」などと言われてきたのも、外見が古生代からそれほど変わっていないことによる誤解で、実態は結構変化しているとか。

ただし、本書が扱うのは同じ腕足動物でもシャミセンガイではなくチョウチンガイと、そして化石種です。
「フィールドの生物学」シリーズとありますが、本書の「フィールドワーク」はもっぱら化石の発掘です。

一方の殻が凹型、もう一方が凸型になっている風変わりな腕足動物・ワーゲノコンカで、今まで筋肉痕だと思われていたものがそうではなかったという発見、それに基づく殻の開閉能力の見直し、そして、どうやって海水を取り込んでいるのかという問題……。
腕足動物も二枚貝同様、殻の中に海水を取り込んで呼吸すると同時に、海水中のプランクトンを濾しとって食料にしています。ただ、腕足動物の吸水力はあまり強くないので、自然と水流が流れ込み通り抜けていくような殻の構造になっているのではないか――というのが著者も着目点でした。

これが成功した後、別の腕足動物・スピリファー類についても同様の研究を行うのですが、モデルを作るべく化石をスキャンに行った先で、力学の先生による「解析しちゃえば?」とのアドバイス。物理を履修したことがない著者の一からの挑戦。
かくして、どこから海水を取り入れていたのかに関する、二つの有力な説にも決着を付けてみせます。

面白いのは、以下のような記述でしょうか。

 かつての機能形態学では、人間の視点で直感的に思いつく形の機能が重視されていた。翼形種スピリファー類の一例を挙げてみよう。翼の形に根ざした流体適応の極論として、スピリファー類の肉茎は凧揚げの糸、殻は凧揚げの凧として水中に浮かんでいた、という奇抜な生態復元がある。また、「貝になりたい」などと比喩されるように、貝の形は防御の印象が強いらしい。腕足動物の殻も、少し厚めの殻をもったり、トゲを生やした殻をもつ種類には、単純に防御力アップの機能特性があてがわれたりもした。一歩間違えれば、私も破壊実験などで殻強度の定量化に勤しんでいたかもしれない。同じ題材であっても、仮説の立て方によって研究の方向性が的外れになるかもしれなかった。
 (椎野勇太『凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪』、東海大学出版会、2013、p.207)


あるいは、まったく異なる生物(たとえば人間)とのアナロジーに基づく復元について――

 この手の論理性に欠けるアナロジーは、分類群にかかわらず化石の生物学を扱った教科書でよく散見される。もし、その情報に基づいて研究を展開し、データを出し続けると、矛盾が蓄積していくことは想像できるだろう。二〇世紀後半に機能形態学の幕開けを迎えて以来、甘い前提条件のもとに積み重なった成果は少なからず存在し、砂上の楼閣となっている絶滅生物の生態復元も多い。
 (同書、p.211)


「巨大翼竜は飛べたのか」論争などを見ても、古生物学者と現生生物学者の隔たりは小さくないのを感じます。現生生物学者が当然と見なしている生理学や解剖学に無頓着な古生物学者が結構いると言いますか……
その一例をまた目にした思いです。
そこでアナロジーに頼った復元を離れ、流体解析を使うとは、一つの方法的なモデルとしても興味深い話ではないでしょうか。


巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学 (平凡社新書)巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学 (平凡社新書)
(2011/01/15)
佐藤 克文

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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