スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

意味の見えない戦争に消費される子供たち――『代償のギルタオン』

今回取り上げるライトノベルはこちらです。

代償のギルタオン (スーパーダッシュ文庫)代償のギルタオン (スーパーダッシュ文庫)
(2013/10/25)
神高 槍矢

商品詳細を見る

作者は新人――第12回スーパーダッシュ小説新人賞の優秀賞受賞作品ですね。

ジャンルとしては一種のロボット物ですが、タイトルにもなっている「ギルタオン」というロボット、搭乗者に過酷な「代償」を要求します。
その内容は機体ごとに違いますが、いずれにせよ搭乗することで何か大切なものを失い、そして失うものへの執着が強いほど、力を発揮します。
ロボットのパイロットが子供たちであるのも定番ですが、本作においてそれは、「残りの人生への執着が強いほど良いから」という理由で説明されます。

主役は、治安の悪い辺境の街から都会に出て幸せになることを目指す孤児の三きょうだい。姉のヤシャナと弟のライクが10台後半で、さらに5歳の妹ミコがいます。
何とか首都ランフェルド行きの列車に乗ることに成功したものの、砂漠の真ん中で列車が事故に遭い、他の乗客たち共々軍艦「ヘルヴィータ」に拾われることになります。しかしヘルヴィータはギルタオンのパイロット不足で、パイロット候補となる子供たちを求めており……。

主人公が始めてギルタオンに乗って出陣するのはページ数にしてラストから6分の1くらいのところで、そこまではひたすらきょうだいの絆とささやかな希望を描いて、終盤に訪れる悲劇への溜めとしています。
冒頭、「序章」の前に「終章〈後編〉」が入る構成と合わせて、待ち受けているものはある程度まで予想できるわけですが、それがかえってドラマを盛り上げます。
登場人物が多く、その他にも機体名など数多くの固有名詞が登場します(読んでいてどれが何の名前だったか思い出せなくなることは結構ありました)が、それらを無駄にはしないで盛り上げるために使いこなす筆力はあったと思います。


悪趣味にして重い趣向はなかなか悪くない――悪くないのですが、若干気になるのは、戦争の主体にして悪役という軍隊の扱いです。

シャリオ中佐は口調からしてガラの悪い人物で、露骨な手段で子供たちを追い詰め、脅してギルタオンに乗せようとします。
館長サリアンナと副官ロクトは一見すると穏健派ですが、結局のところシャリオを黙認し、場合によっては同調して、彼が悪役を演じて子供たちをパイロットにしてくれることを期待している様子です。
とかく、軍の悪辣さは非常に分かりやすい形で描かれています。

しかし、そうやって望まぬ者を無理矢理パイロットに仕立てたところで、急拵えのパイロットでは練度の問題もあるでしょうし、また反逆の危険もあるのではないでしょうか。
こうした問題は実際に作中でも描かれていることだけになおさら、軍人たちの思考には疑問が残ります。

が、そうした個々の人物の思考に関する粗以上の問題は、そもそも戦争は軍が行うものなのかどうか、ということです。
本作中には軍と戦争とギルタオンを憎み、全ての軍隊とギルタオンをこの世から消し去ろうとする革命家、ギギ・ウェットネスが登場します。ただ、ギギの襲撃によって主人公のライク達はギルタオンに乗って戦うことを強いられたのですから、ライク達から見ればギギも軍隊と同じ、自らを戦争に巻き込む憎むべき存在です。
そうした観点はあって、単純に軍のみを悪とすることを相対化するような視点も感じられるのですが、ただ、軍の後ろにあるべき「政治」は作中には見当たりません。

本来、戦争というのは国策の遂行手段であり、政治の領域です。「いかにして戦い、勝つか」は軍隊の管轄ですが、「そもそも戦争をするか」は政治に属します。
ですが、本作中ではラーンハイムとリオンザイルという二つの国の間で戦争が勃発した理由からしてギルタオンの発掘競争(※)、すなわち軍拡競争であって、軍事の外に理由が見当たりません(厳密に言えば、軍拡そのものはすでに軍隊の管轄ではないはずですが、問題は政治的なレベルで「協定を結ぶ」という選択肢の存在が感じられないことです)。

※ ギルタオンは今のところ正体不明で――どうやら古代文明の産物らしいのですが――、「発掘」されるものです。

つまるところ、軍隊の存在と戦争はどこまでも自己目的であるかのようです。そもそも本作の主題は戦争によって悲劇を強いられる子供たちであって、その外の事柄を本作に求めるのは、お門違いなのでしょうか。

とは言え、これは新人作品で、しかも続きもありそうな締め方です。
成長性のある新人ならば、テーマ面でも成長を見せることもあるので、楽しみにしておきましょう。

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。