スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

現実の闇を知った上で何を目指す――『魔法少女育成計画 limited (前)』

はい、今回取り上げるライトノベルは『魔法少女育成計画』シリーズの新作です。
間に短編集『episodes』を挟みましたが、『restart』からちょうど1年ぶりに、また新メンバーでの新章、ふたたび2ヶ月連続刊行の前後編となります。

魔法少女育成計画 limited (前) (このライトノベルがすごい! 文庫)魔法少女育成計画 limited (前) (このライトノベルがすごい! 文庫)
(2013/11/09)
遠藤 浅蜊

商品詳細を見る

 (既巻についての記事:無印 restart〈前〉 restart〈後〉 episodes Web短編「スノーホワイト育成計画」

ゲーマーズでの購入特典は特製ブロマイド↓の他、前後編を両方購入すると色紙も貰えるとかで、前編を購入した印のスタンプカードも貰いました。

魔法少女育成計画limited 前編ブロマイド

また16人でのスタートですが、今まで大きく違うこととして、この16人中に今までのシリーズのメンバーが入っています。これはカラー口絵のキャラ紹介を見た時点で分かりますが……
メンバーを一新しつつも、世界観に関わる問題を引き継いでの続編という形式も『restart』と同じ。その点で、既巻4冊に加えてWeb小説「スノーホワイト育成計画」まで順に読んでからこの新巻を読むことをお勧めします。


ストーリーですが――放課後の委員会に集まった女子中学生たちの前に、妖精のトコが出現、彼女たちを魔法少女にした上で、「悪い魔法使いに追われているから助けてほしい」と言い出します。
ただし、ここに集まっていた生徒は5人ですが、トコによって生み出された「魔法少女部隊」は7人。カバー裏のあらすじには「女子中学生達を魔法少女へと変えてしまった」「色めきたつ少女達」とありますが、明らかに「女子中学生」でない者が混じっています。まあ、今までの先例を見ていれば大体想像は付きますが……

まあしかし、この妖精はあからさまに怪しいですね。
無印および restart と違って小さな人間型の妖精ですし、そもそも無印と restart のマスコットも外見は同じながら性格と役回りは大きく違いましたが、そもそもマスコットが善か悪かという以前に、本シリーズの設定において魔法少女の敵など魔法少女の他にはいないと明言されているのです。
「悪い魔法使い」なる者がいたとして、それは普通なら魔法の国の警察機構に頼るべき問題でしょうから、そうしないということは……

今回、カバー裏のあらすじには7人が魔法少女にされるところまでしか書いてありません。今までのように同列の魔法少女16人が集められて「さあこれから皆さんにやってもらうのは……」という展開になっておらず、別々の勢力として魔法少女達が登場するので、顔見せにも時間がかかります。
第二の勢力は追手側。要するに魔法の国の捜査員なのですが、ここでも魔法の国の縦割り行政により、異なる部署の対立する思惑がチーム内で交錯している有り様です。
お役所仕事が問題になるのは、今回も相変わらずです。

そして第三の勢力は、魔法の国の反体制派と、それにより脱獄させられた凶悪犯の魔法少女たち
この前編ではまだそれほど血腥い展開になっていませんが、彼女たちが牙を剥いた時にどうなるかを想像するとひしひしと絶望が押し寄せてきます。

というわけで、今回はバトルロワイヤルというよりも捕物劇――魔法少女が走ると車よりも速いので乗り物を使う場面は少ないのですが、ストーリー仕立てとしてはロードムービーに近い感じです。

しかも、舞台となる街は魔法の国の結界により封鎖されています。結界の持続時間は24時間で、それを過ぎれば街の外に逃げられる――そういう時間・空間的に限定された、という意味での「limited」です。
視点が切り替わる度にカウントダウンが表示され、それによって時系列が前後しているのも分かるテクニカルな構成になっています。

さらに、チーム内でも思惑は様々であり、中にはまだ本性を見せていない、裏があると思しき魔法少女もいます。
ミステリ要素はそう強くないというか、誰が怪しいかは大体想像が付くのですが、しかし怪しすぎてミスリードの節もなきにしてもあらず。そしてまた、正体を現したらどう豹変するのか怖くもあり、楽しみでもあり……


戦闘についても、多少傾向が変化しています。
この手の能力バトル物は、元祖たる山田風太郎の忍法帖からして、長く続くと「一人一能力」という基本コンセプトの例外も色々と出てくるものですが、本作も例に漏れず。
かなり万能な魔法の使い手もいますし、実は魔法少女でない――それゆえ「一人に一つの魔法」という原則が当てはまらない――登場人物もいます。

しかも、今回はまったくの新人が7人登場する一方でベテランの魔法少女も多く、何人かは荒事のエキスパートとして参戦しています。つまり、「並外れて強い魔法少女」とそうでない者との差異は、今まで以上に確固とした設定なわけです。
自然、能力の意外な使い方や番狂わせの多かった無印や、「戦わない魔法少女」の活躍と強さにスポットの当たっていた『restart』に比べると、そうした要素は控え目です。
もっとも、「強い魔法少女」も多くはまだ本領を発揮していないので、戦闘面でも魅せ場はこれから、と思われますが。

それでも、海賊の魔法少女キャプテン・グレースがいるのですが、舞台となる街は山の中。船なんか出しても使えない…かと思いきや、その魔法を使って意外な活躍を見せたりと、そんな魅せ場はありました。

さり気なく「大量破壊が可能な魔法少女」という、『美少女を嫌いなこれだけの理由』を思い出すネタがさらっと入っていたりもしましたが。


さて、本シリーズの出発点には「魔法少女はなぜ戦うのか?」というメタ的な問いがある――少なくとも私はそう読みました。
この度の『limited』前編においては興味深いことに、作中人物の一人が「我々は魔法少女なのでしょうか」という疑問を呈します。

「トコからの説明もありましたし、私も個人的に様々な実験をしてみました。やはり身体能力が格段に強化されています。これは魔法少女というよりも戦闘美少女、バトルヒロインの特徴ではないでしょうか」
 (……)
 ウェディンは語った。魔法少女というキャラクタータイプはそもそも日常に魔法を持ちこむということがメインであり、敵も味方も魔法やそれに近い能力を持っている戦闘美少女物とは明確に区別されるべきであると。
 (遠藤浅蜊『魔法少女育成計画 limited (前)』、宝島社、2013、pp.162-163)


かくして「魔法少女はそもそも戦うものなのか」という問いが作中で登場するわけですが、タブー中のタブーに触れやがった……とは別に思いません。この問いは最初からあったからです。
別の人物が「オタクの屁理屈」(同書、p.165)と切って捨てるのも故のないことではなく、そもそもこの点を「明確に区別」すべきであるという前提を共有しない者にとって、このような議論はさしたる意味を持ちません。

そもそも、「日常に魔法を持ちこむということがメイン」といった「魔法少女」の定義は、いつ成立したのでしょうか。
「日常に魔法を持ちこむ」魔法少女とは、『魔法使いサリー』や『魔女っ子メグちゃん』といった作品のイメージなのでしょうが、これらの作品も作中で「魔法少女」と言っているわけではありません。これらはいつから「魔法少女」と呼ばれるようになったのでしょうか。

この問題は、「“魔法少女”という言葉はいつ、どこで登場したか」という歴史的・実証的な検証を行わねば解決できないことで、ここで答えを出すことができません。
ただ、魔法少女というカテゴリーはずっと後になって作られたのではないか、と考えることは十分できます。
サリーやメグは後世になって「魔法少女になった」のです。
系譜関係を持ち出してもそう簡単に答えは出ません。確かに「戦闘美少女、バトルヒロイン」は男の子向けヒーロー物の系譜を受け継いでいるかも知れませんが、だからといってただちにサリーやメグの系譜を受け継いでいないということにはならないからです。

つまり言いたいのは、「最初に“あるべき姿”があって、そこから逸脱する」のではなく、「“あるべき姿”は後になって作られ、投影される」のではないか、ということです。
そして実際、『魔法少女育成計画』シリーズにおいても、「魔法少女のあるべき姿」を押し付けようとしたキークがいかなる惨劇をもたらしたか、克明に描かれていました。

ついでながら、今回は日本人以外の魔法少女や、130年も前に活躍した魔法少女までが登場します。
伝統的な「魔法使い」に比べると、魔法少女は魔法の国の中で新しい存在であるという設定はあったのですが、思ったよりは古かった――少なくとも、現実の日本の「魔法少女アニメ」の歴史よりはだいぶ――ようで。
それでも、現行の魔法少女とは基本性能が少し違う、という設定もあったりします。
一体いつ今のような魔法少女が成立したのか。やはり何やら遡行的に「魔法少女」というカテゴリーとその歴史が拡大している感はあります。

といったことを考えた上で――
この『limited』には、文字通り今さっき「なったばかり」の魔法少女たちが7人も登場します。これはもちろん、シリーズで初めてのことです。
「悪い敵」に追われる妖精を助けて敵と戦い、ワクワクドキドキするような冒険をする――そんな王道の物語を期待させる展開で魔法少女になりましたが、その裏にはそうした期待を裏切るような真相があります。
現実が期待通りになっていないことを知った時、さてどうするか――彼女たちはこれから、そんな厳しい状況の中で、魔法少女としてのあり方を模索していくべき存在なのでしょう。
そしてもちろんその答えは、机上の理念を掲げることによってではなく、魔法少女としての実践によって示されることのはずです。


なお、『restart』の生き残り組は今回はっきりとは登場しませんでしたが、それらしい人物はいます。
『restart』でも、ゲームマスターを前作の主人公が片付ける形になりながら、前作の主人公が出過ぎない形で上手く締めていましたし、彼女の密かな活躍も楽しみなところですね。

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

未来はどちらへ――『魔法少女育成計画 limited (後)』

修士論文の執筆にも使っているし、間もなくプレゼンにも遣いノートパソコンが動作不良を起したりと、相変わらず心配させられます。 アンチウイルスソフトにしても無闇に更新してはいけませんね。それ自体はウイルスでなくても下手に搭載すると不具合を来します。  ~~~ さて、今回は2ヶ月連続発売『魔法少女育成計画limited』の後編を取り上げさせていただきます。 魔法少女育成計画 l...
プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。