オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
全ての主題が結実する時――『ハカイジュウ 11』
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(全体のレビュー(9巻時点) 前巻レビュー)
今回、11巻目にして第1話から組み立ててきたものが一気にクライマックスに向けて実った感がありました。
以下はもうネタバレに入るので追記にて。
今回、主人公・陽の死んだと思われていたライバル・瑛士が第1話以来の再登場です。
しかも、怪物と融合した「フューズ」となって。
怪物に襲われた人間、普通なら死んでいる状態の人間も怪物と融合して生きていることがあるのは第二部から示されていましたし、9巻からは作中で一番ヤバい人間であった武重先生がフューズとなって活躍していました。
しかも瑛士について確認されていたのは身体からちぎれた腕だけで、長い間単行本の人物紹介にも出続けていた……と生きて再登場する条件は揃っていたわけですが、ようやくです。
ただし、瑛士は今のところ最強のフューズですが、人間としての自我は失っています。人間の自我を留めているフューズは武重先生一人だけです。
女子高生に手を出し、逆らう者を粛清して自分の世界を作ろうとする妄念が、彼を支えています。
そして、深手を負って搬送された陽も、怪物の細胞を移植されていました。
しかし彼は外見上、まったく怪物化していません。怪物対策の中心にいるマッドサインティスト・早乙女は「失敗」と見なしていましたが、どうやら失敗ではなく、全く新しい形で怪物との融合を達成した、というのが真相のようです。そんな陽がついに目覚めるところで今巻は引き。
第2部から(5巻~)は出番もあまりなくなっていた主人公がようやく活躍し、そして果たせなかったライバル超えという主題も一気に意味を持ってきました。
考えてみると、陽は強い正義感こそ持っていましたが、怪獣出現という極限状況下にあって危険を顧みずに幼馴染の未来に会って無事を確認しようとするという強い妄念をも備えていました。
ある種、危険なものにも転じ得る妄念こそが怪物の力を御す素になる、というのは一貫しているのかも知れません。
陽はフューズとして瑛士以上の存在になり、怪物との戦いで活躍すれば、ある意味で「ライバル超え」を果たしたとも言えますが、当のライバルが人間としての自我を失ったままではその意義も薄いでしょう。
この点がどう出るのか、やはり瑛士の「遺志を受け継ぐ」形になるのか、それとも瑛士の人格が目覚める時が来るのか……
いずれにせよ、ここまでの内容が一挙に結実した形になりました。
なお、政府側の対策本部は東京スカイツリーにあるのですが、このスカイツリーの下には今までの巨大怪獣とも桁の違う超巨大怪獣が眠っており、怪獣たちもそれを目覚めさせるためスカイツリーを目指しているとのこと。
防衛拠点に敵の目指すものもあって、放っておいても敵がやってくるというのはやはり『エヴァンゲリオン』以来の定番でしょうか。
もっとも、本作では今まで、敵がどこに向かってくるといった話はあまりなかったのですが……いよいよ敵も一箇所に集まって最終決戦、ということなのでしょう。
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