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困惑

名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 (光文社新書)名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 (光文社新書)
(2009/12/16)
河本敏浩

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内容は例によって大学、学力、学力格差といった問題を扱った本です。「分数ができない大学生」シリーズについても「入試に数学がないのが原因なのに、数学を入試で出すよう働きかけもせず、何を言っているのか」と言った感じでかなり厳しく批判していますが、こうした批判内容自体は目新しいものではありません。それと、大学入学後の教育制度を批判、全入にも関わらず入学後も勉強することなく卒業できてしまう日本のシステムを批判していたり。
「21世紀の大学生は70年代の暴走族レベル?」という帯の煽りもどうかと思いますが(大学「全入」なので最底辺なら暴走族レベルもあり得るという話なんですが、この言い方は21世紀の大学生の標準がそのレベルだと言っているように見えますし)。タイトルと言い帯と言い、光文社新書はこういうの多いですね。

が、この本で一番衝撃的だったのは、実は「二つの入試問題」という箇所でした。
ここでは1970年2008年東大の入試問題(英語)が掲載されています。
1970年の問題は3ページで試験時間は80分
2008年の問題は16ページで試験時間120分ですが、これに加えてリスニングがあり、音声が30分流れるのに加えて解答時間もあるので、時間は実質変わっていないだろうとのことです。
(私から1つ付け加えるなら、ざっと見る限り'70年の方が問題は難しいとも思えません)
合格最低点も6割弱でほぼ同じ。
「一体どこが学力低下なのか?」
と河本氏が言うのももっともで、学力問題を扱った本は結構読みましたけど、この点に触れている本をこれまで見なかったことにも驚きます。

しかし、問題を作っている側である大学の先生が誰もこのことに気付いていない等ということも考えにくい気がします(問題作りに関わっている先生は一部でしょうが、作っていなくても自分のところの入試問題を見る機会くらいあり得ます。もちろん気付いていない先生もいるでしょうが、気付いている先生いるのではないか、ということです)。

その上での困惑を(勝手に)想像してみます。

「我々の頃よりはるかに難しい入試をくぐってきてるはずなのに、入学してみると何でこうなんだ」

この思いが普遍的かどうかは分かりませんが、同意を得られたこともないではありません。
さらに勝手に、考えられる原因を挙げてみます。

1. 先生方の学生時代も今の学生を笑えたものではなかったのに、昔のことは忘れて言っている。
2. 入試の難しさは入学後の出来とは関係ない。
3. 入学後の学びからはかけ離れた形で「入試で点を取る技術」が磨かれている。
4. 入学後の教育課程に問題がある。

多分いずれの論拠も探せばあるでしょう。現実はこれら全てが絡み合っているのではないかとも思います。
しかし、身の回りを見ていても、入試の倍率と入学後の出来の間におよそ正の相関がないと感じることはあります。(ちなみに本学の定員と出願者数は公表――出願期間中にリアルタイムで更新――されてますし、その過去データは予備校が保管してるんで、調べれば分かります。それに人数が少ないので何人受けたかなんてことは本人達がよく分かってますから、話が聞こえることもあります。もっとも、ウチのように定員5人で受験者10人前後となると誤差の方が大きいでしょうから、あまり相関が見えないのは当然なのかも知れませんが)
こういう点から見ても、大学入学後の初期教育が重要だという河本氏の主張には大いに頷きたくなります。
…ここで本学の初期教育が良いかと言うと、今までさんざん文句を言ってきたので、あまり手放しに褒めるのも嘘臭くてできませんが。
                           (芸術学2年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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