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変な奴らが変なまま、自然で在れること――『人生 第6章』

母校の後輩たちが古美術研究旅行で京都に来ているので、後輩の様子見と、久し振りに日本美術史の先生にお会いするのも兼ねて参加させてもらってきました。
新任の西洋美術史の先生も同行されていたので、少しお会いすることができました。

ただ、今日は授業はないものの、家のガス検査の予定があって一度帰宅したのですが……その後のお茶会(打ち上げ代わりらしい)にも誘われて、ついついそのまままた出かけたり。
ちなみに、ガス検査の予定時間には余裕をもって帰宅したのですが、帰ってみるとちょうどマンションの玄関で業者と会いました。
「不在の方が多い」とかいうことで、急遽予定を早めて検査をやってもらうことになったり。

それはそうと、どことは言いませんけれど某寺院、仏像の前に集まって先生が解説をしていると「お参りする人がいるので、前ではお参りするだけにして、説明は外でやってください」と言われました。
わざわざ宝物館を設けて展示しているのにそれはないんじゃないか、と誰もが思いました。
美術館ならば、教育的役割を考えれば作品の前に集まって解説、というのは当然ありでしょう。別個に見たい人の邪魔にならないよう、節度を持って道を空ければいいことです。この場合、お参りする人に対しても同様ではないでしょうか。
同時に礼拝の対象でもあるとは言え、国宝・重要文化財を大量に展示しているからには、文化財保護法に照らし合わせても教育的役割を引き受ける必要があると思うのです。

以前はそうでもなかったはずなんですけど、感じ悪くなりましたね、某寺院。

 ~~~

余談が長くなりましたが、今回はこのライトノベルを取り上げさせていただきます。

人生 第6章 (ガガガ文庫)人生 第6章 (ガガガ文庫)
(2013/11/19)
川岸 殴魚

商品詳細を見る

 (前巻の記事

前巻が5月だったので半年ぶりと若干間が空きました。
そもそも続刊の存在そのものが危惧される頃だったのですが、さて新巻の帯には「アニメ化企画進行中&コミカライズ決定」とのこと。あとがきでもその旨が触れられています。
たいていこういうことは「決定」段階で発表されるものですが、一方だけ「決定」でなく「企画進行中」というのが微妙な不安を感じさせるのは気のせいでしょうか。

さて、主人公が新入学した時期から始まった本作も、今巻で12月になりました。
当然、主題はクリスマス「リア充の祭典」としてクリスマスを憎む生徒の存在が大きな問題になるのですが、ただ本作の場合、4巻からは生徒会長・白河香織との対決があります。香織を目の敵にしているのは部長の彩香だけで、主人公の赤松は対決に乗り気でもないのですが、彩香が対決という話題を持ち込んでくるので、どうしてもそれに引っ張られます。
招かれること自体がステータスになるようなセレブなクリスマスパーティーを香織が開くので、それに対抗し、クリスマスを憎む生徒の声を受け止めるべきだ、という彩香。

というわけで、問題になるのはパーティーであって、「クリスマスはカップルの日」という――ここ30年以内に流布したとも言われる――通念は前面に出てきません。
赤松も――例によって人並みの下心を持って――お悩み相談コーナーの美少女たちとクリスマス会を開催したいとは思うものの、デートという方向に話が進みはしません。
その上、対決という話が出てきては、ささやかなパーティーを楽しむだけというわけにも行かなくなり……

前巻辺りから、かつてお悩み相談コーナーに相談してきたキャラクターが再登場、助けてくれるという展開も増えました。
人生相談を受け付けてきた成果が確かに感じられるわけですが、しかしすんなりいい話にしてくれないのもこの作品。
かつての相談者がいい方向に変わっているとは限りません。むしろ、駄目な方向に成長していたり……
香織が登場した巻の相談者で、不登校ぎみの生徒(&先生)だった「ネガティブスリー」の内、前巻では山中君江さんが、今巻では残りの二人が再登場。第二新聞部の幽霊顧問・朋子先生は相変わらずでしたが、何より強烈だったのが矢野くん。その駄目な開眼っぷりで笑わせてくれました。おまけに頼りになりました。

人生相談がどう作用するか、人がいい方向に変われるかどうかは分かりません。しかしさらに言えば、それが「いい」のか「悪い」のかも状況次第で、そう簡単には分からないものなのです。

そもそもお悩み相談コーナーの回答者を務める美少女たちも、諸事情によりまともにクリスマスを祝ったことがないメンバー。そこでさらに普段クリスマスに縁のない者達を招いたら、当然まともでは済みません。

 どうやら、絵美は飾り付けの配置が気に食わないらしい……。それにしてもずいぶん揉めているが大丈夫なのか……。
「ふみさんも! 変なの吊るさないで!」
「変なのじゃないですよ。趙雲ですよ」
「クリスマスに趙雲出てこないの! 趙雲をトナカイに乗せないでっ! 梨乃さんも! 試験管はいらないの! あとこの変なのも吊るさないで!」
「変なのではない、アズワンのオクタゴン回転子なのだ」
「名前なんていいの! 変なものなの!」
 なんだか猛烈に揉めている。
 (川岸殴魚『人生 第6章』、小学館、2013、p.176)


こんなのは序の口。本番となれば出し物はもうクリスマスだか何だか分からないカオスと化し、口も聞かずに黙々と料理を取っていく参加者が並ぶ始末。
けれども、そういう人間を集めたのだから当然です。そして、そういう人間が自然にいていいパーティーこそ、クリスマスから疎外された者達を受け入れるという意味で、求められていたことだったのではないでしょうか。

…と色々言いましたが、本作はあくまでコメディ、しかも最初から相談者を集めるという展開もなく、寄せられる相談に答えるに当たって漫才をするという展開を延々続けてきた作品です。劇的に状況が動くということはありません。
それでも、そんな中できっちり赤松と梨乃のラブコメが進展していたりする面もあるのですが。

作中では影が薄いと言われ続けている主人公の赤松ですが、相談員たちのどこに向かっているのか分からない漫才を毎回きっちりそれらしい回答に仕立てている辺りで、やるべきことのできる人間なのは分かります。
今回も、女の子たち相手の下心だとか放っておくと泥沼だとかいう――読者としてもよく共感できる――理由あってのことですが、ちゃんといいところを見せます。
自然となすべきことができるから彼はカッコいいのです。そしてそんな彼こそ、変な奴らが自然体で生きられる場所を作る上で欠かせない存在でもあります。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
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