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孤独な中で自らの道を選ぶ(それと眼鏡愛)――『境界の彼方』

今回紹介するライトノベルはこちら。
京都アニメーションが刊行しているレーベル「KAエスマ文庫」からの刊行作品で初の3巻達成、アニメも現在放送中です(もう終盤ですが)。
ちなみにアニメと原作はかなり別物とのこと。

境界の彼方境界の彼方
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境界の彼方2 (KAエスマ文庫)境界の彼方2 (KAエスマ文庫)
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主人公の神原秋人(かんばら あきひと)はある日、校舎の屋上のフェンスの外に立っている少女を見付けて、自殺を止めようとします。
しかし彼女――栗山未来(くりやま みらい)は別に自殺しようとしていたわけではなかったらしく戻ってきて――秋人を刺します。
しかし秋人は死なず――と、こういう出だしで、どうしてこうなるのかという設定は追って説明されますが、要するに秋人は「妖夢」という妖怪のような存在と人間の間に生まれたハーフであり、栗山未来は妖夢退治を生業とする「異界士」です。

ちなみに、秋人の同級生で同じ文芸部に所属する名瀬美月(なぜ みつき)とその兄の博臣(ひろおみ)も異界士で、しかも名瀬の一族はこの地域の異界士の間ではかなりの権威を持っており、秋人も名瀬の管理下に置かれている、ということになっています。

秋人は半妖夢であるがゆえに、妖夢からも異界士からも敵視され、命を狙われてきましたが、不死身という非常に稀有な特性を持つため、今までどんな異界士も彼を仕留めることはできませんでした。彼自身は通常、人に害意を持つことなく普通に生きようとしているのですが……
今は、美月たちが正体を知りつつも日常を共に過ごしてくれていますが。

他方で未来も、血を操る一族の出身で、この一族は異界士の中では「悪」として忌み嫌われています。

そんな孤独な二人が出会って交流を深める物語、といったところでしょうか、大きな軸は。

妖夢との戦い(場合によっては異界士同士の戦い)という要素も少なからずありながら、多くの場合「敵と戦って倒す」ことが山場にならないのも、本作の性格を物語っています(戦闘シーンの描写はあまり上手くない、という問題もありますが)。

さらに未来の方は、深い縁のある相手が罪を犯して逃亡中といった事情もあります。
孤独な自分に手を差し伸べてくれる人が過ちを犯した時、それにどう向き合うのか、自分の道を選び取ることは可能か、という、なかなかに困難なテーマをも提示します。
2巻は新キャラの峰岸舞耶(みねぎし まいや)という少女を巡る物語がメインになりますが、このテーマは基本的には一貫しています。
舞耶の生き方は、同じような孤独な境遇にある者として、秋人や未来のネガという面もあり、彼女がこれからの自分の生き方を摑み取ることができるかは、その後のまだ十分に解決を見てはいない問題であり続けていますが。

いや、秋人たちも万全ではありません。

不死身の秋人ですが、1巻では「凪」という妖夢の力が弱まる現象があって、途中で不死身さを失いました。
それでも身体を張ることが魅せ場になるわけですが、2巻以降では凪も徐々に去って、力を取り戻しています。
その代わり、彼のもう一つの――暴走すると非常に厄介な――力が明らかに。
そのことと関係して、3巻では彼の今後の処遇も変化しそうな気配も出てきました。
そもそも、今は名瀬に「買われて」いるという扱いの秋人ですが、どうやらそれもいつまでも安泰とは限らないようで……もちろん美月や博臣は秋人を助けようとしていますが、それも成功するとは限らず。
自分の将来の保障を摑み取るべく、これから戦わねばならないことは多そうです。


と、シリアスな筋を説明してきましたが、本作のそれ以上の特徴は掛け合いです。
シリアスな話をしていかと思うと脱線してどんどん関係のない会話を展開していることもざらです。

まず、主人公の秋人が強烈な眼鏡好きです。
未来の飛び降りを阻止しようとした時からして――

 どんな言葉を用いて自殺を思い止まらせようとしたかは、ただの自慢話になるので割愛させてもらうが、とにかく「あなたのような眼鏡のよく似合う人が死んではいけない」という旨をひたすら純粋に伝えた記憶が残っている。眼鏡の有用性から始まって、発明の歴史まで語ったかもしれない。そして最後にこう告げたのだ。
「要約すると眼鏡が大好きです」
「不愉快です」と一蹴された。
 (鳥居なごむ『境界の彼方』、京都アニメーション、2012、p.12)


ヒロインが入浴する時も裸よりも眼鏡を外すことを気にして、果ては眼鏡愛が昂じて連行されるという斬新なオチまでやってのけました。
美月に眼鏡をかけさせたがる辺り、伊達眼鏡でもいいらしく、その辺が考えの分かれ目かも知れませんが……しかし花粉症対策の眼鏡とか、風呂上りに皮脂で汚れた眼鏡をかけなくて済むように入浴中に眼鏡を洗浄するとか、湯気で曇らない眼鏡とか、眼鏡に関する気配りは本当に行き届いていて、眼鏡っ娘好きの鑑ですね。

博臣も妹好きの変態――実妹の美月を溺愛しているのはもちろんですが、それ以外にも「妹」というカテゴリー全般を愛しています――ですし、美月の毒舌も強烈です。
掛け合いを回す上では美月の存在は特に大きいですね。たとえば以下のようなのが日常的です。

「そう言えば『&』という字は表記の仕方で膝を抱えている人みたいに見えるわよね? まるで部屋の片隅で落ち込んでいる秋人みたいだから、今度から『&』と書いて『あきひと』と読むことにしましょう」
「なんの脈絡もない嫌がらせはやめろよな」
「引っ込み思案の美月ちゃんは『&』くんになにも言い返せませんでした」
「しっかり言い返してるじゃねえか! というか自然に『&』を定着させるな!」
「だったら傷付いている私に優しくしなさい」
「いやいや、一番傷付けられたのは僕だろ?」
「そんなことはどうでもいいのよ。秋人の心境なんて三百年後の天気くらい興味がないわ」
「酷過ぎる! 無茶苦茶だ!」
「無理を通して道理を引っ込めるのが私よ」
 これぞ歪みのないミツキズムだった。本当にもう性根が腐ってやがる。
 (鳥居なごむ『境界の彼方 3』、京都アニメーション、2013、p.22)


そんな美月も異界士としての現場経験はあまりなく、一族の中ではしばしば重要な案件で蚊帳の外に置かれていることもあって、そんな自分の立場を変えようと努力したり、それで失敗していたりという様も3巻で描かれました。
冷静過ぎて「現場向きでない」と評された美月と、自分の危険を省みずに秋人のために身体を張る未来の対照も印象的でした。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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