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未来はどちらへ――『魔法少女育成計画 limited (後)』

修士論文の執筆にも使っているし、間もなくプレゼンにも遣いノートパソコンが動作不良を起したりと、相変わらず心配させられます。
アンチウイルスソフトにしても無闇に更新してはいけませんね。それ自体はウイルスでなくても下手に搭載すると不具合を来します。

 ~~~

さて、今回は2ヶ月連続発売『魔法少女育成計画limited』の後編を取り上げさせていただきます。

魔法少女育成計画 limited (後) (このライトノベルがすごい! 文庫)魔法少女育成計画 limited (後) (このライトノベルがすごい! 文庫)
(2013/12/09)
遠藤 浅蜊

商品詳細を見る

 (前編の記事

ゲーマーズでの購入特典は例によって、表紙絵のブロマイド。

魔法少女育成計画limited(後) ブロマイド

さらに、前後編両方購入で特製色紙です。

魔法少女育成計画limited 特典色紙

さて、まずネタバレにならない範囲で……というのがなかなか難しいのですが、ひとまず、今までの『魔法少女育成計画』と比べてこの『limited』の特徴は、最初からはっきりと敵味方が(三つ巴に)分かれていることだと言えます。
そして、今までと違い、ゲームマスターによって16人の魔法少女が同列扱いで集められるという構造ではなく、マスターを介して他の任意の魔法少女と接触することができない中で、相手を探し出そうと追いかけっこをする、というのがストーリーの軸になっています。
しかし、このような敵味方のはっきりした構図は、かえって味方を犠牲にしてでも生き延びようとする魔法少女の下衆さを際立たせます。
しかも、そんな下衆が一人や二人ではありません。
『restart』では、誰かプレイヤーキラーが紛れているという状況下で疑心暗鬼に陥っていたりした間柄の魔法少女たちが信頼関係を築いていくところに見所があり、根っからの悪人という魔法少女が少なかったのとは対照的です。

けれども同時に、だからこそ、そんな魔法少女たちが仲間の死を受けて意を新たにする様には心を打たれます。
このシリーズは無印からずっと、登場人物がどんどん死んでいくだけに、生き残った者が死者の遺した者を引き受けて成長し、戦う様は重要なモチーフであり続けています。
それは、悪党でクズな魔法少女が目立つ今回も変わりません。

もっとも、成長の余地があるキャラ、そうして成長したキャラがまた容赦なく死んでいくのも、本作なのですが……

そして、人格の善悪は個人の資質に負うところが大きいというものの、魔法少女の悪の背景には魔法の国のどうしようもない体質があります。
作中人物も明言するほどに、魔法少女アニメのイメージからは程遠く「本物はクズだけ」(p.195)です。

けれどもだからこそ、これから魔法少女たろうとする者はどうするべきなのか。

(……)魔法少女が憧れに足らないものであれば、自分自身が規範となればいい。(……)
 (遠藤浅蜊『魔法少女育成計画 limited (後)』、宝島社、2013、p.209)


この決意が、前編で一番「魔法少女とは何か」にこだわっていた人物のものであるだけに、この前後編において「魔法少女とは何であり、何であるべきか」という問題意識をきっちりと引き受け、描いてくれたという感があります。その点に関しては大変満足しています。

もっとも、これで魔法少女を廻る戦いが終わるわけではありません。魔法の国の体質や魔法少女の扱いが変わるには足りないでしょうから。だからこの問題意識は、これからも回帰してくるだろうと思われます。

そして、いわゆるゲームマスターのいない今回でしたが、黒幕はいました。
『restart』でも、能力や状況から誰が犯人であり得るか、と考えると真相は読みやすいというか素直なのですが、それだけで終わってはくれないのは同じでした。

けれども黒幕たる彼女もまた、魔法の国の状況を改善するべく戦っていた、というのも事実でした。
そのために犠牲を辞さないやり方は確かに悪辣とすら言えますが、悪に対し悪をもって戦うのが功を奏しているのも事実。
綺麗事だけでは済まないところを見せられた、というべきでしょうか…

さらに今回はラストも今までになく後味の悪いものでした。
無印もラストは将来の危うさをも感じさせるものでしたが、悪党は報いを受けて滅びていたことは確かです。『restart』の締めには鎮魂の美しさも感じられました。それに引き替え今回は……

今後のさらなる新シリーズへの布石になりそうですが、その「今後」がどうしようもなく不穏なもので……


ここで、ちょうど1年前の『restart (後)』のエピローグの文言を再度引用してみます。

 魔法少女には「戦う魔法少女」と「戦わない魔法少女」がいる。だからといって「戦わない魔法少女」が弱いわけではない。
 (遠藤浅蜊『魔法少女育成計画 restart(後)』、宝島社、2012、p.264)


何だか山田風太郎『柳生十兵衛死す』「柳生十兵衛は強いのだ」という一文を思い出します。
作中人物の代弁ですらない地の文で、ここまでストレートに自作の登場人物を褒め称えて、それでも許されるどころか様になるのは、風太郎氏の類稀なる文章力の賜物です。

『restart』のエピローグにも、実にストレートな魔法少女への讃歌がありました。

これに対して、今回はクズな魔法少女が多く、悪人が笑うような締めもあって、暗黒面を強く見せられた想いです。

魔法少女は強く、美しい。けれども他方で邪悪で、醜く、災厄を齎します。
将来はどちらに――



追記はラストまでのネタバレを含みます。
というか、多分断片的で、小説そのものを読んでいない人が読んでも何だか分からないかと思います。


新米魔法少女の内で、一番冒険の世界に憧れていたキャプテン・グレースは、自分がトコに騙されていたのであり、分かりやすく「悪い敵」と戦うファンタジーが現実には存在しないことを知る間もなく、真っ先に死にました。
トコによって急遽魔法少女にされた新米組で唯一生き残ったのは、何と正体がカメであるテプセケメイです。
能力的には強いからこそ引き立て役として死ぬかと思っていましたが、そういう予想は毎度裏切ってきますね。
そして、一番「魔法少女とは何か」にこだわっていたウェディンは、上述の通り自分で魔法少女の規範となる決意をしますが、やはり死にました。それも、フレデリカという外道にその正義感を付け込まれる格好で……

ただ、魔法少女というものに元々憧れがあったにせよそうでないにせよ、魔法少女という強大な力を手に入れて、これからの生き方が大きく変わると思ったのは、多くの魔法少女たちに共通していました。
ところが現実は困難とロクでもないことばかりです。

そしてメイは、変身することでカメから一挙に人間並みの知性を手に入れました。この上なく「新たな世界が開けた」はずです。
ただ、人間並みの知性や感情や言語を扱う習慣をそもそも持っていなかったために、独特のズレたキャラになっていましたが…。

新たなことを学び、成長し、見える世界が劇的に変わるという経験は確かにあります。けれども開けすぎて扱いに困る、ということもあり得ます。
これほどのブレイクスルーを経験したキャラが、持て余すほどの広い世界を前にしてどう生きるのか……これまでも過去シリーズの生き残りキャラはきっちり影を落としているだけに、このような前例のない生き残りキャラの今後は非常に気になります。

そして、黒幕は『restart』の生き残りであったプフレ……結局今回の事件は、ほとんど彼女の自作自演という形です。
彼女は元々、強制されてとは言え、魔法少女選抜試験で(間接的なやり方も含めて)積極的に殺し合いに加担し、最も多くの相手を殺した魔法少女の一人でした。そして決してそれを「反省した」というわけでもないのですから、ある意味で全くブレていません。
しかしやり過ぎという印象もあります。それも魔法の国の改善に必要なことなのか、別の道が示されることがあるのか……

『restart』でも、前作(無印)の主人公と言っていい存在であったスノーホワイトが黒幕を倒すという締めになっていながら、前作の主人公が全てを持って行き過ぎない適度なバランスになっていましたし、過去シリーズの生き残りの使い方は非常に上手いのですが――そしてそれだからこそ、今回の生き残り組みの今後も気になるわけでして。

リップルに関しては、無印のラストでスノーホワイトを支援しているリップルはこの話より後、出世してからという風にも見えたので無事で生き残るかと思ったのですが、そういう予想は見事に裏切られました。

そして、「スノーホワイト育成計画」からの再登場となったピティ・フデレリカ――クズで魔法少女好きで髪フェチで覗き魔の変態な彼女ですが、「理想の魔法少女」を求めることに最も強く執着した人物でもあります。
その結果は必ずしも良い魔法少女ではなく、悪人も含めて傑出した魔法少女への愛に向かっていましたが……
スノーホワイトはそんなフレデリカのこれまでのところ最後の弟子でしたが、今回フレデリカは最後にリップルを確保します。
今後の展開としてスノーホワイト対リップルが見えた、というのもありますが、より広く見るに、異なる方向に向かった様々な「魔法少女の未来像」が互いに交錯し、激突する可能性が出てきた、ということではないでしょうか。
プフレのことも考えれば、これは三つ巴以上で「魔法少女の将来を決する天下分け目の決戦」になる可能性すらあります。


そして、フレデリカは『スノーホワイト育成計画』でも結構満足して捕まっていましたし、今回も最後に勝者となりましたし、どう転ぼうと最後には笑うキャラです。
それはあらゆる状況に楽しみを見出す彼女の性格に起因しているのでしょうが、将来は笑って死ぬところしか想像できないキャラです。

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コメント

No title

>そして、フレデリカは『スノーホワイト育成計画』でも結構満足して捕まっていましたし、今回も最後に勝者となりましたし、どう転ぼうと最後には笑うキャラです。
>それはあらゆる状況に楽しみを見出す彼女の性格に起因しているのでしょうが、将来は笑って死ぬところしか想像できないキャラです。


まほいく(無印)が龍騎(+α)の影響を多分に受けていた事から考えると、フレデリカが唯一「笑って死ぬ」事が出来ない死に方が、たったひとつだけあると思います。それは、


“人間界とも魔法の国とも異なる所属の、第三勢力の手の者に殺される”


魔法の国は人間界だけでなく多くの次元世界に干渉しているという設定ですから、方々で買ったヘイトが陰我として爆発してもおかしくない状況なわけで。そしてさすがのフレデリカもこういう部分には一切ノータッチ(試験管という役割は担っていたものの、施策には直接関わってはいない)なので、自分と無関係な線で殺されるのは、いくら変態でも受け入れられない死に様なのでは!?

No title

つか、※いい加減日本政府は当代(まほいく世界時間)の服部半蔵にでも「魔法の国を殲滅せよ」という勅命を下してもいいかと思う。


※昔の漫画・ヤングサンデー(現在廃刊)の「ムジナ」より

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