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スーパー犯人大戦――『クロクロクロック2/6』

本日は日本学術振興会特別研究員選考面接を受けに東京まで行ってきました。
事前に吹聴しておいて落ちてもみっともないのでこれまで明言しませんでしたが、通れば助成金が貰えるのです。
しかし、プレゼンテーションに4分、質疑応答に6分とあまりに時間が短いせいもありますが、あまりちゃんとした答えができないまま質疑が終わった感があるので、少々厳しい気はします。後は倍率次第です。

おまけに、面接が予定より10分くらい早く始まりました。
準備はできておりそのこと自体に問題はありませんが、学会発表にせよ何にせよ、後にズレ込むことはあれど早まるなどあまり経験がありません(その感覚がおかしいのかも知れませんが)。

 ~~~

さて、本日取り上げるライトノベルはこちら、実に1年4ヶ月振りの第2巻となる『クロクロクロック』です。

クロクロクロック2/6 (電撃文庫)クロクロクロック2/6 (電撃文庫)
(2013/12/10)
入間人間

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 (第1巻の記事

ゲーマーズでの購入特典として色紙が付きます。

クロクロクロック2/6 特典色紙

ちょっと考えてみるのですが、ミステリの主人公はまずは犯人です。
では果たして「スーパー犯人大戦」は可能か、と考えると、これはネタバレになるので難しいでしょう。そもそも、固有の相手を狙うことにおいてのみ魅力的な犯人たり得ている人物を別の文脈においても、「犯人」として機能しないでしょう。客観的能力を競うのとは訳が違います。
それでも可能性を求めるとしたら、『エクゾスカル零』の手法が考えられます。実際に過去作品の主役となった犯人ではなく、あたかもそれぞれに別の作品の主役である“かのように”個別の背景を持った「犯人たち」が共演し、同じ標的を狙ってかち合ったり、誰かが他の誰かを狙って戦ったり、協力したりする……

本作『クロクロクロック』は、そんな作品ではないか、と私は思っています。
本作に登場する犯罪者、あるいはその候補は、職業的犯罪者(殺し屋)、殺人鬼、一般人だけど極端に倫理観の欠けた少女、凡人だけど犯罪を犯してしまって後悔する少年など、実に多様です。
もちろん、スーパーヒーロー大戦のヒーローたちが皆主役ではないように、この作品そのものはミステリとは言えませんが(謎の要素はありますし、これから読者を欺くどんでん返しがあるかも知れませんけれど)。


久し振りということもあって整理しておきますと、本作は、拳銃の売人の間違いにより、1丁だけ間違えてモデルガンの混じっている6丁の拳銃を廻る物語です。数ページごとに視点人物が切り替わる群像劇で、視点人物も6人いますが、その内で拳銃の所持者は4名だけです。1巻では残る2丁の拳銃は登場しませんでした。
そして1巻では、1丁の拳銃が発砲されました。

視点が切り替わる度にその人物の顔付きで名前が表示されていますし、そもそも文章が完全に三人称でつねに地の文が人名を表記しているので、混乱も少ないでしょう。

クロクロクロック カナアイコン

もっとも、視点が切り替わる際に顔と名前を入れるスタイルは『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』8巻でも用いていたものでしたし、その時も最近の作品でも、複数人物の一人称を切り替えるスタイルを用いているものはあるので、本作が三人称に徹しているのは、感情移入を抑えるという意味もあるのかも知れません。
何しろ下手をすると、登場人物の内かなりの数が死ぬかバッドエンドを迎えてもおかしくない雰囲気ですし。
1巻でも、コンプレックスに苛まれて憧れの女の子からも気持ち悪がられる冴えない少年が、激情に駆られて犯罪を犯してしまい、後悔して怯える様はかなりハードなものがありましたし。
彼、首藤祐貴は、今巻ではさらに命まで狙われるなど、絶望まっしぐらです。

とは言え今巻では、それぞれの登場人物の状況に関しては、それほど変化はありませんでした。
6丁の拳銃は――あの日に売人が売って回った6丁以外のものが混じっているのではない限り――出揃ったと思われますが。

それぞれの多様な事情ゆえに犯罪に手を染める「犯人たち」の人物描写と、そこにその他の人物も絡めた人間関係の描写は相変わらず絶品です。
首藤に関しては、まさに「普通の人」が普通に弱く愚かであるがゆえに犯罪に手を染める様がありありと描かれていますし、殺し屋たちは「平気で人が殺せる」という資質ゆえに殺し屋なのですが、それ以外の点では普通だったり程々にカッコ悪かったりして憎めませんし(普段バカばかりやっている殺し屋が、殺しとなればやはり強くて恐ろしいというところを見せもしますが)。
「嫌いな人」を平気で殺そうとする小学生・時本美鈴は一番怖いというか、美少女でもさすがに可愛いと思えないようなキャラでしたが、今回は憧れの歌手に出会ってはしゃぐ可愛さも見せます。

他方で、現在街でニアミスを繰り返している登場人物たちの一部の間には、過去の殺人事件を廻る関わりも存在することが仄めかされてきました。
1巻の冒頭には「1/6」、2巻冒頭には「2/6」と題した数ページの章があって、これと現在の物語との関係は不明でしたが、それも少しずつ見えてきた感じです。
得体の知れない人物が増えた感もありますが、いずれにせよ楽しみなことです。



さらに本作はスーパー殺人者大戦であると同時に、作者・入間人間氏の作品の大甲子園という様相をも呈しており、クロスオーバーの好きな同作者の作品中でも抜きん出て多くの過去作品キャラクターが登場します。
そもそも、視点人物の一人は『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』からスピンオフして別シリーズで主役を張ったこともある閃かない探偵・花咲太郎であるくらいですし。
今巻の表紙で背を向けているのは、『花咲太郎』シリーズではお馴染みの殺し屋・木曽川です。
彼がイラスト化されるのは初ですが、文中ではよく「魔女の帽子」がトレードマークとして語られているので一目で分かります。

過去作品を読んでいるファンにとっては、ある作品の登場人物が別の作品ではこうなっていた、その間の年表を埋めるような楽しみもあります。まさか大江湯女(『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』4巻~)と二条オワリ(『電波女と青春男』6巻)の出会いが描かれる機会があろうとは。

初代主人公のみーくんは1巻に引き続き出てきたものの特に活躍はしておらず、ただ昨日は妹と、今日は女刑事とデートしている辺りが苦労を偲ばせますが。

そんな作品のイラストを手がけるのは深崎暮人氏。
他作品で他のイラストレーター(かなりの確率で氏)が描いたキャラクターを描かねばならない苦労は想像に余りありますが、期待以上の見事な仕事っぷりです。
1巻では左氏の描いたイメージに気を遣ってか、花咲太郎の顔ははっきり描かれていませんでしたが、今回はちゃんと顔が出ています。他にも他作品で見覚えのあるキャラが複数描かれますが、違和感は全くありません。イラストが記述に合っていないような箇所も基本的にはないのではないでしょうか。
イラストでは初出となる木曽川のイメージが合っているかどうかは保証できない…というか、美形に過ぎる感もありましたが、しかし外れているわけではなく、魅力的で、表紙のピース等もらしさが出ているので、よしとしましょう。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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