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新しい音楽文学の形となるか――『ALCA-アルカ- 創生のエコーズ I』

今月からまた新たなライトノベルレーベルとして「ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ」が創刊されました。
創刊ラインナップの一つとして私がまず手を出してみたのがこれです。

ALCA-アルカ- 創生のエコーズ (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)ALCA-アルカ- 創生のエコーズ (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)
(2013/12/03)
project-ALCA-

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開いてまず違和感を感じるのは、カラー口絵に文字が一切ないことです。

創生のエコーズ 口絵

通常、ライトノベルの口絵には本文の文言や台詞の抜粋、あるいはキャラクターの名前や紹介文が入るものなのですが……
ついでに言うと、AMAZONの書影もタイトルロゴや作者名などの文字が入っていないままです。
現物はこう↓です。

創生のエコーズ 表紙

発行元のポニーキャニオンは映像・音楽ソフトメーカーで、本業が出版社ですらないというのは、ライトノベルの新興レーベルとしてもかなり異色かと思われます。同レーベルの創刊ラインナップの中にはひどいイラストの間違いがあるものもあったとのことで、要するに不慣れなせいなのでしょうか。


レーベルの話はこれくらいにして、『ALCA-アルカ- 創生のエコーズ』の話に入りますと、本作最大の特徴にして売りは、帯にも書かれていますが、本文中にQRコードが挿入されていて、それによってネット上にアップされている音楽(BGMや作中人物の歌う歌)を聴けるという仕様です。

創生のエコーズ QRコード

散文中に詩を挿入する文学には長い歴史があれど、これはインターネットと携帯電話全盛の時代なればこそで、初めて見た試みです。面白いのではないでしょうか。音楽もちゃんと聴いてみましたが、良かったと思います。

また、作者名も個人名でなく「project-ALCA-」となっていて、企画・原作と執筆といった細かい分担は目次の下に載っています(こういう場合、その分担を表紙にクレジットうする方が一般的な気はしますが)。
あとがきによれば本作の出自は音楽で、「アニメを想定した主題歌やエンディングテーマキャラソン、劇伴」のみをまず作って同人CDとして発表しており、それに基づいて後からストーリーができてきた、とのこと。
この小説のカラー口絵にはそのCDのジャケットイラスト(小説イラストレーターとは別人の画)も収録されています。

「楽曲のノベライズ」としてのいわゆる「ボカロ小説」は今やメジャーなジャンルになっていますが、それは歌詞のみである程度の世界観やストーリーが描かれていたもののノベライズです。
本作の音楽はあくまで挿入歌やBGMであって、それだけでストーリーが存在するわけではないので、また毛色が違います。


そろそろストーリーの説明に入りましょう。
本作の舞台は、大災害で人口の激減を経験した未来世界です。この世界に存在する一方の国「レイメイ」200階を超える超高層ビルが建ち並び、IT化の進んだ近未来都市の様相ですが、もう一つの国「エルゼム」は、人々が中世風の衣装を着て、「創主」が宗教的権威として君臨しているという状況です。しかも、両国の国交は断絶しており、レイメイ市民はエルゼムの人々がどんな暮らしをしているのかも知りません。
両国の間に中立国「ファルネ」があります。こちらはレイメイに比べると下町風の風景で、治安の悪いスラム街のようなところもありますが、現代以上の技術レベルを備えてもおり、また(物品の輸出入には厳しい制限があるものの)比較的容易にレイメイと行き来できます。
レイメイ―ファルネ間は「リニアで数時間」、日帰りできる距離ですが、このリニアが現代の新幹線より速いと仮定すると、レイメイ―エルゼム間には長くて日本縦断くらいの距離はあるのかも知れません。都市の外は汚染があるため、この三国の外に人間は住んでいないものと考えても良さそうです。

レイメイとエルゼムの対比はまるで現代世界と中世ファンタジー風世界のようですが、それらが互いに異世界ではなく、あくまで一続きの陸地の上にあって地政学的に分断された国というのが面白いところです。
しかもこの世界には、かつての人口激減を補うため人工的に作り出された「クローンビト」が存在しており、それに対する反感もあります。エルゼム人は多くがクローンらしいのも、両国間の感情に当然影響しています。
ファルネでも反クローンビトのテロがあったり。

そんな中、突然エルゼム国内の映像がレイメイに流れて騒然となります。
さしずめ、北朝鮮の国民が皆揃って国家主席を讃えているのが初めて報道されて日本人が不気味さや反感を感じ、在日韓国人排斥運動が高まりそうな気配……というのを想像するのは気のせいでしょうか(客観的に見て、作中の両国の状況が日本や北朝鮮と比べて良いか悪いかは関係ありません)。

で、本作はレイメイの女学生・涼風若葉(すずかぜ わかば)とエルゼムの創主の娘・メイという、外見は瓜二つな二人の少女の物語、らしいのです。
らしい――というのは、この巻は若葉の活動が中心で、メイの方はマスコットみたいな喋る動物・マヤと出会っただけでそれ以降あまり動きがなく、二人が接触することすらなく、間接的に接点ができたところで次巻に続くとなっているからです。
370ページもある割にはあまり話が進んでいないというか、若干、冗長な感は否めません。

さて、メイは巫女として全国民の前で儀式として歌うのを仕事にしており、若葉は学生生活の傍らバンド「サンダーブレイブ」(通称「さぶれ」)でボーカルをやっています(上述の仕様により、二人の歌はちゃんと聴くことができます)。
方向性はまったく違えどそれぞれ歌に生きる二人。緊張の走る両国間にあって、音楽は架け橋となるか――という話なのでしょうか。
話が面白くなるところまで進まなかった感もあるのですが、舞台設定と題材、それに音楽を取り込んだ作りは面白そうなので、期待してみたいところです。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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