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不死者の長い時を描くには――『UQ HOLDER!』

授業がなくなったと思って映画を観に行ったりもしていますが、その話はまたの機会としまして、今回は漫画を取り上げさせていただきます。
『魔法先生ネギま!』以来1年半ぶりの赤松健氏の新作です。

UQ HOLDER!(1) (少年マガジンコミックス)UQ HOLDER!(1) (少年マガジンコミックス)
(2013/12/17)
赤松 健

商品詳細を見る

 (前作『魔法先生ネギま!』についての記事

本作は主要キャラを新たにしてはいますが、ある種『ネギま!』の続編です。
それも暗示的にではなく、冒頭で語り部のようにして『ネギま!』の主要キャラの一人であったエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが登場、繋がりを強く印象付けます。
(もっとも今のところ、前作の予備知識がなくても読むには困らない内容になっていますが)

HQHolder! エヴァ
 (赤松健『UQ HOLDER! 1』、講談社、2013、p.3)

主人公の近衛刀太(このえ とうた)は都会に憧れる田舎の少年ですが、2年前に両親を亡くしており、またそれ以前の記憶も失っています。
彼が前作の主人公・ネギの孫であり、作中年代はあれから約80年後の2086年であることが、墓碑銘から分かります。
『ネギま!』の終盤では、ネギは魔法世界と一般人の世界の間に新たな交流を生み出すような巨大なプロジェクトに手を付けていましたが、その結果として、本作では魔法が世に知られるようになって10年経ちます(裏を返すと、あれから魔法の公式発表まで70年かかったということですが…)。
ちなみに「近衛」も主要キャラの(ネギの担当した女生徒の)一人である木乃香(このか)の姓でしたが、詳しい血縁関係は判明していません。

しかし、学校の女教師・雪姫の正体が実は吸血鬼のエヴァンジェリンで、刀太は2年前に死にかけて、彼女に吸血鬼化されることによって命を救われていたことが明らかになります。
そして刀太は、雪姫と共に旅に出ることに。

吸血鬼という不老不死の存在になってしまった彼が他の不死者たちと出会って冒険し、そして不死者としての生き方を問われる――というのがストーリーのようで、1巻では不死者の組織「UQ(悠久)HOLDER」の存在が語られるところまでです。
扉絵などを見るに、すでにメインキャラクター10人以上は最初から設定されている模様。

前作と比べるとお色気要素は控えめでしょうか(それでも定番の入浴シーン等はありますが)。今のところレギュラーの女性キャラは雪姫(=エヴァンジェリン)のみで、彼女はあくまで刀太にとって先生という扱いですし。もっともエヴァンジェリンは『ネギま!』でもネギの師であり、その孫をふたたび弟子に取る形になっているわけですが、同時にネギの父との因縁があってまず敵として登場し、さらに女の子としての恋愛感情を併せ持っていた『ネギま!』とはだいぶ状況が違います。本来は10歳の少女の姿である彼女が、本作では大人の姿をデフォルトにしているのも、その面を強調してのことでしょう(前作からすると、彼女が随分丸くなったというのも印象深いことですが)。
いや、続く仲間キャラの時坂九郎丸(ときさか くろうまる)も怪しいのですが、今のところ男だと自称していますし……考えてみると、最初から「女子校」という枠のあった『ネギま!』にはいなかったタイプですよね、性別不明というのは。真の性別がいずれにせよ、男装しいていれば絵的にお色気要素は少なくなります。

ストーリー面では今のところまだのんびりした旅の印象が強く、バトルもそこまで激しくありません。主要人物が不死身な分、手足や首を刎ねられたりする血腥い描写は珍しくありませんが、内容的にはそこまでハードな印象がないのです。
それよりも、巨大学園都市と異世界を主な舞台にしていた前作に比べて、田舎と寂れた郊外の風景が中心なのが印象的ですね。
これは人口が減少し、都会の一極集中と地方の過疎化がいっそう激しくなった社会という設定のためで、中央都市は軌道エレベーターのある近未来らしい都市とのこと。「都に出て一旗」という刀太の古臭く漠然とした目標も、それゆえに成立するものです。

HQHolder! 温泉街
 (同書、p.167)

主人公は両親を喪ったという辛い過去も抱えながら明るく元気な少年で、辛い過去ゆえにかなり深い闇を抱え、終盤までそれがストーリーにも深く影響していたネギとは対照的です。


と、色々特徴を言ってきましたが――
前作の登場人物で不老不死、あるいは長命と思われる人物は他にもいましたから、再登場の可能性はありますし、もしかしたら過去編として『ネギま!』のその後が語られる可能性もあり、期待したくもあります。そもそも『ネギま!』の設定とキャラクターで描けることはまだたくさんありましたが、しかし、それが目的ならば直接の続編でないのはなぜでしょう。
続編ではなく、また完全新作でもなく、世界観を引き継ぎつつキャラクターを入れ替えての続編というのは、少し中途半端な気はします。まだストーリーの方向性がよく見えないだけになおさら。
ただ、私にはこの点に関して、若干思い当たることがありました。

以下は『ネギま!』終盤までのネタバレ込みでの話となるのでご了承を。


『ネギま!』は、「最終回を描いてみたくなった」「いずれまた復活する」という作者の言葉とともに、かなり唐突な最終回を迎えました。
数いるサブキャラの設定やその後の顛末は、必ずしも全て描かなくてもいいだろうと私も思っています。たとえば「背中に傷がある」キャラがいましたが、「傷があり、そのことでトラウマを負っている」という現在の設定に終始しようが、その傷を負った理由やその後の生き方が描かれようが、どちらでもさほど困らないことです。
しかし、ラスボス戦とそれにより主人公が父・ナギを取り戻す物語がまるごと省略されるという打ち切り漫画顔負けの展開にはさすがに驚きました。
いやそれ以上に、主人公の故郷の村の人々を復活させて再会する展開がナレーションのみで済まされたのが残念でした。

ただ、設定に関して言うと、重要なことは整理した形で明言されていなくても、概ね必要な情報は出揃っていました。
たとえばラスボス「造物主(ライフメイカー)の正体、ナギの行方等々……

そんな中、(サブキャラに関する「描かれようが描かれまいがさほど困らないこと」ではなく)比較的重要そうなことで不明なままのことというと、メインヒロインの神楽坂明日菜(かぐらざか あすな)周辺に集中していることに気付きます。
そもそも、明日菜が恋愛上のヒロインなのか、ネギにとって姉のような存在なのかも、それほど明瞭ではありませんでした。
明日菜は魔法世界の小国・ウェスペルタティア王国の姫君で、ネギの母・アリカもウェスペルタティア王女だと発覚した時には、やはりネギと明日菜は男女の関係ではなく親族関係なのか、とも思われましたが、両者の詳しい関係は最後まで不明なままでした。明日菜が100年以上生きているという設定からすると、新等はそう近くないのかも知れませんが。
この血縁設定により、ネギの姉であるネカネと似ているという設定も改めて伏線である可能性が浮上したのですが、そもそもネカネがネギの実姉ではなくネギの「おじさん」の娘であって、詳しい血縁関係が不明なのでこれまた何とも言えません。「おじさん」が母方のオジならば繋がりますが、その場合「おじさん」は元ウェスペルタティア王族ということになり…可能性はゼロではないのですが。

さらに、ネギには両親とも不在ですが、ネギを出産した後のアリカの消息は「秘密」だと最終巻のカバー裏で作者が語ったために新たな謎が増える始末。

加えて、ウェスペルタティア王国の始祖本人と思われる人物が現在も生きて登場しているのですが、彼女もほとんど何も語らぬままいつの間にか姿を消しました。まあ正体はほぼ判明していますし、ウェスペルタティアの始祖は造物主の娘であり、造物主は不滅の存在として2600年を生きているので、その娘も何らかの形で生き続けていてさほど不思議はなく、最低限の説明はなされたと言ってもいいのかも知れませんが……

それとは別に、もう一人謎のキャラクターとしてナギの師匠ゼクトがいました。
ナギは伝説の英雄であり、その仲間たちも世界最強クラスの猛者たちで、絶大な存在感を発揮していました。彼らの中で最後まで現在のストーリーに(つまりネギたちの前に)登場しなかったのはゼクトとガトウ・カグラ・ヴァンデンバークの二人です。この内ガトウは回想で死んでいることがほぼ確定しており、は登場しませんでしたが、彼の素性や正体についても謎というほどのものはありません。
他方でゼクトはというと……老人口調の少年というのは、息子のネギの師匠が少女の姿で600歳を超えるエヴァンジェリンであることに対応させたものでしょうし、不老の種族など色々あると言えばそれまで。ただ彼はそれだけでなく、過去編の回想シーンでは敵組織と因縁があるらしき様子があったのですが、その辺は詳細不明のままです。
さらに、20年前の戦いで死んだとされているゼクトですが、実は死んだのではなく、不滅の魂を持つ造物主に肉体を乗っ取られていたことが判明します。造物主の現在の肉体は次の宿主に移っているのですが、では前の宿主たるゼクトはどうなったのか、やはり不老不死を匂わせる彼が本当に死んだのか、疑問は残ります。

そして――『ネギま!』の終盤において、主人公のネギもまた人間をやめて、不老不死の存在になってしまいました。世界のあり方を根本から変えて、世界を救うという偉業を成し遂げるには、それはむしろ相応しいとも言われているのですが――
(ただし、どこまで完全に不老不死なのかは不明点もあるとのことでした。100年後の世界ではネギは死亡扱いになっており、『UQ HOLDER』でもネギの墓が存在しました。そもそも10歳のまま不老であれば子供もできない可能性が高いので、謎は残っています)

すなわち、残された謎および展開されるべき物語として、造物主、ウェスペルタティアの始祖、ゼクトという不死者のラインが浮かび上がり、それがネギの将来の問題に繋がってきます。
とすると、この後に存在し得る物語として「ネギの不死者としての生き方を問う章」があり、そこで始祖やゼクトも関わってくるはずだったのではないか――私にはそんなヴィジョンが見えました。
ちょうど、修学旅行編(4~6巻)、学園祭編(9~18巻)、魔法世界編(20~36巻)と長編エピソードで一人ずつナギの仲間たちが登場していたというフォーマットにも対応しますし。

とは言え、困難は山積みです。
まず、終盤でネギは世界最強クラスに名を連ねる強者になっていました。これ以上物語を続けるとなると、ネギの苦戦と成長を軸にしたバトル漫画としての組み立てを根本から変更せざるを得なかったでしょう。
ネギを脇役に回してヒロインたちの成長に主眼を置くという手もありますが(そもそも当初は、「ヒロインたちの方が主人公」という作者のリップサービスもあって、『ネギま!』がそんな物語であることを期待した読者も多かったのではないでしょうか)、主人公を脇役に回しながら物語に軸を通して展開するのは、また独自の手腕が求められるものです。

そもそも、成長せず、老いず、やがて多くの人と死別するという不死者の宿命を本当に描くとあれば、作中で少なくとも10年単位の時間を経過させねばならないでしょう。しかしこれは物語のコンセプトのいっそう大きな変更を余儀なくしますし、少年漫画という枠内ではなかなか困難なことです。

こうした視点から、メンバーを変えつつテーマ回収を図ったのではないかと考えると、舞台を80年後に移した続編の意味が見えてきます。
『UQ HOLDER』の作中で刀太の何十年後が描かれるかというと、その可能性は低い気がします。しかしこの設定ならば、ネギが不死者として生きた長い時のことを語り、さらには「お前のお祖父ちゃんは不死者としてこう生きた、お前はどうする」という展開もできるわけです。
そもそも不死者の組織「UQ HOLDER」の結成者がネギなのはほぼ確実でしょう。
不死者の生きる長いタイムスパンを描くには相応しいのではないでしょうか。

この予想が正しいかどうかは、本作の今後の展開次第です。ご覧あれ。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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