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人類の存亡、この国の将来――『銀閃の戦乙女と封門の姫 5』

唐突ですが、入間人間氏の『バカが全裸でやってくる ver.2.0』の、ライトノベル作家となった主人公が書く第2作は、どう見ても作者自身の『電波女と青春男』を思わせる物語です。
そして、1巻でヒロインの問題を解決してしまったのでもう書くことがないが、編集からの要請で仕方なく引き伸ばした、といった事情が赤裸々に語られます。
実のところ、この「1巻でヒロインの問題を解決してしまったので…」というのは、多くのライトノベル作家が経験している事態ではないでしょうか。ライトノベルは基本的に単行本書き下ろしで刊行するものであり、レーベルによっては続巻が出るかどうかも怪しいので、1巻でストーリーに区切りを付けてしまうことが求められるのですね。
その結果はと言うと、

・無理矢理新たな問題を引っ張ってきて引き伸ばす
・別のキャラの問題に物語の重点を移し、メインヒロインの影の薄さが読者から揶揄されることになる

といったパターンがあり得ます。

 ~~~

そんな話は関係なさそうに見えますが、今回取り上げるライトノベルはこちら。上の話の意味も追って分かる……はずです。

銀閃の戦乙女と封門の姫5 (一迅社文庫)銀閃の戦乙女と封門の姫5 (一迅社文庫)
(2013/12/20)
瀬尾 つかさ

商品詳細を見る

 (前巻の記事

3ヶ月間隔でコンスタントに刊行し、1巻発売からちょうど1年目での5巻です。あとがきによれば次巻で完結とのこと。

そろそろ初っ端からある程度のネタバレを含むことになりますのでご了承を。


前巻でいよいよラスボス・ゼノの姿が見えて、決戦間近というところまでやって来ました。ゼノは同作者の『放課後ランダムランダンジョン』でも登場した、数々の異世界を滅ぼした蟻人間のような種族です。
『ランダムランダンジョン』ではゼノの地球進行を何とか食い止めましたが、滅ぼしたわけではありません。今作では彼らの神話的素性が明らかになると同時に、人口の世界クァント=タンそのものがゼノを迎え撃つために作られたことも判明、いよいよ全面対決の雰囲気です。
そして、前巻の最後でついに、ゼノの侵入らしき不穏な動きが。

今巻はその続き。いきなり、クァント=タン第一王子タウロスがゼノの手に落ちます。
ゼノの能力についても『ランダムランダンジョン』からかなり設定が付け加えられていて、神々や古竜といった強大な存在をも滅ぼしてきた秘密が分かります(邪神一体が暴れたことによって中国大陸が異界と化した、という設定の『魔導書が暴れて困ってます。』と同一世界という設定になったお陰で、かなりスケールアップが進んでいます)。
ゼノの脅威的な能力は、精神操作と能力のコピー。しかも大軍勢で攻めて来る蟻人間なので、コピーした能力を無数の仲間に与えることができます。
ただ一人で大量破壊兵器をも超えるスキルの持ち主が存在する(しかし、そう数が多いわけではない)世界観でこれは、確かにあまりにも脅威です。
タウロス王子も「護国の聖盾(イージス・ガード)という絶対防御のスキル持ちです。

というわけで、「強大な固有スキル持ちを決して敵の手に渡さない」ことを最大目標とする戦いになります。
強大な固有スキルをコピーしたはそれ自身、容易に倒せない相手ですが、それに仲間と合流されたらアウトというのは、さすがに緊迫感のある戦いになります。

とは言え例によって展開は早く、前半の窮地はこの5巻の中盤では一段落して、後半は立て直しての決戦になるのですが。
謎の答えも多視点でどんどん明かされますし、時には戦闘シーンも結構省略して次に移りますし。

ゼノを滅ぼす方法という光明も見えて、いよいよ人類の存亡を賭けた最終決戦です。


そして、今巻では『魔導書が暴れて困ってます。』のヒロイン・伊佐木イリーナも登場。
顔見せ的な出番でしたが、『魔導書~』の主人公がここで登場することにはそれなりの理由がありました。さらに前巻で登場した『ランダムダンジョン』のあかりが今回は想像以上に活躍しましたし、全人類の命運を賭けた戦いに皆が集結してくるのは熱いですね。

しかし、過去作品のヒロインが結婚したり妊娠したりしているというのは……しかも彼女らが高校生だった時から2年かそこらしか経っていないというのに。
ただ、異世界人と地球人のハーフは純血の異世界人よりも高い能力を持つ等の設定により、彼ら彼女らはすでに大人以上に社会的に重用される存在となっているという事実があります。
『ランダムダンジョン』の場合、あくまで通貨が日本円の世界で、ダンジョンに1回潜ると何百万円が稼げる、といった話が出てくることにより、異常さが際立っていました(『銀閃~』でも「日本円に換算すると」という形でこの話は繰り返し語られています)。
それほどに社会的・経済的に力があるならば、さっさと結婚して子供を生むことも可能であるばかりか、むしろ新世代をどんどん生み出すことは要請されていることですらあるのでしょう。

そう言えば、同作者の『約束の方舟』でも、星間植民船という狭い世界で、戦争により激減した人口を補うために子作りが奨励され、結婚年齢も引き下げられていました。
「子供たちが戦わなければならない世界」とは「早く大人の務めを果たすことを社会的にも要求される世界」でもある、そういうところをきっちり描く作者ですね。

そしてこのことは当然、本作『銀閃~』の主人公・カイトが結婚するどころか一夫多妻を受け入れ、さらには国作りにまで乗り出していることと重なってきます。

そう、本作には国のあり方という問題もありました。
クァント=タンがマナの捻れた世界で、しばしば適応障害に苦しむ人々を生み出し、さらにはモンスターの脅威に晒されてきたのも、全ては予言に基づきゼノの襲来に備えていた「白の会」の陰謀でした。
もっとも、「白の会」の中枢にある人物も、自分が憎まれ、ことが終われば殺される覚悟もすでにできているようですが…。
それでも、苦しめられておいてタダで済ませては、人は納得しないでしょう。

しかし、腹黒で鳴らした二人――クァント=タン第四王女シャーロッテとカイトと義妹梨花がすでに、戦いの後の政治的取引と、その利益をカイトの新しい国作りに活かすことまで考えています。
大きな危機の前にはその他のことは忘れて協力を――と綺麗には必ずしも行きません。むしろ、被った不利益による落とし前まで利用して、より良き将来とは摑み取るもの。
全てが合流してクライマックスに向かっている様が気持ち良いですね。

なお、梨花はシャーロッテの死を予見して、その上で運命を覆すべく戦うことを決意しています。
が、今巻は意外にも、と言うべきか、フレイのピンチで引きとなりました。

というわけでようやく冒頭の話に戻ってくるのですが、フレイも典型的な「1巻で問題解決済みのヒロイン」であって、その後は(3巻まで表紙を飾り続けたにもかかわらず)ストーリー上の活躍は少なく、戦闘では安定して活躍するものの主力というほどでもない、という扱いが続きました。恋愛面では主人公の本命なのですが。
それが最後にもう一度ヒロインらしい出番、ということでしょうか。
期待して最終巻を待ちましょう。

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